たまには気のおける友人と、ゆっくり旅行を楽しみたい。そんな女性も多いのではないでしょうか。仕事や家庭などの日常から解き放たれた空間で、女性同士、きっといつもよりも素直におしゃべりができるはず。でも、昔の女性は、なかなかそれも難しかったようです……。


関所に難所……江戸の女性は、旅に出るのも命がけ!?



江戸時代の女性が最も憧れたものって、なんだかわかりますか？
お金持ちになること？　胸を焦がすような恋？
もちろん、それもあるかもしれません。
でも、彼女たちがしたくてもできなかったこと、その一番は「旅」でした。

江戸は女性が圧倒的に少ない町。
その必要性は高く、権限も決して弱いものではありません。
ですが、「女性は家を守る」という役割は今よりも重く、気軽に旅に出るなんていうことは言語道断でした。

当時の旅の代表格といえば、やはり「お伊勢参り」。
でも、お伊勢参りは男性でも命がけ、ましてや女性など、とても行けるものではありません。
当時の言葉にこうした状況を表わした言葉があります。
「入り鉄砲出女（いりてっぽうとでおんな）」……江戸に鉄砲が入ること、江戸から女が出ること、これだけは厳しく禁止する、という意味でした。

ですが、出るなといわれると出たくなるのが人のサガというもの。
ときには命知らずの女たちが江戸を出ようと試みます。
男性と違い、女性であれば関所を通るのもひと苦労。
最も重要と言われていた「箱根関所」は、すべて含めると6ヵ所もあり、しかも女性専用の「チェック係」が存在します。
「人見女（ひとみおんな）」「改め婆（あらためばばあ）」と呼ばれる妖怪のような名前の女性が、体中をチェックして怪しいものを持っていないか確認するのです。

こうした厳しい関所を通っても、女性の旅は危険だらけで気が抜けません。
追いはぎや山賊などがウヨウヨしている山道。
疲れて、そのままその場で野垂れ死に……なんてことも少なくなかったよう。
まさに命がけの旅です。

そんなわけで、江戸の女性はほとんどが江戸で一生を終えました。
彼女たちが楽しみに読んでいたのが、紀行小説。
「東海道中膝栗毛」などを見て、旅するとはどんなに楽しいものか、想像だけで満足していたのかもしれません。

文／岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「女の旅はタイヘン！」として、6月22日に放送しました。

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＜番組概要＞
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放送日時 ：毎週月〜木曜15：00〜16：50
パーソナリティ：堀内貴之、MIO
番組Webサイト：http://www.tfm.co.jp/city/