MLB殿堂入り投票結果、投手について見てみよう。

現役引退後5年で選考対象となり、候補リストに加えられる。リストに加えるのは、全米野球担当記者協会の適性審査委員会で認められた選手。
そして同協会に10年以上所属している記者の投票で、殿堂入りが決まる。
75%以上で殿堂入り。得票が5%に満たない選手は足切を喰らう。またリストに載って15年が経過すると“時間切れ”でリストから外される。
リストから外れた選手も、ベテランズ委員会の審査で殿堂入りすることがある。

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14年連続開幕投手を務めたジャック・モリス、トレバー・ホフマンに2007年に抜かれるまで、セーブ記録の保持者だったリー・スミスが上位2人だが、ともに時間がない。
ジャック・モリスは来年ダメだと資格を失う。

続いて今年資格を得たカート・シリング。松坂大輔の元同僚。ワールドシリーズの血染めのソックスで有名になった。

問題のロジャー・クレメンスが4位。37.6%は、36.2%のバリー・ボンズとほぼ同じ。有権者たちの微妙な評価が分かる。

薬物疑惑の選手にとって、翌年以降の数字の推移が問題だろう。

同じようにミッチェル・レポートに名前があった投手(赤字で示す)のうち、マイク・スタントンは1年目で失格。これは薬物以前に実績の問題だろう。
ケヴィン・ブラウンは微妙なところだ。

投手は250勝、300セーブが基準になるようだが、手術名にもなったトミー・ジョンは15年間待った挙句時間切れ。この投手は傑出した年が無くて、長い選手生活で白星を積み上げてきた。印象度が弱いということか。

ニューヨーク・ヤンキース時代に完全試合をしたデービッド・ウェルズも1年目で失格。1シーズン、1試合限定の大記録を打ち立てた選手に対して、MLBの評価は厳しい。



個人的には、ボンズ、クレメンスなど薬物で大記録を作った選手も、殿堂入りすべきだと思っている。約10年前、彼らが派手に活躍していた時代は、MLB自体がドーピングに対して微妙な姿勢をとっていた。
彼らは確かに薬物を使って記録を出したのだが、あいまいな規制がそれを助長した一面がある。
これを後世の目で判断して“有罪”と断定するのは「後出し」のきらいがある。

野球は、その歴史の過程でルールを何度も改正してきた。その中には今では大変なルール違反になるものもあった。たとえば、ボールにつばや異物をつけるスピットボールがそれだ。今、そういうことをすれば不正投球として排除されるが、1920年までは認められてきた。しかも規制以前からスピットボールを投げていた投手は、引退するまで投げることが許されていたのだ。

厳格なルールが定まった今は、薬物を使用する選手は排除されてしかるべきだが、それ以前の選手は特例的に認めるべきではないか。

ただし、彼らが薬物を使用したことで社会に大きなショックを与えたことは、明記したうえで。

全米野球担当記者協会の適性審査委員会がボンズ、ソーサ、クレメンスらを候補リストにピックアップしたのは、殿堂入りを検討する余地があるとの判断からだと思う。

ピート・ローズのように、監督在任中に野球賭博に関わった例とは別ではないかと思う。

ボンズ、クレメンスらは自らがエントリーされた意味をよく考えて、薬物排除や、フェアプレーを促進するなど、社会貢献をすることで、有権者、社会の理解を得るべきではないか。

今回に限り容認すべきだと思う。