これは、脚の回転数の高さと関係しています。脚を回転させながらボールを扱おうとすると、手は自然と下に降りてきます。ロナウドほど腕は下がりませんが、武藤選手の動作はそれに近いものがありますね。
 
 シュートを打った後の動きも特徴的です。回転を掛けて足の裏を見せてぐいっと入れてくる、フォロースルーが大きい選手が多いのですが、武藤選手はミドルレンジからのシュートでもそれほど振りかぶらずインパクトだけで押し出す。
 
 なぜそうなっているか、簡単に言えば「走る動作の延長線上で蹴っている」からだと思います。蹴った後の脚が軸足よりあまり前に出ず、せいぜい50センチ程度の位置で止まっている。それくらいの位置で蹴り足が降りて、次の動作に移れるようになっているのです。
 
 ゆえに、ゴール前の狭いスペースで近距離のシュートを放った後も、例えば倒れ込んでくるGKをかわしたり、DFと交錯しないようにステップを踏み直したりというプレーが可能なのです。
 
 こうした動きは、二軸走法ができているからでしょう。二軸走法に対して一軸走法がありますが、武藤選手の動きはほとんどが二軸で行なわれていると思います。
 
 以上、駆け足で武藤選手の身体的特徴について分析させていただきました。こうした考察で、武藤選手の凄さが少しでも具体的になれば幸いです。
 
分析:横原和真
取材・文:澤山大輔
 
【分析者プロフィール】
横原和真(よこはら・かずま)
1983年11月15日生まれ。フィジカル・コンサルティングチーム『フィジカリズム』のランニングコーチ。日本陸連公認コーチ、日本陸連公認ジュニアコーチ。現役時代はハードル走を専門とし、全国大会の常連に。西日本インカレ優勝、全日本インカレ7位、日本選手権4度出場などの実績を持つ。引退後はスポーツ事業会社に勤務する傍ら、陸連公認コーチ等多くの資格を習得し、陸上のみならずラグビーやサッカーなど他種目でも選手育成・指導に取り組む。その語り口のわかりやすさ、実践的な指導内容には定評がある。