この夏の旅行やレジャーに持っていきたい高画質なコンパクトデジカメとして、1インチの大型センサーを搭載する「1インチコンデジ」に注目。持ち運びやすいコンパクトボディながら、デジタル一眼レフやミラーレスにも迫る高画質が得られる1インチコンデジを、3つのタイプに分けてピックアップしてみた。

※本記事中の価格表記は2016年8月8日時点での価格.com最安価格を参考にしています。※レンズ焦点距離の表記はすべて35mm判換算の画角になります。

3つのタイプ別に人気の1インチコンデジをピックアップした

1インチコンデジの魅力は「コンパクト×高画質」にあり

1インチコンデジの最大の魅力は、コンパクトなボディと高画質を両立していること。一般的なデジカメと変わらない持ち運びやすいサイズのボディに、大型センサーと高性能レンズを組み合わせることで、デジタル一眼レフやミラーレスに迫るような高画質な撮影が可能となっている。

1インチコンデジは、その名称が示すように、撮像素子に1インチ(1型)サイズのセンサーを採用している。一般的なコンデジや高画質をうたうスマートフォン(スマホ)の一部は1/2.3インチの撮像素子だ。比べると1インチは1/2.3インチよりも面積比でおよそ4倍も大きい。

一般的に撮像素子は大きいほうが画質面で有利になる。具体的には、大きいほうが高感度でノイズが少なく、階調性が高く色の表現力にすぐれる。特に違いが出るのが暗いところでの画質。1インチコンデジは、スマホが苦手とする屋内や夜景や暗いところでも、ノイズが少なくてキレイな写真を撮ることができる。

さらに1インチコンデジは、高性能なズームレンズを搭載しているのも特徴だ。多くのモデルが明るい大口径レンズを採用しており、暗いところでも感度を抑えて撮影することができる。また、1インチの大きなセンサーと大口径レンズによって、ボケを生かした写真が撮りやすいのも特徴となっている。

キヤノンの1インチコンデジの人気モデル「PowerShot G7 X Mark II」を使って手持ちで撮影した作例。焦点距離は85mm、シャッタースピードは1/15秒、絞り値はF2.8、感度はISO1250。高感度での撮影になるがノイズが少なく、キレイな夜景写真に仕上がった

これはキヤノンの従来モデル「PowerShot G7 X」で撮影したもの。焦点距離は100mmで絞り値はF4。1インチの大型センサーによって大きな背景ボケが得られている

1インチコンデジには「スタンダードモデル」「EVF内蔵モデル」「高倍率ズームモデル」の3つのタイプがある

1インチコンデジは、大きく分けて、スタンダードモデル、EVF内蔵モデル、高倍率ズームモデルの3つがある。本記事ではこれら3つのタイプ別に、この夏に購入できる人気モデルを紹介。どのモデルも有効2000万画素程度の1インチセンサーを搭載する点は共通しているが、採用するレンズや機能性で違いがある。

スタンダードモデル3機種

スタンダードモデルは、手のひらサイズのコンパクトなボディで、コストパフォーマンスにすぐれるのが特徴。1インチコンデジの中でもっとも人気の高い製品で、キヤノンの「PowerShot G9 X」「PowerShot G7 X Mark II」、ソニーの「サイバーショット DSC-RX100」の3機種が売れ筋モデルとなっている。コンパクトで写りがいいカメラを安く手に入れたいのなら、これらの中から選ぶのがいいだろう。

キヤノン「PowerShot G9 X」
薄型・軽量ボディを実現した人気モデル

PowerShot G9 X

PowerShot G9 X

奥行30.8mmで重量約209g(バッテリーおよびメモリーカード含む)の薄型・軽量ボディが特徴の人気モデル。レンズは広角28mm〜望遠84mm対応の光学3倍ズームレンズで、広角端では絞り開放F2の明るさを実現している。モニターは固定式になるものの、直感的な操作がしやすいようにタッチパネルに対応する。価格は42,000円程度でコストパフォーマンスが高く、持ち運びやすいコンパクトボディながら、キヤノンの高画質が得られるモデルとして人気を集めている。

