「人身売買された女性を米国の傭兵が買春」:アフガニスタン
先日、アフガニスタンで米国大使館の警護を請け負っている会社に関して、大酒を飲んだ上での不品行の写真が表面化した(日本語版記事)。しかし、問題は酒の上のおふざけにとどまらなかった。
非営利団体である『政府監視プロジェクト』(POGO)の調査と議会証言を受けて、米国務省からの請け負いでアフガニスタンに展開している民間の警備隊に対する、同省の管理体制に懸念が広がっている。
[イギリスに本社がある]ArmorGroup North America社は、米国大使館の警護を約1億8700万ドルで請け負っているが、落札するために不当に低い価格をつけていると批判されている。[リンク先の記事によると、米国人よりも給料が格段に安い南アフリカ人や、ネパール山岳民族から構成されるグルカ兵が多数を占めるなどの状態になっているという]
そして今度は、告発者が名乗り出てきた。ArmorGroup社の元従業員2人が9月中旬、同社従業員の違法行為などの問題を告発したことで解雇されたとして、会社を相手取って訴訟を起こしたのだ。ただし、衝撃的なのは解雇の話自体ではない。告発者のひとりで、ArmorGroup社の業務責任者だったJames Gordon氏は、カブールの売春宿に人身売買された女性たちがおり、そこに出入りする従業員についての調査を会社が潰したと主張しているのだ。
『Washington Independent』に掲載されたSpencer Ackerman氏の記事から、重要な段落を引用する。
おそらくは最も深刻な話だった。Gordon氏は、警護隊員ばかりか、ArmorGroup社のプログラム・マネージャーであるNick Du Plessis氏までもが、定期的にカブールの売春宿に出入りしていたことが判明したと語った。
「カブールの売春婦の多くは若い中国人で、意思に反して性的搾取のためカブールに連れてこられている」とGordon氏は言った。[人身売買ネットワークは、戦争によって家を失った者や難民などを主な対象にしているが、アフガニスタンやカタールなど地元女性を見つけるのが難しいイスラム諸国では、中国人女性が買春のために連れてこられるケースが多いという]。
人身売買被害者保護法(TVPA)に対応した米国の請負規則では、請負業者が「契約の履行中に商業的な性行為を周旋すること」が禁じられている。つまり、この違反が米国政府に知られた場合、ArmorGroup社は契約を失うかも知れない。ただし、Gordon氏の訴訟では、ArmorGroup社の従業員がずっと売春婦を勧誘していた、さらには、独自に売春サービスを運営していたかもしれない証拠が繰り返し出ていたものの、ロンドンにあるArmor Group本社の命令により、売春問題の調査からGordon氏は締め出された、とされている。Gordon氏は、「少女を2万ドルで購入しても、1ヵ月後には利益が出る」という、訓練生の自慢話を聞いたという。
同様の民間軍事会社である米DynCorp International社が、10年ほど前[2000年]にボスニアで起こしたスキャンダルが思い起こされる。若い女性の「購入と所有」(女性の多くが売春を強要されていた)という問題が表面化したのだ。[Wikipediaによると、12歳から15歳の少女がロシアやルーマニアなどから「輸入」されていた、と告発された]
ボスニアの性奴隷取引に同僚がかかわっていると訴えたDynCorp社の従業員2人は、その後会社を解雇された。告発者はその後、告発関係の訴訟で正当性が立証された。
[違法行為の疑いに基づき、]DynCorp社の従業員が数人解雇されたが、[他国にいたため、]刑事罰を言い渡されたものは1人もいなかった。DynCorp社は現在もなお、米国務省の主要な警備関連企業にとどまっている。