SMAPのDVD年末までに全部レビューその14。中居「高視聴率取れればいいってもんじゃない」
「なんだこのビデオは、なんのために撮ってるんだ!」
舞台裏を撮影するカメラに向かって、かわいらしい声でしゃべる香取。ライトで照らされると自分で効果音をつける木村、カメラにむかってピースサインする中居。ライブ映像は珍しく舞台裏からスタートする。
15.Sep.1997 YOKOHAMA――字幕に続いて、顔に「ス」の字が書かれたてるてるぼうずが映る。横浜スタジアムでの野外公演、雨が心配だ。
1997年7月19日山形からスタートした「SMAP 1997 "ス" 〜スばらしい!ステキな!スゴイぞ!スーパースペシャルコンサート〜」。
見事な“ス”づくしのツアータイトル。山形を皮切りに全国9ヵ所をまわった。
コンサートはアルバム『011ス』をベースに構成されている。
SMAP史上初の発売延期を経てリリースしたアルバムは、『ダイナマイト』や、『セロリ』というSMAPを代表する楽曲が収録されている。
スガシカオや忌野清志郎、そして世界的に知られる音楽プロデューサーのナイル・ロジャースがギターリストとして参加するなど、豪華な制作陣をむかえた。
当時の日経エンターテインメントでは、「打ち込み全盛の今、この演奏を聞くことができるCDは貴重」と紹介している。流行に流されない楽曲づくりが、長く愛される秘訣か。
『SHAKE』からスタートしたライブ。『俺たちに明日はある』でテンションをあげたところで、ややテンポを落として『セロリ』へ。髪を後ろで一つに結わえた木村がギターを持つ。トントンとギターを叩くと、メンバーが歌い出す。ワンフレーズ歌ったところで香取が「セイ!」とマイクを客席に向ければ、ファンのかわいらしい声が響く。ステージを作る一員として迎えてくれている感じがして嬉しい。「君のこと」の歌詞に合わせて中居がカメラに向かって指差し。口パクで「好きなのさ〜」で投げキス。中居くんがアイドルしてる!!
てるてる坊主の力及ばず、『どんないいこと』あたりではっきりと雨が見える。
ゴローちゃんがしっとり歌う横で、クルクル回るつよぽん。くっついたり離れたりする中居と香取。中居にお尻をむけながら再び近づくと、慎吾ちゃんのお尻に頭をコンとぶつける中居くん。かわいい。かわいいけど、謎だ……。
その後もイチャイチャする二人。肩を組んで、ソロパートを恥ずかしそうに歌う中居に、「いいから歌えよ」といわんばかりに顔をみつめる慎吾ちゃん。歌い終えると中居の頭を抱えておでこをつける。あああ…この時つき合ってたの? 一方で、ギターを演奏しながらしっかり歌う木村と稲垣。リズムをとりながら体を動かしている草なぎ。たった一曲なのにみどころがばかりで目が離せない。
木村と香取が歌う『ココニイルコト』はスガシカオの作詞・作曲。スタジアムの遠くに見える横浜のネオンを背景に、フェンスとレンガ風のセット。ゆっくりとしたテンポに体を揺らしながらリズムをとる二人。歌声が重なるとミュージカルの一コマのよう。
途中からモノクロ映像で進行するなど、この頃のライブ映像は積極的に編集が施されている。
ライブ映像の合間にリハーサル風景も収録されている。上半身はだかでリハーサルに挑む香取と木村。腕には同じ位置にSMAPマークのタトゥーシールを貼っている。
「あー、慎吾の腹は出てます」マイクテストでよからぬことを発する草なぎ。その仕返しか、リハ中の草なぎを上半身ハダカの二人が囲んで邪魔をする。
一方、ステージの片隅に座って黙々とギターの練習をする稲垣。メイキングを見ていてもキャラがぶれないSMAP。
中居 実は、あのウワサは…。
慎吾 ダメダメダメ!それ言っちゃったらシャレになんないって(笑)。
