男性が運ばれた国立国際医療研究センター。すでに報道陣の姿はなかった(8日10時撮影)

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エボラ出血熱が大流行している西アフリカ・リベリアから帰国した男性(60)に、エボラ出血熱感染の疑いがあると報じられた。

一夜明けて「陰性」と判明したが、男性が検疫所への報告を怠っていたことや診察を受けた医師に渡航歴を告げなかったことなどが判明。ネットでは男性や、厚生労働省の認識の甘さに批判が出ている。

21日間の「健康監視」義務

各社の報道によると、男性は2014年9月30日〜10月26日、リベリアに滞在していた。11月4日に羽田空港から帰国。検疫で異常は見られなかったが、6日夜になって39度の高熱が出て、7日午前に自宅近くの医療機関(東京都町田市)を受診し、扁桃腺(へんとうせん)炎と診断された。

受診後の11時ごろ、男性は発熱を検疫所へメール連絡。検疫所が男性に連絡を取ろうとしたが、所在確認が難航。夕方になって自宅で就寝していたと確認され、指定医療機関である国立国際医療研究センター(新宿区)へと搬送された。

しかし、国立感染症研究所村山庁舎(武蔵村山市)で陰性が確認されたため、男性は熱が下がり次第、8日中にも退院するとみられる。

男性には、健康状態を報告する「健康監視」が求められている。以前はエボラ患者との接触者のみが対象だったが、感染拡大を受けて厚労省は10月21日、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航もしくは滞在が確認された場合でも対象になるとの通達を出している。

健康監視により、男性は到着後504時間(21日間)、体温や健康状態について1日2回(朝・夕)報告することを求められている。男性は7日朝の報告をしないまま、町田市内の医療機関を受診した。

男性を診断した医師は、11月7日夜の「ニュースJAPAN」(フジテレビ系)インタビューで、「その後(処方を終えて帰宅後)になってから、いろんなことが発覚してきたわけですよね。うちとしては」と話している。男性はリベリア渡航歴を医師に伝えていなかったからだ。

「性善説で対処してたらもうだめ」

ツイッターなどでは、男性が陰性だったことに安心する声も一部ある。しかし、男性が近所の医療機関へ行ったこと、医師に詳細を伝えなかったこと、検疫所への報告を怠っていたこと、帰宅により一時所在不明だったことなどが重なり、厳しい意見は多い。

「当該地域からの帰国なら、保健所に電話して指示を仰ぐべきで、60にもなってそんなことも考えないのでしょうか...」
「町田の60歳男性は周りの全てに無責任に恐怖をばらまいた。実際に感染していても保健所行く人はごく僅かで、こういう人が今後も多いと予想される方が問題」
「エボラのリスクを抱えていることを知りながら、普通の医療機関に行って具合が悪くて寝てたなんて、感染者が出たらなんと言い訳できるのか?」

厚労省の水際作戦について、「性善説で対処してたらもうだめだと思う」「そんな自己申告とか人がいちいち聞き出さないと、みたいなのに頼るとろくなことないよ」と、認識の甘さを指摘する声もある。

厚労省のウェブサイトは、エボラ出血熱について、塩崎恭久厚労相からのメッセージを掲載している。そこでは、

「もし流行国に渡航し帰国した後、1か月程度の間に、発熱した場合には、万一の場合を疑い、地域の医療機関を受診することは控えていただきたい。まず、保健所に連絡をし、その指示に従っていただきたい」

と、赤字で強調して書かれているが、徹底周知にはほど遠いようだ。