任天堂の岩田聡社長がツイッターで、自社を批判する記事について、「まるでゴシップ誌のような手法が採られていることに驚いている」とつぶやいた。

名指しはしていないが、どうやら「日経新聞」に掲載された記事をさしているようだ。経済界に強い影響力を持つ日経をゴシップ誌扱いしたということで、インターネットで話題になっている。

「世界のゲーム市場で先頭を走っていたのは、ほんの数年前」

2012年2月22日、任天堂の岩田社長はツイッターで、「月曜日に電子版媒体で当社に対する不正確な報道がありました。」と記した。しかも、このようなことが何度か続いているとし、「文脈を無視して恣意的に言葉を抜き出したり、事実と憶測を混ぜて書いたり、まるでゴシップ誌のような手法を採られていることに驚いています。」という。

そのつぶやきからは、岩田社長がかなり強い憤りを感じていると推察できる。

岩田社長が「ゴシップ誌のような」と指摘した記事は、2月20日付の日経電子版と思われる。見出しは「岩田社長が口にした、任天堂の『没落』」。すでに任天堂が没落したようにも受けとめられる書き方になっている。

記事は「『このままでは没落してしまう』。任天堂社長の岩田聡が社員に発した言葉は衝撃的だった」の書き出しではじまっていて、そこでは任天堂が「世界のゲーム市場で先頭を走っていたのは、ほんの数年前」とも記している。

さらに別の記事(2月23日付の朝刊17面)でも日経は、「分析ニッポン株式会社 データで読む企業業績(4)」で、売上高営業利益ランキングのトップ20を紹介。「ネット・医薬品が上位に 任天堂、ゲーム低迷で姿消す」と名指しして、「かつては高収益企業の代表的存在で、前年同期の利益率が19.7%だった任天堂がランキングから消えた」と報じている。

たしかに、任天堂は2011年4〜12月期決算で、売上高が前年同期比31.2%減の5561億円、164億円の営業赤字に陥った。あわせて発表した今期3度目になる業績の下方修正では、通期の売上高が6600億円、営業赤字は450億円にのぼり、前期の1710億円億円の黒字から急落する見通しだ。

株価も、2月23日は1万2240円(前日比410円高)だったが、業績の下方修正を発表した直後(1月27日)には1万円の大台を割り込むほど。経営はお世辞にも良好とはいえない状況にある。

「取材があったわけではない」

日経電子版の記事はこれまでの取材メモに基づく、いわゆるまとめ記事と思われる。そこには岩田社長が指摘するような、文脈を無視して恣意的にコメントを抜き出したような記述や、事実と憶測を混ぜて書かれているようにも受け取れる内容がないわけではない。

任天堂に限らず、社長が社員に向けて危機感を煽ったり、檄を飛ばしたりする意図で「このままでは没落してしまう」と、言葉を使うことはあるだろう。

任天堂に改めて聞いてみたところ、「そもそも(社長のツイッターについては)周囲がそう(日経と)言っているだけで、当社がそのように指摘したものではありません」としたうえで、「(日経から)取材があったわけではありませんし、ましてや内部で話したことを外部に対して話したことはありません」という。

「(日経に対して)とくに謝罪を求めるとか、そのようなこともありません」と話している。