この頃も相変わらずSMAPの不仲説などが報じられていたようで、インタビュアーも気をつかいながら聞く様子が伝わってくる。二人はむしろ逆手に取って、笑い話にして消化している。「JUNON」1997年10月号では中居と香取の対談が掲載されていた。
最近二人の感じが変わったのでは?と聞かれると、
慎吾 うん。中居くん、やさしくなった(笑)。
中居 慎吾も20歳だからねぇ。もう、あんまりキビシイことは言わないよ。(慎吾くんの髪をいじりながら)15、16でこの頭してたら「何やってんだ? オマエ。直してこい、それ」って言ってただろうけど。
先輩でありお兄ちゃんのような中居と香取の関係。身長が伸び、あどけなさが消えた香取。スーツを着て中居と並ぶと、4歳の年齢差を感じないほど大人に見える。
グループ結成から一緒に過ごして10年。「お互いの存在が暗黙の了解」みたいになっていると話す中居。昨年まではライブ終わりは自由行動をしていたが、なぜかこの年は毎回全員でごはんを食べてお酒を飲んでいたそう。
「最近みょうに連帯感あるじゃん、俺ら(笑)」
「なんでだろう。気持ちワリィ(笑)」
中居に続いて香取も、
「ちょっと怪しいっていうか(笑)」
「オッサンのバンドが、ライブ終わってみんなで集まって飲んでいるっていう感じなんだよね、まさに(笑)」
20歳になりお酒が解禁になった香取。しかしメンバーは、あまりお酒を飲まない木村に自分のペースを守る稲垣と、ちょっとつれない感じ。
慎吾 あと、吾郎ちゃんはすすめてもマイペース。自分の量しか飲まない。
中居 扱いにくい女の子みただいだよ(笑)。絶対にスキをみせないコっているじゃん?
その後も草なぎの酔っぱらいエピソードが続く。木村に「拓哉、飲めよー」と絡んだり、中居が一人離れた席にいるのを見て、椅子を持ってきて「中居君一緒に飲もうよ」と誘ったり、最終的には5人揃って飲んだことなどを明かした。不仲説を流したのはどこの誰なんだろう。
中居と香取の対談に続いて、翌月号(JUNON/1997年11月号)では稲垣吾郎と草なぎ剛の対談が掲載されている。
話題はコンサートの打ち上げの様子から。稲垣を除くメンバーは学生のノリでお酒を飲んで盛り上がっているそう。中居の「吾郎は扱いにくい女の子みたい」発言に、反論する稲垣。
稲垣 なにいっちゃってんだか(笑)(シレッと)あ、でも、僕は、酔わせた女のコをくどくのには反対ですから。フェアじゃないもの。
紳士なゴローちゃん。みんながワイワイする横で一人ワイングラスを傾けている姿が浮かぶ。
剛 僕と吾郎ちゃんは、昔からおいしいものを食べるのが好きだったよね。中居くんはどこに行ってもすぐに「白飯」頼んじゃうけど。
稲垣 そう、どんなにおいしいものがあっても「豚キムチと白飯」とかいっちゃう(笑)
コンサートで地方へ行くと、早起きになる稲垣。朝、ホテルのプールに入っていたら、ビキニ姿の男性が二人。木村と香取だった。一方、中居と草なぎはギリギリまで寝るタイプと、体力温存型と発散型にわかれるSMAP。
剛 けどさ、ドラマで何本主役をはっても、コンサートを何百本やったとしても、過去は過去だと思わない?「すごい」とか思ってないで、どんどん崩していかないと。
吾郎 そうそう。この世界、確かに経験って必要だし実績も必要。でも、大切なのは作ってきた足跡じゃなくて、これからだからね。
剛 それに、見てる人の記憶って、限界あるじゃない。過ぎ去ったことはすぐに忘れちゃう。ただね、CDを出せたりテレビに出たりできる人ってそう何人もいるわけじゃないんだから、少しでも人の心に残るものを作っていきたいって気持ちはいつもあるんだけど。