キヤノン「PowerShot G7 X Mark II」
大口径レンズや最新の「DIGIC 7」を採用する上位モデル

PowerShot G7 X Mark II

PowerShot G7 X Mark II

PowerShot G9 Xの上位モデルとなる製品で、広角24mm〜望遠100mm対応の光学4.2倍ズームレンズを採用。PowerShot G9 Xと比べると広角はよりワイドになり、望遠は100mmまで伸びるうえ、絞り開放は広角端でF1.8、望遠端でF2.8とズーム全域で明るい大口径レンズとなる。さらに、映像エンジンは最新の「DIGIC 7」で、よりノイズを抑えた画質を実現。PowerShot G9 Xと比べると、オートフォーカスや手ブレ補正の性能も高く、モニターも上方向に180度、下方向に45度動かせるチルト可動式となる。全体的に性能にすぐれる分、価格はPowerShot G9 X よりも高く68,000円程度となっている。

ソニー「サイバーショット DSC-RX100」
1インチコンデジを代表するロングセラーモデル

サイバーショット DSC-RX100

サイバーショット DSC-RX100

2012年6月に発売になった、ソニーの1インチコンデジの初号機。およそ4年にわたって高い人気を維持するロングセラーモデルだ。広角28mm〜望遠100mmに対応する光学3.6倍ズームのカールツァイス「バリオ・ゾナーT*」レンズを採用し、広角端では絞り開放F1.8の明るさを実現している。大型センサー×高性能レンズによる高画質が得られる1インチコンデジを象徴するモデルと言ってもいいだろう。最新モデルと比べると撮像素子が高感度に強い裏面照射型ではないのと、モニターが固定式となるのが違いとなるが、価格は4万円を切っており、コストパフォーマンスは高い。

このほか、スタンダードモデルとしてはDSC-RX100の上位モデルとなる「サイバーショット DSC-RX100M2」も用意されている。DSC-RX100と同じ光学3.6倍ズームレンズを継承しつつ、裏面照射型センサーを採用。価格は59,000円程度となる。また、価格.comではPowerShot G7 X Mark II の従来モデルとなるPowerShot G7 Xをまだ手に入れることができる。PowerShot G7 X Mark IIと同じ、光学4.2倍ズームレンズと撮像素子を搭載するモデルだ。価格は52,000円程度で、PowerShot G7 X Mark II と比べて15,000円程度安い。販売終了後の旧モデルを安く手に入れることができるのも価格.comらしいところだ。

EVF内蔵モデル4機種

EVF内蔵モデルは、電子ビューファインダーを内蔵しており、明るい屋外でモニターが見にくいときに視認性を確保できるのが便利。ファインダーを覗いて撮れるので撮影に集中できるという利点もある。現時点では3メーカーから計4機種が用意されている。いずれも、1インチコンデジの上位モデルに位置づけられており、価格はスタンダードモデルよりも少し高くなっている。

ソニー「サイバーショット DSC-RX100M3」
大口径レンズとポップアップ式EVFを採用

サイバーショット DSC-RX100M3

サイバーショット DSC-RX100M3

EVF内蔵モデルの中でも人気が高いモデル。広角24mm〜望遠70mmに対応する光学2.9倍のカールツァイス「バリオ・ゾナーT*」ズームレンズを採用する。下位モデルのDSC-RX100/ DSC-RX100M2と比べるとズーム倍率が低くなっているものの、広角端で絞り開放F1.8、望遠端でF2.8の大口径を実現したのが特徴だ。EVFは144万ドットの0.39型有機ELファインダーを採用。ポップアップ式なので使わないときはボディに収納しておくことができる。モニターはチルト可動式。価格は77,000円程度。

キヤノン「PowerShot G5 X」
高精細EVFとバリアングルモニターを採用

PowerShot G5 X

PowerShot G5 X

PowerShot G7 X Mark IIと同じ大口径の光学4.2倍ズームレンズを採用しつつ、約236万ドットの高精細な0.39型有機ELファインダーを搭載するのが特徴だ。ファインダーを覗いたときに違和感がないようにカメラの光軸上にEVFを配置するなど、撮影のしやすさを追求したモデルとなる。横開きのタッチパネル対応バリアングルモニターを採用するのも、このモデルの特徴だ。価格65,000円程度。こちらもサイバーショット DSC-RX100M3と並んで、EVF内蔵モデルとして人気が高いモデルだ。

パナソニック「LUMIX DMC-TX1」
光学10倍ズーム対応の軽量モデル

LUMIX DMC-TX1

LUMIX DMC-TX1

パナソニックも1インチコンデジをラインアップしている。ほかのEVF内蔵モデルと異なるのは、約310g(本体、バッテリー、メモリーカード含む)のコンパクトボディに、広角25mm〜望遠250mmに対応する光学10倍ズームの「LEICA DC VARIO-ELMARITレンズ」を採用していること。光学10倍ズームながら広角端では絞り開放F2.8の明るさを実現している。4K動画記録に対応するのも特徴だ。内蔵EVFは約116万ドットのコンパクトな0.2型液晶ファインダーで、モニターはタッチパネル対応の固定式となる。価格は79,000円程度。

