バレーボールの全日本女子チームが9日、味の素ナショナルトレーニングセンターで記者会見を行ない、リオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選(OQT)に向けた抱負を語った。

 主将の木村沙織は引き締まった表情でコメントした。

「ランキングにかかわらず、1試合1試合、プレッシャーのかかる厳しい試合になると思いますが、チーム力で戦い抜きたい」

 4年前のOQTでは「全勝で1位通過」を掲げて戦ったが、途中韓国に敗れ、出場権獲得は最終戦までもつれこんだ。眞鍋政義監督が当時を振り返りつつ、決意を新たにする。

「4年前はホームがアウェーに変わってしまった。あの時は、ロンドン五輪でどうしてもメダルを獲るということを目標にしていたので、その前段階として全勝で1位通過を宣言していた。それが選手たちにかなりのプレッシャーになってしまい、立て直すのに苦労しました。今回はシンプルに8分の4の出場権を狙っていきたいと思います」

 昨年のワールドカップでは代表から外れていた荒木絵里香が復帰した。木村と同じ高校(成徳学園、現・下北沢成徳)の出身で、荒木の出産前まで2人はVプレミアリーグの東レで一緒にプレー。ロンドン五輪では主力として活躍し、銅メダルを獲得した。

「絵里香さんがいてくれることで、何でも話せるし、チームも私もとても楽になりました。(主将になってからの3年間)これまではどうしてもチームのことばかりを優先していましたが、自分のプレーができた上でのチームのこと、と割り切って、今は遠慮せずに自分のこともやっています。OQTについては、4年前もそうでしたけど、本当にどの試合もどうなるかは分からない。いいときばかりではないと思うので、いいイメージは常に持ちつつも、悪かったときにも準備できるように、いろんなシチュエーションを考えて臨みたい」

 木村はロンドン五輪後、トルコリーグに挑戦した。五輪でメダルを獲ったこと、海外リーグを経験できたことなどで満足し、一時は引退も考えていた。トルコまで来た眞鍋監督に「次のキャプテンをやってほしい」と頼まれても、「できません」と即答した。

 しかし、眞鍋監督はあきらめなかった。帰国後も何度もメールを送り、「お前しかいない」とラブコール。ついに木村も「自分がキャプテンをやったらどんなふうになるのかな?」と考えるようになり、最終的には三顧の礼に応える形で引き受けることとなった。

 主将としての木村は「すごく気を遣ってくださっていることがわかります」(セッター宮下遥)というように、チームメイトとコミュニケーションを密にとることを心がけてきた。そのため、前述のようにチームのことばかりが先に来て、自分のプレーが後回しになった部分があった。それが前キャプテン荒木の復帰によって解消されるのは、大きなメリットだろう。

 昨年のワールドカップで出場権獲得を逃した時には、「OQTで(出場権を)命懸けで獲るしかない」と語っていた木村。大会が近づくにつれ、ロンドン五輪の時の司令塔、竹下佳江がチームをまとめるために果たしていた役割が、いかにすごかったか痛感させられたという。解説者として何度か練習を見に来た竹下と話して、ますますその思いを強くした。

「でも、テン(竹下)さんと話してみて、少し気が楽になった部分もありました。本当は4年前のOQTで、テンさんもすごく緊張していたんだと。全然顔には出してなかったですけど」

 木村は今回出場権を獲得できれば4度目のオリンピックとい、う日本女子バレーでは初の偉業となる。

 チームは4月下旬に、昨年のワールドカップで優勝した中国と親善試合を行ない、3試合全敗。高いブロックにシャットアウトされることが多かった。その反省を生かし、現在はブロックカバーなどに取り組んでいる。眞鍋監督は「こてんぱんにやられ、いい反省になった。今一番重視しているのはディグ(スパイクレシーブ)。男性の練習パートナーに毎日来ていただいて、どんどん追い込んでいます。昨日オランダとの練習試合をしましたが、中国との練習試合の時より手応えをつかめた」と話した。

 世界最終予選は14日(土)、東京体育館で開幕。8チームによる総当たり戦で行なわれ、アジア最上位と、それ以外の7チームのうち上位3チームが五輪出場権を獲得する。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari