コーヒーはやっぱり「善玉」らしい 糖尿病や脳卒中、「死亡リスク」まで低減
コーヒーは「胃によくない」「カフェイン中毒になる」など、昔は健康に悪いというイメージが強かった。だが、ここ数年は「健康にいい」という研究結果が次々と明らかになっている。
2015年5月7日に国立がんセンターが発表した報告によると、コーヒーによって死亡リスクが低下するのだという。
1日3〜4杯で24%の「全死亡リスク低下」
コーヒーの健康効果を示唆する研究の成果は、日本を含め世界各国で発表されている。2009年に国立国際医療研究センターが実施した研究では、コーヒーを1日3〜4杯飲んでいる人はそうでない人と比べると、2型糖尿病を発症するリスクが低下するという結果が出ている。2010年には米国や英国の脳卒中学会で、コーヒーを飲む量が多いほど脳卒中リスクが低下するという発表が相次いだ。
コーヒーを飲むと死亡リスクが低下するという研究もある。2012年、米国立がん研究所は米国在住の40万人を13年間追跡調査し、1日4〜5杯飲んでいる人は全死亡リスク(あらゆる死因を含めたリスク)が男性で12%、女性で16%低下したという。ただし、アジア人の集団を対象とした調査はなかった。
今回の国立がんセンターの調査は「日本人も米国人と同じようにコーヒーで死亡リスクが低下する」ことを確認した形だ。
40〜69歳の男女約9万人を対象にアンケートを取り、「コーヒーをほとんど飲まない」「1日1杯未満」「毎日1〜2杯」「毎日3〜4杯」「毎日5杯以上飲む」という5つのグループに分類。1990年から2011年にわたって、コーヒーと全死亡リスク、さらに、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクとの関連をそれぞれ分析した。コーヒーの種類は問わず、缶コーヒーやインスタントコーヒーもまとめて「コーヒー摂取」と判断している。
その結果、「コーヒーをほとんど飲まない」群を基準とすると、1〜2杯で9%、2〜3杯で15%、3〜4杯で24%、5杯以上で15%の全死亡リスク低下が見られた。がん以外の疾患死亡リスクも低下が見られたが、全死亡リスク同様、3〜4杯のリスク低下が最も大きく、5杯以上になると低下率が落ちており、研究者は「1日4杯までのコーヒー摂取が死亡リスク低下と有意な関連がある」とコメントしている。
クロロゲン酸とカフェインによる効果か?
気になるのは、なぜコーヒーで死亡リスクが低下するかだ。完全に解明されたわけではないが、国立がんセンターの研究チームによると、コーヒーに含まれる「クロロゲン酸」の血糖値改善や血圧調整効果、抗炎症作用と、「カフェイン」が持つ血管の健康状態や呼吸器機能の改善効果が、死につながる疾患のリスクを低下させた可能性があるとしている。
国立国際医療研究センターによる2009年の糖尿病の発症リスク低下研究でも、カフェインやクロロゲン酸の効果が説明された。カフェインは片頭痛や高血圧性頭痛の治療薬の成分に、またクロロゲン酸も特定保健用食品(トクホ)の成分として利用され、人体に対する一定の効果が確認されている。
なお、緑茶の摂取量が1日5杯以上で全死亡リスクが低下する、という研究も発表されており、コーヒーが苦手な人は緑茶を飲むのもよさそうだ。
[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
参考論文
Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study.
PMID:25762807
コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ
アンチエイジング医師団
「アンチエイジングに関する正確で、最新かつ有効な情報」を紹介・発信するためにアンチエイジング医学/医療の第一線に携わるドクターたちが結成。 放送・出版などの媒体や講演会・イベント等を通じて、世の中に安全で正しいアンチエイジング情報を伝え、真の健康長寿に向き合っていく。HPはhttp://www.doctors-anti-ageing.com
2015年4月1日から医療・健康・美容に関する情報サイト「エイジングスタイル(http://www.agingstyle.com/)」の運営も開始。