Jリーグ、日本のサッカー、改善すべき部分はいくつかありますが、今回は「パススピード」という部分について。「パススピードが遅い」という事については、今更かよ、と思う人もいるかとは思いますが、やはりそこは今でも強く気になる部分で、日本のサッカーはそれで損している、という思いを強く抱きます。何気ない繋ぎのパス。ただ近くの選手にボールを渡すだけのパス。しかし、その何気ないパスにもう少しスピードがあったらチャンスになっただろう、というシーンを、日本のサッカーには多く見かけます

日本人選手のパススピードが遅い理由には、おそらく、気遣い、という事が強く関係しているのだと思いますが、つまり、受け手にとって優しいパスを出そう、という事ですね。しかし、パススピードが遅い、という事には、いくつかのデメリットがあって、

(1) 相手に寄せられる時間を与えてしまう。
(2) ボールの勢いを利用したプレーができない。
(3) インターセプトされやすい。
(4) 守備面で相手の速い攻撃を苦手としてしまう。

主にはその4つ。日本サッカーの弱点とも言える、球際の競り合いにあまり強くない、ポゼッション率が得点力にあまり繋がらない、カウンターに弱い、放り込み攻撃に弱い、という部分も、そこに一因があると私は考えています。


(1) 相手に寄せられる時間を与えてしまう。

パススピードが遅い、という事は、AからBへとパスが到達する時間が遅い、という事であり、パスを回しても回しても相手に寄せられてしまう、という事。そういう事を回避するために、ワンタッチパス、ショートパス、という事を多様するサッカーを日本はやっているわけですが、実際にはその効果があまり出ていないシーンが多く、その原因が「パススピードの遅さ」という事ですね。特に、海外の多くのサッカーは日本のサッカーと比べて当たりが激しく、つまりそれだけ寄せる勢いが強くて速い、という事なので、国内サッカーの感覚でのパススピードでプレーしていると難しくなってしまう。

遅さ、というのは、確かに確実性は上がりますが、しかしそれだけ相手にも、準備させる時間、考えさせる時間、休む時間、狙いを定めるための時間、というのを与えてしまう事になりますから、それでもその遅いパススピードの中で相手を上回ろうとするためには、より個によるテクニックやフィジカルの強さが必要となってきて、そうできなかった場合には単純に力負けしてしまう。もちろん、速くても確実性が低ければ元の木阿弥、自滅サッカーへと陥ってしまうので、それでは無意味ですが、要するに、速いパス、強いパス、それをトラップできる技術、パスの出し手が気遣いを少なくできるような受け手側の受ける技術、そこに日本のサッカーはもう少し力を注ぐべきではないかと思う、という事ですね。


(2) ボールの勢いを利用したプレーができない。

パススピードが遅いから足元から足元へというサッカーになるのか、足元から足元へというサッカーを好んでいるからパススピードが遅くなるのか、理由はどうあれ、日本のサッカーはもう少しボールの勢いをそのまま利用したようなプレーを増やす必要があると思います。ボールを収めてプレーするのではなく、ボールを収めないでプレーする、という事で、これはワンタッチプレーの事を指しているのではなく、ボールのスピードを利用して止まる事無く次のプレー次のプレーへと連動させる、という事ですね。流れの中でのプレー、流れに乗ったプレー、というのは、そういう事でもあります。

これは、ボールが進む方向へと淀みなく進む、という事だけではなく、そこから逆方向へと切り返す、という事まで含めてそうで、ボールを止めずに逆方向へ切り返す事で相手をかわし、それができると縦への推進力が出てくるようになる。これは、歩幅の大きさであるとか、身体能力としてのスピードであるとか、そういうものが相手より劣っていてもスピードで相手を上回る事ができる方法で、特に日本人選手の場合にはこの技術の高さが必要とされると思います。日本人選手の場合には、初速のところで勝てないと相手を振り切れない事が多いので、そのためにはボールの勢いを利用して、それを縦への推進力へと変える、もしくは、そのまま縦への推進力へと乗せる、という事を考える必要があり、それがアタッキングサードに入ってからの攻撃力に直結してくるものと思います。