ライブドア<4753>グループをめぐる証券取引法違反容疑事件で、東京地検特捜部がライブドア社長の堀江貴文容疑者(33)ら幹部4人を逮捕したのを受け、東京証券取引所(東証)の今後の動きや株式市場への影響などについて、IR(投資家向け広報)と会計が専門の早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の花堂靖仁教授に考えを聞いた。(インタビューは24日午前。役職などは当時のまま)

――堀江社長ら逮捕された4人の容疑について。

 グレーゾーンだったとは思うが、全体をつきあわせてみたときの本当の意図は、今回訴追されるポイントから見て、偽計取引だったのだろう。

 株式市場は噂の世界。いろいろな噂が流れているとき、事実は1つしかないとすれば、ほかは全部嘘ということになる。ポイントは、事実ではないことを市場に流して、利益をあげたかどうか。一連のスキームで、結果として利益を得たことがひっかかった。

 スキームを宮内取締役が考え、その実行については、宮内取締役が言うように、堀江社長に伺いを立てて、承認を受けている。検察はその段階で「偽計」の意図があったとみた。スキームについては、早い段階からわかっていたと思う。

――偽計取引に至った、具体的な意図は?

 今回の場合、単純にお金がほしいというより、(決算上の)利益を作りたかったということではないか。

 一般によく言われるのは、近鉄バファローズを買収したいとプロ野球機構にオファーしたとき、ライブドアが「長期安定的にプロ野球球団を運営していくだけの基盤」をもっているかどうか、疑問視された。世の中では決算書でしか見ない。皮肉なことに、特にライブドアのような事業体では、決算書で表されている企業価値は現在、本当にわずか。それでも、世の中は従来型の財務諸表でしか見ないので、いくら時価総額が高くてもダメだという、彼らが考えていなかった壁にぶつかった。そこで、利益を作るためにそのスキームを作ったのではないか。

 このような意図を実現するために、さまざまな取引を組みあわせた結果として、市場や、投資家、社会を欺いた。これは証券市場が最も嫌うこと。したがって偽計取引という形で押さえにかかった。

――今後、東証はどう対応するか?

 ライブドアには桁違いの株主がいる。東証も、これだけの株主がいると上場廃止ができないかもしれない。結果論から言うと、東証はライブドアの株式分割を見逃してきたとも言える。しかし、実際に監理ポストに入り、上場廃止になる手続きを取る過程で、大量の株主をさばききるのは大変な話になる。

 私が東証の立場なら、きちんと経営できると見極められれば、上場廃止には進めたくないというのが本音だ。誰が責任を取り、誰と誰がグループ経営を分担するか、新たな執行機能が速やかに再構築できるか。執行体制を担う人たちが、信用があり、執行能力を備えているか、などなど。

 東証は狼狽売りを抑えたいし、株券が本当のクズになってしまうのは好まない。(つづく

■関連記事
ライブドア事件の本質を探る(下)
LDとLDM、ストップ安続く
堀江氏逮捕受け、社内の反応
【速報】ライブドア社長ら4人を逮捕

■関連動画ニュース
1月25日動画ニュース