【V系】期待のバンドは? 歴史の証人「神楽坂エクスプロージョン」店長に聞いた″ライブハウスの現状″

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40年近い歴史があり、XやGLAYなどもライブを定期的に行なっていたライブハウス「神楽坂エクスプロージョン」。近年ではゴールデンボンバーやJin-Machineなど、ちょっと変わったヴィジュアル系バンドやアイドルが出演することも多くなったそうで……。
そんな神楽坂エクスプロージョンで現在店長をつとめている小嶋貴さんに現在ライブハウスを取り巻く状況や、注目のバンドについて伺って来ました。

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――神楽坂エクスプロージョンの歴史は何年くらいになるのでしょうか?

小嶋:たしか40年くらいだと思います。80年代中盤にはXや、Xに加入する前のHIDEさんやD'ERLANGERのkyoさんが在籍していた横須賀サーベルタイガーが参加していた『HEAVY METAL FORCE』というオムニバスアルバムを出したりしていてヘヴィメタルシーンが盛り上がってました。

現在はヴィジュアル系っぽい人もいますし、アイドルも出てますし、「アングラ系」と呼ばれているちょっとメインストリームじゃない人たちもいるといった感じですね。

これは磁場的なものなのかわからないけど、「普通のバンド」がいないんですよね。アイドルさんもバンドもそうなんですけど。ウチが一番弱い部分って所謂「歌モノ」のポップスバンドが一番なんですよね。

――個人的には神楽坂エクスプロージョンって、2000年代初頭に「きわもの系」と呼ばれていたようなバンドが出演しているライブハウスっていう印象なんです。ちょっとそこから離れますが、それこそブレイク前のゴールデンボンバーも出演していましたよね。

小嶋:正直こんなに売れるとは思ってなかったですね。ゴールデンボンバーに関しては。

――あの頃に紅白出ると思ってる人なんて誰もいませんでしたよ。あの時期のシーンで「演奏しない」こと自体はそこまで珍しいものではなかったと思うんです。

小嶋:バンド形態で4人いるけど、歌しか歌わないっていうのもウチでは特別変な編成ではなかったんです。だけど当時から鬼龍院さんのセンスはあるなと思ってましたよね。

――今も出てるバンドも変わったバンドが多いですよね。

小嶋:売れるであろうきわもの系と、そうでないきわもの系ってあるじゃないですか。出発点というかバンドを作る動機はおそらく一緒なんですけど。たとえば燭台(怪)の動機は、多分「恨み」だと思うんですよ(笑)。「自分たちはこんなにおもしろいことをやってるのに……」っていう「自分たちを素通りしていった人たちを見返してやろう」みたいなエネルギーかなって思うんですよね。アングラ系やきわもの系の中でも、普通に生活しててストレス発散の場としてバンド表現をやっている人たちは、売れないというか、売れなくてもいいと思ってる人も多いでしょうけど、燭台(怪)は売れたいと思ってるでしょうし、元々ゴールデンボンバーと近いところにいたこともあって、悔しいと感じているのでは。


――以前「ウレぴあ総研」の座談会(記事『次の金爆は誰だ? 個性派3バンド(NoGoD、えんそく、Jin-Machine)のボーカルが語る本音座談会』 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11976 ] )でもJin-Machineのボーカル、featuring16さんがそれに近いことはおっしゃってましたね。

小嶋:今、それでJin-Machineも売れてきてるじゃないですか。燭台(怪)やTЯicKYもこの流れに乗らないでいつ乗るのかという感じだと思いますね。

――TЯicKYさんは今、テレビ番組『musicる』(テレビ朝日)にも結構取り上げられてますね。

小嶋:TЯicKYは凄いなと。何が凄いかって初めて見た時と今とやってることが一緒なんですよ。初めて観た時は、お客さんが2・3人だったんですよ。アーティストとして、やってることは別に変わってないのに、お客がどんどん増えていったっていう。

――ブレてないってことですよね。

小嶋:最初から自信満々にやってましたし、当時からそこはすごく買ってました。それに今は結果がついてきてるっていうことは素晴らしいことだと思います。

TЯicKYに関して言えば「毒」が無いのがいいのかなと思いますよね。バンドってどうしてもそういうのが含まれちゃうし、それが良い方向にむかうケースもあるとは思うんですけど、彼の場合は、毒のない平和な空間で、それが良いのかな。

ウチのなかで「ヴィジュアル系」の中でのトップはJin-MachineとTЯicKYと燭台(怪)なんでしょうね。きっとウチのスタッフもそうだと思ってますよ。「ヴィジュアル系ってこういうひとなんじゃないのって」そんな感じだと思います(笑)。

――変な質問ですけど、ゴールデンボンバーがブレイクしてから、エアバンドって増えました?

