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中国・北京市内にある「ユニクロ」の試着室で、若い男女のカップルが性行為をしている様子をスマートフォンで撮影した動画が7月中旬、中国のソーシャルメディア上で拡散されて、話題になった。

動画には、黒い服の男性と全裸の女性の2人が、試着室らしい場所で立ったまま性行為に及ぶ様子が映っている。男性が女性の背後からスマホ片手に鏡に向かって、いわゆる「ハメ撮り」をしているかたちだ。

報道によると、すでに動画は削除されており、動画に映っていた男女を含む5人が逮捕されたという。なんとも迷惑で、ふしだらなカップルだが、もし仮に日本でこのような行為に及んだ場合、どんな罪に問われるのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。

●公然わいせつ罪が成立する可能性は?

「まず、公然わいせつ罪(刑法174条)から検討したいと思います。

公然わいせつ罪は、『公然』と『わいせつな行為』をした場合に成立します。

性行為が『わいせつな行為』であることには、争いがありません。今回のケースでは、試着室内での性行為に『公然性』があるといえるかがポイントとなります」

鈴木弁護士はこのように述べる。今回のケースは「公然性」があるのだろうか。

「『公然』とは、不特定または多数の人が認識することのできる状態のことをいいます。現実に、不特定または多数の人が認識する必要はなく、『認識の可能性』があればいいとされています。

たとえば、その時たまたま、人がまったく通行していない公道であっても、人が通行する可能性はある以上、そこで性行為をおこなえば、『公然』と『わいせつな行為』をしたことになります。

試着室について考えると、店内の通路とはカーテンなどによって遮られています。一般的には、たとえ店員であっても、勝手にカーテンを開けることはできない空間です。

そうすると、不特定多数の人が認識し得る状況とはいえないため、『公然わいせつ罪』が成立する可能性は低いと思います」

●性行為の動画をインターネットに投稿したら?

今回、動画はインターネット上に投稿された。この点については、どう考えるべきか。

「わいせつな文書や図画、電磁的記録に係る記録媒体などを頒布したり、または公然と陳列した場合、『わいせつ物頒布等罪』が成立します。電気通信の送信によって、わいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した場合も同様です(刑法175条)。

ことさらに性器、性交または性戯を直接的に撮影した映像が、ここでいう『わいせつ物』にあたることはほぼ異論ありません。したがって、動画に性行為に及ぶ男女の性器が映っているならば、『わいせつ物』にあたる可能性があります。 

また、『公然と陳列した』とは、わいせつ物を不特定または多数の者が認識できる状態に置くことをいいます。ただちに認識できる状態にするまでは、必ずしも要しないものと考えられます。

もし、パソコンやスマートフォンから、男女の性器などを露骨に撮影したわいせつ電磁的記録、つまり動画データを、外部のサーバ・コンピュータにアップロードして、不特定多数のインターネット利用者に動画データの閲覧が可能な状況を設定したならば、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪が成立する可能性があると思います」

●建造物侵入罪が成立する可能性も

ほかには、どんな罪が考えられるのか。

「建造物侵入罪(刑法130条前段)についても検討します。

営業時間中の衣料品店であれば、管理者が入店の包括的承諾をしていたと考えられます。したがって、店に入っただけで、建造物侵入罪が成立することはありません。

しかし、入店の目的が当初から『試着室での性行為を撮影すること』である場合、管理者がそれを知っていたとしたら、『入店を拒否していた』と考えられます。

そのような場合、管理者の意思に反する立ち入りとして、建造物侵入罪が成立する可能性があります」

鈴木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
大学時代には山に登って地質調査をするなど、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし将来について迷っていた時に「困っている人を助けなさい。自分が本当にやりたいことはそれでよいのですか?」という夢を見たことから、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。現在は全国に2名しかいない、気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:弁護士法人アディーレ法律事務所
事務所URL:http://www.adire.jp/