ソニー「サイバーショット DSC-RX100M4」
多彩な機能を搭載した「RX100シリーズ」の最上位モデル

サイバーショット DSC-RX100M4

サイバーショット DSC-RX100M4

ソニーの「RX100シリーズ」の最上位モデルで、ソニーの最新技術が詰まった1インチコンデジ。センサーの裏面にDRAMチップを搭載するメモリー一体積層型センサーを採用するのが特徴で、従来比で5倍以上となる高速読み出しを実現。これにより、最高約16コマ/秒の高速連写や、最高1/32000秒の電子シャッター、最大960fps(40倍)のスーパースローモーションなどの多彩な機能を実現している。電子シャッター時の動体ゆがみを低減する「アンチディストーションシャッター」も搭載。さらに、画素加算のない全画素読み出しでの高画質な4K動画記録も可能となっている。ポップアップ式のEVFは、約236万ドットの高精細な0.39型有機ELファインダーだ。価格は108,000円程度。動画も含めてさまざまな表現を用いた撮影が行いたい場合に選びたい高機能モデルだ。

高倍率ズームモデル2機種

光学20倍を超える高倍率ズームレンズを搭載する1インチコンデジは、キヤノン「PowerShot G3 X」とソニー「サイバーショット DSC-RX10M3」が現行モデルとなっている。大きめのボディに高倍率ズームレンズを搭載しているという点では同じカテゴリーのカメラとなるが、PowerShot G3 Xはバランスを重視したモデルで、サイバーショット DSC-RX10M3は高機能を追求したハイスペックモデルとなる。

キヤノン「PowerShot G3 X」
サイズと価格のバランスにすぐれた光学25倍ズームモデル

PowerShot G3 X

PowerShot G3 X

広角端で絞り開放F2.8を実現した、広角24mm〜望遠600mmの光学25倍ズームレンズを搭載。上方向に180度、下方向に45度動くチルト可動式タッチパネルモニターを採用するほか、防塵・防滴構造のボディを実現しているのも特徴だ。約236万ドットの外付けEVF「EVF-DC1」(別売)を装着して利用することもできる。価格は82,000円程度。光学25倍ズームレンズを搭載する1インチコンデジとしてはコンパクトで、ボディサイズと価格のバランスにすぐれたモデルとなっている。

ソニー「サイバーショット DSC-RX10M3」
大口径の光学25倍ズームレンズを搭載する高機能モデル

サイバーショット DSC-RX10M3

サイバーショット DSC-RX10M3

広角24mm〜望遠600mmの光学25倍に対応するカールツァイス「バリオ・ゾナーT*」ズームレンズを搭載。絞り開放は広角端でF2.4、望遠端でF4と、高倍率ズームレンズながらズーム全域で明るい大口径レンズとなっている。DSC-RX100M4と同様、メモリー一体積層型センサーを採用し、最高1/32000秒の「アンチディストーションシャッター」やスーパースローモーション撮影、全画素読み出しによる4K動画記録などの高機能を実現。約236万ドットの0.39型有機ELファインダーも装備する。付加機能の多いモデルで、価格は160,000円と今回紹介する1インチコンデジの中でもっとも高い。

なお、ソニーはDSC-RX10M3の下位モデルとして「サイバーショット DSC-RX10M2」も用意している。こちらもメモリー一体積層型センサーを採用するモデルで多彩な機能を搭載しているが、レンズがズーム全域で開放F2.8を実現した光学8.3倍ズームとなっている。価格は約130,000円。

このほか、現行モデルではないものの、価格.comではパナソニックの高倍率ズームモデル「LUMIX DMC-FZ1000」を購入することができる。広角24mm〜望遠400mmの光学16倍に対応し、4K動画記録も可能だ。価格は65,000円程度。

まとめ 旅行やレジャーに限定するならスタンダードモデルかEVF内蔵モデルがベターな選択

以上、3つのタイプ別に1インチコンデジの人気モデルを紹介した。

旅行やレジャーで気軽に使うことに限定すると、コンパクトで持ち運びやすいものがいい。今回紹介したものの中では、スタンダートモデルか、予算に余裕があればEVF内蔵モデルのどちらかを選ぶのがベターだ。どちらもかばんの中に入れておいてもじゃまにならないコンパクトボディを実現している。

