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●Connected Standbyの実装変更でバッテリーの持ちを改善
2016年4月26日(現地時間、日本は27日早朝)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14332を、ファーストリングを選択したPCとスマートフォン向けにリリースした。本ビルドでは、Bashやコマンドプロンプト、Cortana、Connected Standby周りの改善が行われている。

○Connected Standbyの実装変更でバッテリーの持ちを改善

正直なところ筆者は少々驚いている。前回のWindows 10 Insider Preview ビルド14328から経った4日間で新ビルドをリリースすると予想していなかったからだ。確かにMicrosoft Engineering Systems Team CVP Gabriel Aul氏は、「リリーススピードを速める」と明言しているが、それでも1週間間隔と思っていたため、良い意味で裏切られた気分である。

そのAul氏は公式ブログで多くのフィードバックと、テレメトリーデータを収集するためのクエストを拡充することを明らかにした。Microsoft社内で慣例的に行われてきた不具合検出イベント「Bug Bash」をインサイダーに開放し、本日から4日間は、24時間限定のクエストや、デバイスのシステム構成変更を伴う高度なクエストを実施するという。筆者を含めたインサイダーの皆さんは、Feedback Hubを通じて確認してほしい。

さて、ビルド14322の新機能・改善点だが、Aul氏はBashとコマンドプロンプトの改善を最初に挙げている。ビルド14295から加わった"Bash on Ubuntu on Windows"は本連載でも述べたようにネットワーク周りの問題が発生していた。/etc/resolv.confの修正で対応可能だったが、本ビルドではDNSサーバーを正しく取得し、設定するため手動修正する必要はない。また、/mntでマウントしたディレクトリおよび非マウントディレクトリ間のmvコマンドが正しく動作しない点も修正している。

コマンドプロンプトは、高DPI環境におけるスケーリングを改善した。より良いフォントの選択と日本語を始めとするワールドワイドフォントのレンダリング、カーソルや背景色の表示方法、nanoおよびEmacs(いずれもUNIX系では有名なテキストエディター)使用時のスクロールを改善している。ご承知のとおりbashはコマンドプロンプトやPowerShellからでも起動できるため、コマンドラインインタプリタであるコマンドプロンプトの改善も行ったのだろう。

次にAul氏が挙げた改善点はCortana。Office 365のコンテンツをCortanaから検索可能にしたと述べている。Office 365に含まれるメールやカレンダー、連絡先、各文書ファイルなどをOneDrive for BusinessおよびSharePointサーバーから検索可能にした。ただし、本ビルドリリース直後はサーバー側の問題で正しく動作しないため、改善後に公式ブログを更新するとAul氏は説明している。

3つめの改善点はConnected Standby。スリープ中でも一定の通信を行うことで、メールやIMなどのコンテンツを最新にする機能だが、必然的にバッテリーの持ちは悪くなってしまう。筆者はそれを避けるため持ち歩いているSurface Pro 4は休止状態やシャットダウンを利用しているが、本ビルドではバッテリー節約機能に基本的な技術を統合し、インターネット接続を維持してPCをスリープするシナリオでのバッテリー消費を改善した。Aul氏はスリープ時のバッテリー寿命が改善したことを体験できるはずだと述べている。前述のSurface Pro 4は安定性を優先するため、バージョン1511(Threshold 2)のままだが、なかなか魅力的な改善点だ。

ちなみにお使いのPCがConnected Standbyに対応しているか否かは、「powercfg /a」コマンドで確認できる。「スタンバイ (S0 低電力アイドル) ネットワークに接続されています」というメッセージが表示されれば対応済みだ。

この改善に伴い、Microsoftは2つのオプションを用意している。古い動作に戻す場合は管理者権限を持つコマンドプロンプトから「powercfg /setdcvalueindex SCHEME_CURRENT SUB_ENERGYSAVER ESPOLICY 0」を実行。また、新たなConnected Standbyの動作に変更する場合は「0」を「1」に変更する。

●PC/スマートフォン向け修正内容と既知の問題
○PC/スマートフォン向け修正内容と既知の問題

さて、ここからはPC版およびスマートフォン版の主な改善点を紹介する。まずはPC版から。

・いくつかのPCでConnected Standbyを起因にBSoD(BlueScree of Death)が発生していた問題を修正。
・Microsoft Edgeで巨大なファイルをダウンロードする際に99%で停止する問題を修正。
・Microsoft Edgeでお気に入りバー上のお気に入りをドラッグできなかった問題を修正。
・Grooveミュージックのスプラッシュ画面が表示されたタイミングでクラッシュする問題を修正。
・Grooveミュージックで楽曲を再生中にリストへ楽曲を追加すると再生が停止し、最初から再生される問題を修正。
・BitLockerやデバイス暗号化を有効化している場合、以前のビルドに戻すことができない問題を修正。
・Cortanaのリマインダー機能に関するUIを変更。
・中国語IME の信頼性が向上。以前はPCゲームなどをフルスクリーン表示させた際に変換候補が現れずにクラッシュしていた。
・仮想デスクトップの<このアプリからWindowsをすべてのデスクトップに表示???>の動作を正しく記憶するように修正。
・マルチディスプレイ環境で通知領域のアイコンが正しく表示されない問題を修正。
・ディスプレイのDPIを150%から100%に変更した際、ゲームバーが表示されない問題を修正。
・アクションセンターで多くのコンテンツを持つ通知が展開されない問題を修正。
・タブレットモード終了時、スタートメニュー上のタイルサイズが正しく戻らない問題を修正。
・DPI変更時に通知領域のバッテリーアイコンが正しく表示されない問題を修正。
・タスクビューのサムネイルに表示させる「×」ボタンをクリックするとアプリケーションは終了するが、タイトルやサムネイルが残ってしまう問題を修正。
・UWPアプリケーション名が「@{}」表示される場合はアンインストールオプションを使う。
・リダイレクトフォルダーライブラリがエクスプローラーのナビゲーションウィンドウ内で重複する問題を修正。
・マルチディスプレイ環境でデスクトップアプリ起動時に意図せずビデオがフルスクリーン再生されてしまう問題を修正。
・「設定」の項目をスタートメニューにピン留めすると「設定」がクラッシュする問題を修正。
・「設定」からWindows Defenderが正しく起動しない問題を修正。
・アプリケーションリストの文字がぼやけてしまう問題を修正。
・ロック画面のパスワードフィールドでタッチキーボードが出てこない問題を修正。
・Windowsスポットライト使用時に、ユーザーのお気に入り情報を正しく保持しない問題を修正。