吾郎 この仕事をしている以上、安定はないんだと思う。もしかしたら、“異変”を常に起こしていかないといけないんだろうし。
剛 でも、ひとつ言えることは、5人の見つめているものや方向が同じ限り、SMAPはずっと続いていくんだよ、きっと。
「木村君とは以前、一緒に仕事をしたことがあって、今時珍しいくらい何でも一生懸命にやる人だなと思っていた。スマスマをやり始めたら、メンバー全員がそうだったんで驚かされましたね」
(日経エンターテインメント/1997年9月号)
当時「SMAP×SMAP」の音楽コーナーの演出を担当していたフジテレビジョン編成局制作室第2制作部の深瀬雄介氏のコメントだ。
「CG合成をこうしたらカッコイイとか、ゲストについての要望とか。的外れだった一蹴するけど、そうじゃないから…。」
番組ではゲストを招いて手料理でもてなしトークをする。コントやゲームコーナー、ショートドラマなどのコーナーに、最後は歌で締めくくるのがおおまかな構成だ。音楽コーナーは1時間番組のたった数分のワンコーナー。手を抜こうと思えば抜けなくもない気もするけど、スタッフにしかわからないような技術的な提案もする。そんなSMAPを前に、周囲も「必然的に番組に手間をかける時間が増えてしまいます」。
残念ながら12月26日に最終回を迎えるスマスマ。20年9ヶ月という長い間看板番組でいられたのは、細部に手を抜かずに作り続けてきたからだろう。
「自分以外に頭回転してるのが4人もいるからさ。全員がどこで何をやってるか、ずっと見てないといけない。こっちでワーッて盛り上がってる向こうで、何かやってるヤツがいたりするんで、後ろにも目がないと(笑)。「ちゃんと手つないでるかー、離れてないかー」っていうね。だからラクになれる番組なんてなんてないよ」(JUNON/1997年2月)
メンバーと一緒に出演する番組でさえこのスタンスだ。単独で出演する番組はどんな気持ちで臨んでいるのだろう。
どれだけ人気のあるグループに成長しようとも、勢いに任せた行動はしないと続ける。
「最終的な目標が何かはまだわからない。でも、たとえば高視聴率取れればいいってもんじゃないし、それで何かを手に入れたような気になる生き方だけはしたくないと思う。バラエティでも歌でも芝居でも、いろんなことをやっていくなかで、人間的にクオリティを高めていければ、それがいちばんだよね」
SMAPが歩んできたように、中居個人としても深夜帯から一歩一歩着実に進んでいきたい。仕事上数字は求められるけれど、数字が取れるからという理由だけでは突っ走らない――仕事に対する姿勢はいまも変わっていないと思う。
SMAPは全員が歌って踊り、役者もする。その上で中居は司会、稲垣は映画、草なぎはエッセイと個人としての方向を持っている。
『同じグループだからって、やりたいことがみんな一緒ってのも気持ち悪いじゃない?(笑)よく、解散するグループがその理由で、「自分たちのやりたいことがバラバラになったから」っていうけど、俺はバラバラになったっていいじゃないかって思うのよ。グループにいることでやりたいことができないんなら、そこを離れて好きなことやって、また帰ってくればいいんだからさ。SMAPはそれができるグループなんだよね。』
ライブの後半。シルバーのスーツに着替えて登場したSMAP。
『それじゃまた』を歌う最中に、壁に描かれたSMAPの文字にスプレーで色をつける香取。やんちゃっぷりを発揮したかと思えば、「やるだけやったよね」の歌詞の時に目に涙を浮かべていた。
前出の中居と香取の対談の中に、こんなやりとりがある。
中居 さっきも言ったけど、もう10年だから。
慎吾 10年…すごいよぉ。
中居 オマエ、人生の半分SMAPじゃん?