高倍率ズームモデルも、もちろん旅行やレジャーで持ち運んで利用できるが、ズームが伸びる分ボディが大きくなっている。旅行やレジャー以外に、作品作りを含めた本格的な撮影も行うのであれば、このタイプを選ぶのがいいだろう。大型センサーを搭載する一眼レフやミラーレスで光学25倍ズームというズーム倍率を得る場合と比べると、格段にコンパクトなシステムであることは付け加えておきたい(レンズ交換式では広角から望遠まで光学25倍ものズーム域をカバーするレンズは存在しない。最低でも2本以上のレンズを用意する必要がある)。

なお、ニコン初の1インチコンデジとなる「DLシリーズ」3機種については、2016年8月8日時点で発売日が未定になっている。これまでの1インチコンデジにはなかった広角ズームレンズを搭載するモデルが用意されるなど、注目度の高い製品だ。秋以降の発売を期待して待ちたい。

【番外編1】 変わり種の1インチコンデジ

1インチコンデジの番外編として、パナソニックの「LUMIX DMC-CM10」と、ソニーの「サイバーショット DSC-QX100」を紹介しておこう。

LUMIX DMC-CM10は、奥行21.1mmの薄型ボディに、開放F2.8で28mm単焦点の「LEICA DC ELMARIT」レンズを搭載。Android OSを採用し、LTE通信機能を搭載しているのが特徴だ。撮影した写真はプリインストールアプリで表示・編集ができ、SNSにシームレスにアップロードできる。Google Playに対応し、アプリを追加することも可能だ。価格は59,000円程度。SNSとスムーズに連携できるという点では面白い1インチコンデジだが、操作が一般的なデジカメとは違うのと、ズームレンズではなく単焦点レンズを採用しているのが、上で紹介したモデルと大きく異なる点である。

LUMIX DMC-CM10

LUMIX DMC-CM10

ソニーの「サイバーショット DSC-QX100」は、現行製品ではないものの、価格.comではまだ手に入れられる製品。一般的なデジカメとは異なり、液晶モニターは非搭載で、スマホとWi-Fiで接続して、スマホの専用アプリを使って操作・撮影するユニークな製品だ。撮影した写真はスマホにも保存されるので、SNSへのアップロードもスムーズに行える。レンズには、サイバーショット DSC-RX100M2と同等となる光学3.6倍ズームレンズを搭載。価格は46,000円程度。なかなか面白い製品ではあるが、スマホとの接続に時間がかかる点や、スマホ側のバッテリーを消費してしまう点など課題もあり、使い方に工夫が必要な製品だ。

サイバーショット DSC-QX100

サイバーショット DSC-QX100

【番外編2】 1インチを超える大型センサー搭載モデル

APS-Cセンサーなど1インチを超える大型センサーを搭載するモデルの中から、コストパフォーマンスにすぐれるモデルとして、富士フイルム「FUJIFILM X70」、リコー「GR II」、パナソニック「LUMIX DMC-LX100」、キヤノン「PowerShot G1 X Mark II」の4モデルも簡単に紹介しておきたい。6〜7万円程度の予算があるのであれば、これらの大型センサー搭載の高画質モデルも選択肢に入れておいていいだろう。

FUJIFILM X70は、デジタル一眼レフやミラーレスと同じ、APS-Cサイズの大型センサーを採用するモデル。開放F2.8で広角28mmの単焦点レンズを搭載する。価格は68,000円程度。

GR IIもAPS-Cサイズの大型センサーを搭載するモデルだ。開放F2.8で広角28mmの単焦点レンズを採用し、スペック的にはFUJIFILM X70と似た部分が多い。価格は67,000円程度。

LUMIX DMC-LX100は、1インチよりもひと回り大きいフォーサーズ規格のセンサーを採用するモデル。広角24mm(開放F1.7)〜望遠75mm(開放F2.8)に対応する大口径の光学3.1倍ズームレンズを搭載する。価格は59,000円程度。

PowerShot G1 X Mark IIは、キヤノン「PowerShot Gシリーズ」の最上位モデルで、APS-Cに迫る1.5インチの大型センサーを採用。レンズは24mm(開放F2.0)〜120mm(開放F3.9)に対応する光学 5倍ズームレンズだ。価格は56,000円程度。


>> 3つのタイプ別に厳選 1インチコンデジの選び方2016夏 の元記事はこちら