小嶋:増えてないです。

――ですよね(笑)。

小嶋:なんですかね、いてもおかしくないとは思うんですけど。

――聞いておいてなんですけど、彼らの面白さの本質が「エアー」の部分にあるわけではないことに尽きるとは思うんです。

小嶋:楽器を演奏しないバンドっていう売れ方ではないのかなと思いますね。

――それこそいま同じことして……、スイカの早食いしても人気出るわけではないですからね。

小嶋:ですね。やっぱり比べられちゃうから厳しいんじゃないんですかね。
Jin-Machineはココは彼らと違うよというところを見せているのが頭いいなと思います。

――ほかに最近シーンに関して何か思うことはありますか?

小嶋:やっぱり「不景気」なんだな、とよく思います。どうしてかといいますと、バンドやってる人とかって、「自分には音楽しか無いから、これに懸けるしかない」っていうエネルギー良い方向に転がっていった時代もあると思うんです。

だけど、今はわりと「音楽しか無い」っていうバンドのほうが、脆いというか、切羽詰まって冒険できない。そうなってくるとどうなるかというと、出るライブハウスとかや出るイベントを慎重に選びますよね。結成したばかりのバンドでも「とりあえずライブやろうよ」じゃなくて「動員のあるイベント、バンドがでるブッキングに」って感じなんです。

ウチにデモテープを送ってくれるバンドと話してても、そういう空気を感じるというか。なかなかみんな慎重なんだなって。まだライブも観たことないバンド、音源しか聞いたことないバンドとかに対して、意地悪とかじゃなくっていきなり良いイベントに入れたりはできないじゃないですか。その新人のバンドさんにとっては良いことかもしれないけど、たとえば100人くらい入るバンドと、新人さんのバンドが当たることに意味はあるのか? ということになってしまうので。

最初からそれを求めるのは効率的なのかもしれないけど。なんだか音楽に人生を賭けている人ほど冒険できなくて苦しいのかなって思ったりします。たとえば燭台(怪)とかは会社員として働いてるし。もちろん、だから大変だっていうことも多いと思うんですけど、その分「土日はバンド、平日は仕事」って住み分けされてるのかなって。だから「土日は好きなコトやろうよ」ってできるのかもしれない。もちろん逆境からいい作品が作れる人もいるとは思うんですけど。

――バンドをやりやすい世の中になるといいですね……。

小嶋:CDが売れなくなったとか、ライブハウスにお客さんが入らなくなったと言われるようになってだいぶ経ってますけど。ライブハウスも経営難みたいな話を聞きます。ライブハウスも余裕が無いんですよね。

バンドに余裕が無いのと同じで。ライブハウスに余裕が無いと、攻めたブッキングができないというか。「こいつらは凄い!出したいけど客がついてないしな……」ってなっちゃうと、攻められない。

――実績のあるバンドじゃないと、となってしまう?

小嶋:こっちもスタッフを食べさせて行かないといけないのでどうしてもそうなっちゃいますよね。

ライブハウスのノルマって本来は「このくらいの人数呼ぼうよ」くらいのものだったと思うんですけど。……ノルマ論争をすると炎上するらしいんで、あんまりアレですけど(笑)。今は本当に最低保証というかライブハウスが損をしないような仕組みになっていってると思うんです。

ライブハウスが損をしないように、というと語弊があるかもしれませんが、やっぱり公演があったらその分人件費が発生するし。誰が来ても演奏できるように、機材のメンテナンスだって必要です。けしてライブハウスが不当に搾取をしているわけではないと思うんです。だけど動員の無いバンドに「ノルマ10枚かけていい?」という風になってくると、ライブをやってもお客さん呼べないし、「10枚だったら2万くらいバンドが自腹で払えばいいか」となり、そういうバンドが増えたら、さらにお客さんが入らなくなるし……となると悪循環ですよね。

――観てる方の立場で言うと、名前も聞いたこと無いバンドをいきなり観に行くにも腰が引けるというか、ある意味お客さんも冒険できないというところもあるかなと思います。

小嶋:いつ行っても「面白いバンドが観れるんじゃないか?」と期待させるようなブランド力がライブハウスにないとキツいのかもしれない。「エクスプロージョンに行けば毎回面白いものが観れるよ」という空気が根付けば、いいんですけどね。

バンドとライブハウス運営に関しても、どちらも余裕が無いと面白いものが作れないという部分は共通すると思いますし、それをどうしたらいいかなって考えてたら、もう企画力しか無いかなって。

ライブハウスも必死で頭使って良いバンドをそろえて、それを面白がってくれるお客さんを増やすっていう、当たり前のことを当たり前にやらないといけないと思うんです。

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