慎吾 うん。
中居 最悪の人生(笑)
慎吾 (うなづいて)ちょーヤバいよ(笑)。
1997年の時点で既に人生の半分をSMAPとして過ごしてきた香取。歌詞と人生がリンクしたのか、涙した理由が少しわかった気がする。
「10年後、何をしてると思いますか?」と聞かれると、「中居くん35だよ(笑)」と茶化しつつ答えた。「10年後もSMAP!」。
(柚月裕実 イラスト・いしきりひなほ)
【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
SMAPがこれまでに見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。
舞台裏を撮影するカメラに向かって、かわいらしい声でしゃべる香取。ライトで照らされると自分で効果音をつける木村、カメラにむかってピースサインする中居。ライブ映像は珍しく舞台裏からスタートする。
15.Sep.1997 YOKOHAMA――字幕に続いて、顔に「ス」の字が書かれたてるてるぼうずが映る。横浜スタジアムでの野外公演、雨が心配だ。
SMAP SUMMER CONCERT 1997“ス”
1997年7月19日山形からスタートした「SMAP 1997 "ス" 〜スばらしい!ステキな!スゴイぞ!スーパースペシャルコンサート〜」。
見事な“ス”づくしのツアータイトル。山形を皮切りに全国9ヵ所をまわった。
コンサートはアルバム『011ス』をベースに構成されている。
SMAP史上初の発売延期を経てリリースしたアルバムは、『ダイナマイト』や、『セロリ』というSMAPを代表する楽曲が収録されている。
スガシカオや忌野清志郎、そして世界的に知られる音楽プロデューサーのナイル・ロジャースがギターリストとして参加するなど、豪華な制作陣をむかえた。
当時の日経エンターテインメントでは、「打ち込み全盛の今、この演奏を聞くことができるCDは貴重」と紹介している。流行に流されない楽曲づくりが、長く愛される秘訣か。
『SHAKE』からスタートしたライブ。『俺たちに明日はある』でテンションをあげたところで、ややテンポを落として『セロリ』へ。髪を後ろで一つに結わえた木村がギターを持つ。トントンとギターを叩くと、メンバーが歌い出す。ワンフレーズ歌ったところで香取が「セイ!」とマイクを客席に向ければ、ファンのかわいらしい声が響く。ステージを作る一員として迎えてくれている感じがして嬉しい。「君のこと」の歌詞に合わせて中居がカメラに向かって指差し。口パクで「好きなのさ〜」で投げキス。中居くんがアイドルしてる!!
てるてる坊主の力及ばず、『どんないいこと』あたりではっきりと雨が見える。
ゴローちゃんがしっとり歌う横で、クルクル回るつよぽん。くっついたり離れたりする中居と香取。中居にお尻をむけながら再び近づくと、慎吾ちゃんのお尻に頭をコンとぶつける中居くん。かわいい。かわいいけど、謎だ……。
その後もイチャイチャする二人。肩を組んで、ソロパートを恥ずかしそうに歌う中居に、「いいから歌えよ」といわんばかりに顔をみつめる慎吾ちゃん。歌い終えると中居の頭を抱えておでこをつける。あああ…この時つき合ってたの? 一方で、ギターを演奏しながらしっかり歌う木村と稲垣。リズムをとりながら体を動かしている草なぎ。たった一曲なのにみどころがばかりで目が離せない。
木村と香取が歌う『ココニイルコト』はスガシカオの作詞・作曲。スタジアムの遠くに見える横浜のネオンを背景に、フェンスとレンガ風のセット。ゆっくりとしたテンポに体を揺らしながらリズムをとる二人。歌声が重なるとミュージカルの一コマのよう。
途中からモノクロ映像で進行するなど、この頃のライブ映像は積極的に編集が施されている。
ライブ映像の合間にリハーサル風景も収録されている。上半身はだかでリハーサルに挑む香取と木村。腕には同じ位置にSMAPマークのタトゥーシールを貼っている。
「あー、慎吾の腹は出てます」マイクテストでよからぬことを発する草なぎ。その仕返しか、リハ中の草なぎを上半身ハダカの二人が囲んで邪魔をする。
一方、ステージの片隅に座って黙々とギターの練習をする稲垣。メイキングを見ていてもキャラがぶれないSMAP。
