10ヶ月無収入から、月商8桁の起業家プロデューサーへの道のり
ここ20年ほどで、「起業」という言葉はずいぶん身近になったのではないだろうか。
日本政策金融公庫総合研究所が2014年11月に実施した「起業と起業意識に関する調査」によると、男女全体で、「起業に関心あり」と答えたのは18.3%、「以前は起業に関心があった」と答えたのは13.0%。この数字を多いと取るか少ないと取るかは人それぞれだろうが、日本人の約3割近くが起業に無関心ではないということが分かる。
だが起業に興味はあっても、実際に行動を起こすかどうかといったら、それはまた別の話。起業した後のことを考えれば、「よほどのこと」がない限り踏み切れないという人は少なくないだろう。
今回紹介するのは、その「よほどのこと」があって起業に踏み切った星渉さん。星さんは、自身の起業体験をベースに書きあげたビジネス小説『鈴木さんの成功。』(マネジメント社/刊)で、会社員から起業した時に待ち受けている真実を、その壁を乗り越える方法と共にわかりやすく紹介している。
星さんが起業に踏み切った理由である「よほどのこと」とは何だったのだろうか。そして、起業して成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのか。今回は星さんにお話をうかがった。
――本書の「あとがき」には、ごく普通の会社員から一転、起業家を目指す主人公・鈴木将吾と、鈴木のメンターとして起業に向けてのアドバイスをする神田進次郎、どちらもご自身をモチーフにしたと書かれています。まずは簡単に自己紹介をしていただけますか。
星:そうですね、鈴木は独立して間もないころの自分、神田は今の自分をモチーフにしています。私はつい4年前まで、大手損害保険会社で営業の仕事をしていたのですが、28歳のときに遭遇した「あること」がきっかけで起業しました。現在は、「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」をビジネスコンセプトとして、起業家プロデュースの仕事をしています。
たとえば、料理教室の先生や、セミナー講師、ファッションスタイリスト、講演家、心理カウンセラー、フリーアナウンサー、自宅サロン経営者、コーチといった具合に、個人で活動する方のサポートをさせていただいています。
――28歳のときに遭遇した「あること」とは何でしょうか。
星:東日本大震災です。当時、私は岩手で働いていて、営業車で外回りをしている最中に地震が起きたんです。電信柱が倒れてきたり、壁が崩れてきたり、窓ガラスが割れたりと、文字どおり「死にそうな」思いをしました。
津波は来ませんでしたが、その後4日間、水道、電気、ガスといったライフラインをいっさい断たれた状況での生活を余儀なくされました。寒い3月の岩手で暖房なしというのはなかなかこたえましたね。でも、それ以上にしんどかったのは「匂い」です。海水と排水と下水が混ざった匂い。さらにはそこに火事による焦げ臭い匂いが混ざって…あんな匂いを嗅いだのは生まれて初めてでした。今でも忘れられません。
この体験を通して「死線」を感じたんです。と同時に、「いつ死ぬか分らないんだったら、残りの人生の時間は、楽しいと思うこと以外には絶対に使わないようにしよう」という思いも芽生え、震災が起きた約半年後に会社を辞めました。
――会社を辞める時点で「やってみたい」と思っていたことが、現在の起業家プロデュース事業だったのですか。
星:いえ、そうではないんです。会社を辞めた時点では、スポーツに関わる仕事をしたいと考えていました。私は元々、野球を9年間やっていましたし、会社を辞める前から、メンタルトレーニングやNLP(※)について学んでいたので、何かアスリートの役に立つような仕事をしたいと思っていましたね。
――では、どのような経緯で、スポーツに関わる事業ではなく、現在の事業に取り組まれるようになったのでしょうか。
星:やはりそれは様々なメンターとの出会いが大きかったです。会社を辞めてから、メンターと言える方々に出会うまでの10カ月間、私は無収入でした。つまり結果が出ていなかった。
しかし、成功へ導いてくれる何人かのメンターに出会い、相談をしながら課題をひとつひとつ解決していったことで、出会って4か月後には月収が300万円を超え、そこからはずっと事業も成長し続けています。
その何人かのメンターとのやりとりを通して分かったのは、無収入だったころの私は「自分が売るモノ」、すなわち資格やスキルを学ぶことばかりに一生懸命で、お客様が自分のところにたどり着いてくれる流れをつくるという発想が欠如していたということです。
では個人がお客様の流れをコントロールするために、どんな発想が必要なのか。ここで出てくる考え方が「顧客動線」なんです。本にも書きましたが、顧客動線とは、自分が提供する商品やサービスにお客さんを辿り着かせるための「道」のこと。そのころの私は「道」よりも先に「どんな商品をつくろうか」「どんなサービスにしようか」等と「中身」のことばかり必死に考えていたというわけですね。
メンターに会った後の私は、「お客様の流れを作ることをしないといけない」ということに気づき、ブログをつくったりメルマガを送ったり、セミナーを開催したり、といったことを実践するようになりました。その結果、お客様が私のところにたどり着く「道」を用意することへ繋がり、お客さんを獲得できるようになり売上も伸びていきました。
そして、その「お客様の流れをつくる」ことを学んでいく過程で、周りの個人で活動している人たちを見渡したら、以前の自分と同じように顧客動線という考え方を持てていないために結果が出ず、苦しんでいる人が沢山いることに気づきました。そこで、スポーツ関連の事業ではなく、起業家の方の支援をするという事業へ転換したんです。