次にスマートフォン版の修正情報を紹介する。

・Cortanaのリマインダー機能に関するUIを変更。
・アクションセンター内のクイックアクション「カメラ」が正しく動作しなかった問題を修正。
・Lumia 435/532/535/540の「カメラ」で写真を撮れなかった問題を修正。
・Cortanaに入力したテキストが表示されなかった問題を修正。
・イタリア語キーボード使用時に特定の単語はカンマ入力後、自動的に大文字になる問題を修正。
・「設定」を開く際のパフォーマンスを改善。
・例えばすべてのアプリケーションを表示するリストでキリル文字が小文字になる問題を修正。
・TELなどの呼び出しに応答する際にヘッドフォンを抜くと、通話終了後に再生中の楽曲が大音量になる問題を修正。
・自動明るさ調整機能を備えるスマートフォンはリストア/ハードリセット後も自動的有効になる。
・再び「設定」の「アカウント/サインインオプション」でサインインを求めるまでの時間を設定可能にした。
・デバイス名を変更できない問題を修正。
・ロック画面のクイックステータス番号がナビゲーションバーに隠れてしまう問題を修正。

今度はPC版およびスマートフォン版の主な既知の問題を紹介する。まずはPC版から。

・「設定」の「ネットワークとインターネット/Status」に加わったネットワーク速度テストは現在動作していない。
・「Feedback Hub」が翻訳されていないため、表示言語はすべて英語となる。さらに自身を更新するためのダウンロードおよび構築として20〜30分の時間を要する。この間にミニアンケートの通知を受けるとなどした場合は正しく起動しない。
・「Desktop App Converter Preview」は正しく動作しない。必要な場合はビルド14332のスキップを推奨する。
・Tencent製ゲームはすべて本ビルドで動作しない。
・UACダイアログ変更に伴い、[Alt]+[Y]キーによるキーボードショートカットは使用できない。
・GrooveミュージックやNetflixなどのDRM保護されたコンテンツが「DRM_E_INVALID_SECURESTORE_PASSWORD(0x8004C029)」「DRM_E_DOMAIN_STORE_GET_DATA(0x8004C503)」などのエラーが発生し、再生されない問題がある。
・サインインして2分以内に「Grooveミュージック」で音楽を再生すると、0xc10100aeエラーが発生するが、約2分経つと問題は回避できる。
・特定のアプリケーションで絵文字が四角い箱に変化する問題。
・Microsoft Edgeの拡張機能はデータスキーマを変更したため、すべての拡張機能が削除された。再インストールが必要となる。
・Bashプロンプト(Bash on Ubuntu on Windows)は英語以外のキー入力を受け付けない(日本語入力が不可能)。
・特定の言語でWindows 10 Insider Previewを使用している場合、アプリケーションリストが空になってしまう問題。

次にスマートフォン版における既知の問題を紹介する。

・音声パックのダウンロードが不可能。ただし、キーボードの言語パックは行える。
・「Feedback Hub」が翻訳されていないため、表示言語はすべて英語となる。
・「カメラ」からカメラロールにアクセスするとクラッシュする可能性がある。そのため撮影写真にアクセスするには「フォト」を起動する。
・「Grooveミュージック」でGroove Music Passにアクセスすると0x8004C029エラーが発生する。
・GrooveミュージックやNetflixなどのDRM保護されたコンテンツが「DRM_E_INVALID_SECURESTORE_PASSWORD(0x8004C029)」「DRM_E_DOMAIN_STORE_GET_DATA(0x8004C503)」などのエラーが発生し、再生されない問題がある。
・特定のアプリケーションで絵文字が四角い箱に変化する問題。
・「Tweetium」などいくつかのアプリケーションが正しく起動しない。
・スマートフォンがハングアップし、「設定」の「システム/Notifications & actions」で<ロック画面に通知を表示する>をオンにしている場合、一部のアプリケーションが発する通知を消失してしまう問題が発生中。お使いの環境で本問題が発生する場合は、先の設定を無効にすることをお薦めする。
・一部の環境ではクイックアクションの再配置を行うと「設定」がクラッシュする。こちらも発生時はクイックアクションの再配置をお薦めしない。

ただし、筆者の環境(ビルド14328からビルド14332へ更新)では、Microsoft Edge拡張機能を再インストールする必要はなかった。Connected Standbyの変更はWindows 10 Insider Previewを試していないユーザーとって、Windows 10 Anniversary Updateが楽しみになる改善となるだろう。

阿久津良和(Cactus)

(阿久津良和)