不仲説に中居と香取は…
中居 実は、あのウワサは…。
慎吾 ダメダメダメ!それ言っちゃったらシャレになんないって(笑)。
この頃も相変わらずSMAPの不仲説などが報じられていたようで、インタビュアーも気をつかいながら聞く様子が伝わってくる。二人はむしろ逆手に取って、笑い話にして消化している。「JUNON」1997年10月号では中居と香取の対談が掲載されていた。
最近二人の感じが変わったのでは?と聞かれると、
慎吾 うん。中居くん、やさしくなった(笑)。
中居 慎吾も20歳だからねぇ。もう、あんまりキビシイことは言わないよ。(慎吾くんの髪をいじりながら)15、16でこの頭してたら「何やってんだ? オマエ。直してこい、それ」って言ってただろうけど。
先輩でありお兄ちゃんのような中居と香取の関係。身長が伸び、あどけなさが消えた香取。スーツを着て中居と並ぶと、4歳の年齢差を感じないほど大人に見える。
グループ結成から一緒に過ごして10年。「お互いの存在が暗黙の了解」みたいになっていると話す中居。昨年まではライブ終わりは自由行動をしていたが、なぜかこの年は毎回全員でごはんを食べてお酒を飲んでいたそう。
「最近みょうに連帯感あるじゃん、俺ら(笑)」
「なんでだろう。気持ちワリィ(笑)」
中居に続いて香取も、
「ちょっと怪しいっていうか(笑)」
「オッサンのバンドが、ライブ終わってみんなで集まって飲んでいるっていう感じなんだよね、まさに(笑)」
20歳になりお酒が解禁になった香取。しかしメンバーは、あまりお酒を飲まない木村に自分のペースを守る稲垣と、ちょっとつれない感じ。
慎吾 あと、吾郎ちゃんはすすめてもマイペース。自分の量しか飲まない。
中居 扱いにくい女の子みただいだよ(笑)。絶対にスキをみせないコっているじゃん?
その後も草なぎの酔っぱらいエピソードが続く。木村に「拓哉、飲めよー」と絡んだり、中居が一人離れた席にいるのを見て、椅子を持ってきて「中居君一緒に飲もうよ」と誘ったり、最終的には5人揃って飲んだことなどを明かした。不仲説を流したのはどこの誰なんだろう。
中居と香取の対談に続いて、翌月号(JUNON/1997年11月号)では稲垣吾郎と草なぎ剛の対談が掲載されている。
話題はコンサートの打ち上げの様子から。稲垣を除くメンバーは学生のノリでお酒を飲んで盛り上がっているそう。中居の「吾郎は扱いにくい女の子みたい」発言に、反論する稲垣。
稲垣 なにいっちゃってんだか(笑)(シレッと)あ、でも、僕は、酔わせた女のコをくどくのには反対ですから。フェアじゃないもの。
紳士なゴローちゃん。みんながワイワイする横で一人ワイングラスを傾けている姿が浮かぶ。
剛 僕と吾郎ちゃんは、昔からおいしいものを食べるのが好きだったよね。中居くんはどこに行ってもすぐに「白飯」頼んじゃうけど。
稲垣 そう、どんなにおいしいものがあっても「豚キムチと白飯」とかいっちゃう(笑)
コンサートで地方へ行くと、早起きになる稲垣。朝、ホテルのプールに入っていたら、ビキニ姿の男性が二人。木村と香取だった。一方、中居と草なぎはギリギリまで寝るタイプと、体力温存型と発散型にわかれるSMAP。
剛 けどさ、ドラマで何本主役をはっても、コンサートを何百本やったとしても、過去は過去だと思わない?「すごい」とか思ってないで、どんどん崩していかないと。
吾郎 そうそう。この世界、確かに経験って必要だし実績も必要。でも、大切なのは作ってきた足跡じゃなくて、これからだからね。
剛 それに、見てる人の記憶って、限界あるじゃない。過ぎ去ったことはすぐに忘れちゃう。ただね、CDを出せたりテレビに出たりできる人ってそう何人もいるわけじゃないんだから、少しでも人の心に残るものを作っていきたいって気持ちはいつもあるんだけど。
吾郎 この仕事をしている以上、安定はないんだと思う。もしかしたら、“異変”を常に起こしていかないといけないんだろうし。
剛 でも、ひとつ言えることは、5人の見つめているものや方向が同じ限り、SMAPはずっと続いていくんだよ、きっと。
メンバー全員が一生懸命「SMAP×SMAP」
