野田佳彦首相は韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と19日、ソウルの大統領府で首脳会談を開き、未来志向の日韓関係の構築で一致した。

20日、朝鮮日報をはじめとする韓国の各メディアは、社説を通じて今回の首脳会談について論評した。日韓通貨スワップ枠の拡大や日韓の経済連携協定(EPA)交渉の再開については評価しつつも、歴史問題や領土問題について話し合われなかったと、物足りなさを指摘するメディアが多かった。

特に、歴史認識などの問題について、韓国メディアは日本側を批判して自国のスタンスを改めて主張。日本メディアが「摩擦や対立を相対的に小さくする努力を重ねたい」(毎日新聞)と柔らかく報じているのとは対照的だった。

以下、韓国メディアが報じた社説で、竹島問題について触れている文章を抜粋した。

【朝鮮日報】「韓日首脳、なぜ東アジアの軍備増強問題を議論しなかったのか」
野田首相は安全保障と経済が両国関係の二つの柱であり、経済分野で最も重要な課題は韓日FTAだと強調した。野田首相は日本が韓国を銃剣で支配したことや、独島領有権を主張し続けることについて、韓国国民がどのように考えているのかを直視しなければならない。今のような状況が続く限り、両国がFTAのような大きな信頼が必要な戦略的協力関係を築くことなど不可能で、安全保障分野での協力もさらに困難にならざるを得ない。

【国民日報】「韓日通貨スワップ拡大は歓迎するが」
残念なのは、慰安婦問題をはじめとする歴史問題に、日本が消極的だったことだ。李大統領は「歴史を忘れず、未来に向う事が韓日関係の根幹」と述べ、歴史問題の解決に向けた日本の積極的な努力を求めた。しかし、野田首相は「大局的な見地で両国の関係を前進させる気持ちが重要」と避けた。野田首相は右翼傾向であるため予想はしていたが、このような姿勢は隣国である韓国に対して失礼だ。日本が本当に韓国と近づきたいと思うなら、独島を自国領だと言い張る悪い癖も捨てるべきだ。

【ヘラルド経済】「過去史に手を触れない韓日首脳会談」
なにより野田首相は、日本側が侵略戦争の歴史について言及しないなら、未来志向の韓日関係の構築は期待できないという事実を直視してほしい。日本は今年も中学校の社会科教科書に「独島領有権」を強引に掲載し、仁川―独島間の試験飛行をめぐって外務省の職員たちに大韓航空機の利用を自粛するよう指示した。勤労挺身隊には厚生年金脱退手当金として99円を支給するという図々しさを見せた。日本がこのような自閉的国家主義に固執するならば、建設的なパートナーシップや、韓日の新しい時代のビジョンはないと考えなければならない。

【世界日報】「過去史を伏せたままの未来志向的な韓日関係は可能なのか」
しかし、これ(スワップやEPA交渉再開の合意)だけでは両国の根本的な関係改善は期待できない。過去を伏せたままの未来志向的な韓日関係の成立は難しい。最近、韓日関係が悪化したのも、日本の相次ぐ「独島挑発」のせいだ。日本は過去の歴史清算に誠意を見せなければならない。

日本と比べ、韓国メディアは歴史認識の問題について大きく取り上げている。そして、未来志向の日韓関係の構築を目指すなら、まずは歴史問題について話し合う必要があると考えているようだ。

参照:韓日首脳、なぜ東アジアの軍備増強問題を議論しなかったのか - 朝鮮日報
参照:過去史に手を触れない韓日首脳会談 - ヘラルド経済
参照:韓日通貨スワップ拡大は歓迎するが - 国民日報
参照:過去史を伏せたままの未来志向的な韓日関係は可能なのか - 世界日報

(文:林由美)

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