ソーシャルメディアを活用した就活(ソー活)が広がっている。Facebookに採用ページを開設する企業が増えただけでなく、こうした企業の人事担当者は就活生の個人アカウントの確認までしているという。

そもそも、“ソー活”先進国であるアメリカでは、どのように活用されているのか。ITジャーナリスト・高橋暁子氏によると、主に「就活生の人柄」のチェックに使われているそうだ。

「例えば素行の悪い写真や人柄が疑われる書き込みなどにより、採用対象から除外されるケースも。さらに名前をネット検索して“何も出てこない”学生も問題視されます」(高橋氏)

振り返って、日本の人事部はどうか。企業向けにFacebook採用のコンサルティング業務を行なう「ちかなり」の兵頭秀一氏が語る。

「ある不動産会社の採用担当グループは、面接試験の後で別室に集まり、パソコンを囲みながら受験者のFacebookチェックを行ないます。最初に見るのは『友達』の数。ある女のコの場合、面接で物静かだったのに、Facebook上で300人近くの『友達』がいて、書き込みごとに数十件ものコメントがつき、ページ全体が活性化していたと。ここに着目した採用担当者は『これは人望がないとできない』と評価を逆転させました。面接じゃわからない素の様子を知るツールとして企業はFacebookを見ています」

では、友達の数のほかにはどんなところに注目しているのか。人事コンサルティング会社、パソナキャリアカンパニーの新卒採用に携わっている佐野創太氏が答える。

「当社では、社内ベンチャーや新事業立ち上げに積極的に関わってほしい『イノベーター枠』の人材に限っては主にFacebookで採る方針です。すでにインターンシップの面接で絞り込んだ採用候補の数名とFacebook上でつながっていますが、私は友達の数よりも質を見ますね。他大学や社会人に『友達』がいるか。あるいは、もし外国人の友達がいて、大勢の外国人の中で本人が笑って写っている写真なんかがアップされていたら評価は上がります」

さらに佐野氏は、こう続ける。

「学生のページを開いて目に入るのがプロフィール。掲載写真がキャラクターになっていたり、顔を伏せていたり、出身地、大学名など基本データに記載がないと、そもそもこの学生はソーシャルメディアに向いてないんじゃないかと思ってしまいますね」(佐野氏)

兵頭氏によると、「Facebookを見る採用担当者にとっては、個人データよりもむしろ “自分をさらけ出せるタイプか、包み隠すタイプか”を知ることが重要」なのだという。

つまり「ソー活をする以上は自分をさらけ出せ」ということだが、それでは飲み会で酔いつぶれているような写真をアップしてもいいのか。佐野氏の考える、採用除外となりかねない、ギリギリのラインはこれだ。

「『受付嬢がキレイだったなう』とか、会社や面接官など特定の対象をあげつらう書き込みをする学生は、入社後に企業の機密情報を漏らしかねない。ソーシャルな場で出していい情報と、出しちゃいけない情報の正しい判別ができない人はちょっと……」(佐野氏)

ソーシャルメディアとはいえ、結局のところ問われているのは、本人の「社会人として当たり前の常識があるか」という点に尽きるのかもしれない。

(取材・文/興山英雄)