ダイエットや美肌……女性に比べたら、男性はあまり気を使わなくて羨ましい。そんなふうに思ってしまいます。でも、男性だって人一倍気を遣う場所がありますよね。そう、頭髪です。薄毛に悩まされた江戸時代の武士の悩みは、現代よりも、もっと深刻だったようです。

マゲが結えない！ そのとき武士は……!?



ご存知、江戸時代の日本の男性は、多くの場合「チョンマゲ」を結ってきました。
月代（さかやき）と呼ばれる頭髪を剃り落した髪型がふつうなので、髪が薄くても関係ないのでは？と思いますよね。
でも、全くなくなってしまうとマゲが結えません。
これは、武士にとって最大の恥。
実は武士は、マゲが結えないくらいハゲてしまうと、子どもに家督を譲る、というのが一般的でした。

それでは薄毛に悩む武士たちはどうしていたのかというと、自家製の「毛生え薬」を作り頑張っていました。
江戸時代に刊行された「拾玉続智恵海」という本には、カエルの黒焼き、カタツムリ、サイカチの実を煎じ練り上げたものを頭に塗ると良い、と書かれています。

また、美容ハウツー本「都風俗化粧伝」には、こんなレシピも。
セリ、シソ、トリカブトなどの生薬を煎じて、毛の薄くなったところにつける。
そのときに、指で塗らずにヘラで塗ること。
なぜなら、薬がふれると指に毛が生えてしまうから……。
本当でしょうか。

また、この本にはもっと過激な方法も書かれています。
松葉で薄毛の部分をこすって出血させ、そこにコウモリを黒焼きにして胡麻油で溶かしたものを擦り付ける、というもの。
痛いし染みるし、なによりもっと毛が抜けてしまいそうです！

毛がなくなると、失業の危機もあった江戸の武士たち。
その努力の方法を見ると、現代よりもずっと切羽詰ったものを感じてしまいます。

文／岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「頭髪との、仁義なき戦い」として、2015年10月22日に放送しました。

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＜番組概要＞
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放送日時 ：毎週月〜木曜15：00〜16：50
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