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フレディー・ハバードが1983年に録音したこのアルバム、いつもオープントランペットで豪快に吹きまくっている彼が全編ミュートトランペットでしっとりとバラードを聴かせる異色の作品である。
今となっては、何も考えずに楽しめる作品であるが、発表当時のジャズ界の状況がどうだったのかということを考えながら聴くと、二重に楽しめるので、今回はその辺の話をご紹介。




1983年といえば、フュージョン全盛時代。当時の日本のジャズファンは、「フュージョンはジャズかジャズでないか」という踏絵のような問答をやっていた。もちろんフュージョンを否定するのが正統派のジャズファンとされた。

帝王マイルス・デイビスは1981年に復帰してロック色の強い音楽をやっていた。伝統的アコースティック4ビートを演奏するミュージシャンは数少なくなる一方であった。
そんな時代、「昔の古き良き時代のマイルスのミュートプレイをまた聴きたい!」というジャズファンの切なる願いを、フレディー・ハバードに託してしまったのが、この「薔薇の刺青」である。
そして、この頃から日本のジャズファンの趣味に合わせた日本企画の録音が増えてくるのである。

収録曲は次の通り
1. 星に願いを
2. プア・バタフライ
3. マイ・ロマンス
4. エンブレイサブル・ユー
5. バラの刺墨
6. タイム・アフター・タイム
7. マイ・フーリッシュ・ハート

なお、タイブ・アフター・タイムは、マイルスが後年に演奏したシンディ・ローパーの曲ではなく、同名のスタンダードチューンである。

80年代にはアコースティック・マイルスの幻を、フレディー・ハバードとウィントン・マルサリスが背負っていた。マイルス亡き現在、最高のマイルス・フォロワーである、ウォレス・ルーニーが頑張っている。

(編集部 真田裕一)