【レポート】iPhoneはいつ買うべき? 2016〜2017年の購入ガイド - 新モデル登場サイクルの変化にどう対応するか
●2016年iPhoneのポイント
米Wall Street Journalが6月21日(米国時間)に出した記事で、今年2016年に登場が見込まれる次期iPhoneでは現状から大きな変化がないという話題に触れている。2008年のiPhone 3G以降、Appleは年次リリースのiPhoneにおいて2年おきに大幅モデルチェンジを行ってきたが、ちょうど10世代目にあたる今年のiPhoneでいよいよこのサイクルが崩れようとしている。ユーザーとしてはこの変化にどう対処すべきか、最新の"噂"に触れつつ、今後2〜3年を見越した傾向と対策を考えてみる。
○2016年のiPhoneに期待すること
詳細はWall Street Journalの「Apple Unlikely to Make Big Changes for Next iPhone」という記事を参照してほしいが、2016年登場が見込まれるモデルについてポイントを要約すると次の通りだ。
・2016年登場のiPhoneは、現行モデル(つまりiPhone 6s/6s Plus)から"デザイン的"な大きな変化はない
・登場するのは、4.7インチと5.5インチの2モデルで現状維持
・KGI SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏は、新モデルでは1mmほど本体厚が薄くなると予測
・耐水性能が向上し、イヤフォンジャックは廃止。Lightning経由でイヤフォン接続を行う形態に
イヤフォンジャックを除くデザイン上の変化が少ないだけで、機能的にみればプロセッサの更新をはじめ、全体に順当進化となるだろう。ただ、このWSJより少し前にリーク情報として中国から流れてきていた"iPhone 7"向けとみられる部品群の写真によれば、次のような特徴があるという。
・中国の広東省でスマートフォン修理を営むRock Fixによれば、3.5mmイヤフォンジャック端子が確認でき、端子廃止の噂を否定している
・デュアルSIMのトレイらしき部品が確認でき、iPhoneとしては初となるデュアルSIM対応が行われる可能性
・SanDiskメモリチップ情報から、ストレージの最大容量は256GBに拡大した可能性(従来は128GB)
・デュアルカメラモジュールが確認でき、噂のようにモデルによってデュアルカメラ搭載に
・アンテナデザインに変更がみられ、一部モデムチップをIntel製に変更するという噂を肯定する材料となっている
あくまで噂は噂であり、上記情報を紹介しているEngadgetでもリーク情報元自体が混乱を起こしていることを指摘しており、「秋の新製品発表での楽しみが増えた」程度に考えておけばいいだろう。
●期待が膨らむ2017年のiPhone
○2016年のiPhoneと2017年のiPhone
さて、問題はここからだ。携帯キャリアの設定した「2年縛り」というルールがあり、スマートフォンを2年周期で買い換えているユーザーは多いだろう。筆者も日本で所持しているスマートフォンのひとつはiPhoneであり、機種は「iPhone 6」だ。つまり順当にいけば、今年2016年はiPhone買い換えのタイミングとなる。ただ、前述のように「2016年のiPhoneは(デザイン上の)大きな変化はない」といわれ、さらに「2017年のiPhoneでは大きな変化がやってくる」と聞かされれば話は別だ。すでに1年半酷使したiPhoneのバッテリはかなりヘタって心許ないが、騙し騙し「もう1年使ってみるか……」と考えてしまわなくもない。実際、筆者が目や耳にする関係者らのコメントを集めていると、2016年のiPhoneが出てくる直前のタイミングにもかかわらず、出てくるのは「2017年のiPhone」の話ばかりで、余計に悩ましいことになってきている。
今年の始めに「これから3年間でiPhoneに起こることを大胆予想 - 成否を分ける鍵は何?」のタイトルで今後3年間のiPhoneに関する最新情報や考察を簡単にまとめたが、この予想は現実になりつつある。
実際、世界でのiPhoneの売上は頭打ち傾向が強くなり、Appleは次なる成長機会をうかがうべく中国やインドなど人口が多い途上国を中心に積極的に進出している。だがこれら地域での販売増はAppleが当初考えているほどには容易ではなく、すぐに次の作戦を求められるようになる。そこで登場するのが今後3年間の予想でも触れた「製品バリエーションのさらなる増加」で、インドのような途上国だけでなく、既存の成熟市場の中でも特に"Appleファン"と呼べるユーザーをターゲットに「さらに高級モデル」を提供したり、あるいは「iPhone SE」のように「取りこぼしていたユーザーをすくい上げる」という形での拡大を図っていく。