※NLP…「神経言語プログラミング」。スポーツの世界などでも幅広く応用されている心理学の一分野。
(後編へ続く)
日本政策金融公庫総合研究所が2014年11月に実施した「起業と起業意識に関する調査」によると、男女全体で、「起業に関心あり」と答えたのは18.3%、「以前は起業に関心があった」と答えたのは13.0%。この数字を多いと取るか少ないと取るかは人それぞれだろうが、日本人の約3割近くが起業に無関心ではないということが分かる。
だが起業に興味はあっても、実際に行動を起こすかどうかといったら、それはまた別の話。起業した後のことを考えれば、「よほどのこと」がない限り踏み切れないという人は少なくないだろう。
星さんが起業に踏み切った理由である「よほどのこと」とは何だったのだろうか。そして、起業して成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのか。今回は星さんにお話をうかがった。
――本書の「あとがき」には、ごく普通の会社員から一転、起業家を目指す主人公・鈴木将吾と、鈴木のメンターとして起業に向けてのアドバイスをする神田進次郎、どちらもご自身をモチーフにしたと書かれています。まずは簡単に自己紹介をしていただけますか。
星:そうですね、鈴木は独立して間もないころの自分、神田は今の自分をモチーフにしています。私はつい4年前まで、大手損害保険会社で営業の仕事をしていたのですが、28歳のときに遭遇した「あること」がきっかけで起業しました。現在は、「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」をビジネスコンセプトとして、起業家プロデュースの仕事をしています。
たとえば、料理教室の先生や、セミナー講師、ファッションスタイリスト、講演家、心理カウンセラー、フリーアナウンサー、自宅サロン経営者、コーチといった具合に、個人で活動する方のサポートをさせていただいています。
――28歳のときに遭遇した「あること」とは何でしょうか。
星:東日本大震災です。当時、私は岩手で働いていて、営業車で外回りをしている最中に地震が起きたんです。電信柱が倒れてきたり、壁が崩れてきたり、窓ガラスが割れたりと、文字どおり「死にそうな」思いをしました。
津波は来ませんでしたが、その後4日間、水道、電気、ガスといったライフラインをいっさい断たれた状況での生活を余儀なくされました。寒い3月の岩手で暖房なしというのはなかなかこたえましたね。でも、それ以上にしんどかったのは「匂い」です。海水と排水と下水が混ざった匂い。さらにはそこに火事による焦げ臭い匂いが混ざって…あんな匂いを嗅いだのは生まれて初めてでした。今でも忘れられません。
この体験を通して「死線」を感じたんです。と同時に、「いつ死ぬか分らないんだったら、残りの人生の時間は、楽しいと思うこと以外には絶対に使わないようにしよう」という思いも芽生え、震災が起きた約半年後に会社を辞めました。
――会社を辞める時点で「やってみたい」と思っていたことが、現在の起業家プロデュース事業だったのですか。
星:いえ、そうではないんです。会社を辞めた時点では、スポーツに関わる仕事をしたいと考えていました。私は元々、野球を9年間やっていましたし、会社を辞める前から、メンタルトレーニングやNLP(※)について学んでいたので、何かアスリートの役に立つような仕事をしたいと思っていましたね。
――では、どのような経緯で、スポーツに関わる事業ではなく、現在の事業に取り組まれるようになったのでしょうか。
星:やはりそれは様々なメンターとの出会いが大きかったです。会社を辞めてから、メンターと言える方々に出会うまでの10カ月間、私は無収入でした。つまり結果が出ていなかった。
しかし、成功へ導いてくれる何人かのメンターに出会い、相談をしながら課題をひとつひとつ解決していったことで、出会って4か月後には月収が300万円を超え、そこからはずっと事業も成長し続けています。
その何人かのメンターとのやりとりを通して分かったのは、無収入だったころの私は「自分が売るモノ」、すなわち資格やスキルを学ぶことばかりに一生懸命で、お客様が自分のところにたどり着いてくれる流れをつくるという発想が欠如していたということです。
では個人がお客様の流れをコントロールするために、どんな発想が必要なのか。ここで出てくる考え方が「顧客動線」なんです。本にも書きましたが、顧客動線とは、自分が提供する商品やサービスにお客さんを辿り着かせるための「道」のこと。そのころの私は「道」よりも先に「どんな商品をつくろうか」「どんなサービスにしようか」等と「中身」のことばかり必死に考えていたというわけですね。
メンターに会った後の私は、「お客様の流れを作ることをしないといけない」ということに気づき、ブログをつくったりメルマガを送ったり、セミナーを開催したり、といったことを実践するようになりました。その結果、お客様が私のところにたどり着く「道」を用意することへ繋がり、お客さんを獲得できるようになり売上も伸びていきました。
そして、その「お客様の流れをつくる」ことを学んでいく過程で、周りの個人で活動している人たちを見渡したら、以前の自分と同じように顧客動線という考え方を持てていないために結果が出ず、苦しんでいる人が沢山いることに気づきました。そこで、スポーツ関連の事業ではなく、起業家の方の支援をするという事業へ転換したんです。
※NLP…「神経言語プログラミング」。スポーツの世界などでも幅広く応用されている心理学の一分野。
(後編へ続く)