「木村君とは以前、一緒に仕事をしたことがあって、今時珍しいくらい何でも一生懸命にやる人だなと思っていた。スマスマをやり始めたら、メンバー全員がそうだったんで驚かされましたね」
(日経エンターテインメント/1997年9月号)
当時「SMAP×SMAP」の音楽コーナーの演出を担当していたフジテレビジョン編成局制作室第2制作部の深瀬雄介氏のコメントだ。
「CG合成をこうしたらカッコイイとか、ゲストについての要望とか。的外れだった一蹴するけど、そうじゃないから…。」
番組ではゲストを招いて手料理でもてなしトークをする。コントやゲームコーナー、ショートドラマなどのコーナーに、最後は歌で締めくくるのがおおまかな構成だ。音楽コーナーは1時間番組のたった数分のワンコーナー。手を抜こうと思えば抜けなくもない気もするけど、スタッフにしかわからないような技術的な提案もする。そんなSMAPを前に、周囲も「必然的に番組に手間をかける時間が増えてしまいます」。
残念ながら12月26日に最終回を迎えるスマスマ。20年9ヶ月という長い間看板番組でいられたのは、細部に手を抜かずに作り続けてきたからだろう。
「視聴率取れればいいってもんじゃない」中居の仕事論
「自分以外に頭回転してるのが4人もいるからさ。全員がどこで何をやってるか、ずっと見てないといけない。こっちでワーッて盛り上がってる向こうで、何かやってるヤツがいたりするんで、後ろにも目がないと(笑)。「ちゃんと手つないでるかー、離れてないかー」っていうね。だからラクになれる番組なんてなんてないよ」(JUNON/1997年2月)
メンバーと一緒に出演する番組でさえこのスタンスだ。単独で出演する番組はどんな気持ちで臨んでいるのだろう。
どれだけ人気のあるグループに成長しようとも、勢いに任せた行動はしないと続ける。
「最終的な目標が何かはまだわからない。でも、たとえば高視聴率取れればいいってもんじゃないし、それで何かを手に入れたような気になる生き方だけはしたくないと思う。バラエティでも歌でも芝居でも、いろんなことをやっていくなかで、人間的にクオリティを高めていければ、それがいちばんだよね」
SMAPが歩んできたように、中居個人としても深夜帯から一歩一歩着実に進んでいきたい。仕事上数字は求められるけれど、数字が取れるからという理由だけでは突っ走らない――仕事に対する姿勢はいまも変わっていないと思う。
SMAPは全員が歌って踊り、役者もする。その上で中居は司会、稲垣は映画、草なぎはエッセイと個人としての方向を持っている。
『同じグループだからって、やりたいことがみんな一緒ってのも気持ち悪いじゃない?(笑)よく、解散するグループがその理由で、「自分たちのやりたいことがバラバラになったから」っていうけど、俺はバラバラになったっていいじゃないかって思うのよ。グループにいることでやりたいことができないんなら、そこを離れて好きなことやって、また帰ってくればいいんだからさ。SMAPはそれができるグループなんだよね。』
人生の半分SMAPじゃん?
ライブの後半。シルバーのスーツに着替えて登場したSMAP。
『それじゃまた』を歌う最中に、壁に描かれたSMAPの文字にスプレーで色をつける香取。やんちゃっぷりを発揮したかと思えば、「やるだけやったよね」の歌詞の時に目に涙を浮かべていた。
前出の中居と香取の対談の中に、こんなやりとりがある。
中居 さっきも言ったけど、もう10年だから。
慎吾 10年…すごいよぉ。
中居 オマエ、人生の半分SMAPじゃん?
慎吾 うん。
中居 最悪の人生(笑)
慎吾 (うなづいて)ちょーヤバいよ(笑)。
1997年の時点で既に人生の半分をSMAPとして過ごしてきた香取。歌詞と人生がリンクしたのか、涙した理由が少しわかった気がする。
「10年後、何をしてると思いますか?」と聞かれると、「中居くん35だよ(笑)」と茶化しつつ答えた。「10年後もSMAP!」。
(柚月裕実 イラスト・いしきりひなほ)
【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
SMAPがこれまでに見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。