そして2017年のもうひとつ大きなポイントは「iPhoneの2年サイクル更新の終了」だ。WSJのレポートを含め「次回のiPhoneは更新サイクルが3年まで延びる。これが今後続くのか、あるいは1回だけなのかはわからない」というコメントが多く見られるが、Appleはすでに「iPhoneの○年更新」という概念を止めて「新製品のリリース時期は不定期」という形にシフトしようとしているのではないかと筆者は考える。ここ数年ほど「9月に新製品発表を行って9〜11月に徐々に各国で出荷を開始する」というサイクルが続いており、Appleの会計年度で第1四半期(10〜12月期)の業績を大きく押し上げるという形で、新製品の購入タイミングを測るユーザーの目にも、業績動向を観察する投資家の目にも非常に分かりやすかった。
ただ、iPhone SEが今春にリリースされたように、「iPhone新製品は必ず秋に登場する」というわけでもなさそうだ。そして、2年サイクルの終了や投入タイミングの不定期化にともなって、ユーザーと投資家ともにAppleの動向を予測するのは今後さらに難しくなるだろう。
●2018年以降はどうなる
○2018年以降のiPhoneの傾向は
2017年のiPhoneでは有機EL (OLED)採用モデルが登場し、この部品供給元としてSamsungが選定されるというのはほぼ既定路線だ。
Samsungは中小型デバイス向けOLEDとしてアクティブマトリクス方式の「AMOLED」を製造することで知られているが、ジャパンディスプレイ(JDI)やLGディスプレイなど、他のOLEDサプライヤーとして候補に挙がっていたメーカーらは2017年モデルの後期、または他の製品や2018年以降のモデルでの採用になる可能性が高いとみている。SamsungではAMOLEDの供給能力を上げるべく大規模投資を行っているが、すべてのiPhone需要を満たすのは難しいとみられ、2017年時点で提供が見込まれるiPhoneの3〜4モデルのうちの1〜2モデルにAMOLED搭載のものが含まれるのではないかと予想する。このあたりは年初の記事での予想範囲内だ。
OLED採用の結果として、iPhoneはデザイン上の大幅な設計変更が可能となる。自発光デバイスをディスプレイ技術に採用したことにより、まず薄型化が容易になる。Touch IDのディスプレイ統合と狭額フレームの採用や、曲面ガラスの採用など、デザイン上のメリットは大きい。将来的にOLEDの採用モデルが増加すれば、部品点数の少ないOLEDのモジュールはコスト的にも液晶に比べて有利になり、Appleがさらに各種センサーを盛り込むなどiPhoneのハードウェア強化につながる可能性が高まる。後者は非常に興味深い変化だろう。
おそらく、当初のOLED採用モデルはプレミアム版として「高価格帯」の製品になる可能性が高いが、2016年のiPhoneを見送るつもりのユーザーには期待相応のものが出てくるかもしれない。
こうした経緯もあり、Appleが2016年モデルでは「iPhone 7」を採用せず、2017年モデルまで持ち越すことを計画しているという話も出ている。Appleが2016年のiPhoneで「ナンバリング」を止めてしまう可能性もゼロではないのだが、その場合はシリーズ化されてきたiPhoneが転換期に入った証左として考えればいいだろう。
また筆者は今後3年間でiPhoneのバリエーションが「最大で5〜6モデル程度」まで増加することを予想しているが、ここで1点注意するのは「コアモデルはあくまでひとつ」というところだ。現在iPhoneのバリエーションは「4インチのSE」「4.7インチの標準モデル」「5.5インチのPlus」の3種類だが、ここでいうコアモデルは「4.7インチの標準モデル」となる。
iPhone SEの入手が世界各地で困難がことが知られているが、その人気に反してAppleはSEを潤沢に製造していない。理由はいくつか考えられるが、そのひとつは「SEがコアモデルではない」からだ。同様に、Plusの標準モデルに対する販売比率は1〜2割程度といわれている。おそらくSEも同程度なのだと推察される。そのため、仮にAppleがiPhoneのバリエーションを増加させたとしても、出荷台数の大部分はコアモデルである「4.7インチの標準モデル」であり、残りはすべて1〜2割程度で調整してくるだろう。
現在、Appleは1モデルあたりのカラーバリエーションを3種類用意しており、モデル追加で今後さらに在庫調整が困難になってくることが予想される。iPhone需要をモデル内で食い合ういわゆる「カニバライズ」現象をAppleは恐れているといわれるが、それにも関わらずバリエーションを増加させる場合、このような区分けで供給調整を行ってくるのだとみている。
iPhoneの特徴として「中古でも値段が高い」というリセールバリュー面でのメリットが高いことが挙げられるが、今後モデル数が増加して投入サイクルが不定期となった場合、こうした中古を前提とした市場人気が維持しにくくなってくる可能性があるのではないだろうか。流通在庫の増加のほか、投入タイミングの不定期化により価格の不安定要素が高まるからだ。
現在のiPhone市場は2年サイクルなどでの買い換えを前提に維持されている面もあり、ユーザーをどこまで惹きつけていられるのかが今後数年の大きなポイントとなる。以上を踏まえ、2017年とさらにその数年先を考えつつ、お気に入りのiPhone購入タイミングを計ってみてほしい。
(Junya Suzuki)