6月13日、世界のナベアツ(吉本興業)の写真集が発売される。芸人が写真集なんてアイドル気取りか、と悪態をつくのはまだ早い。この写真集は「3の倍数と3のつくページだけアホになります」のタイトル通り、1ページ目、2ページ目は普通の写真だが3ページ目はアホ写真、といった仕上がりになっている。まさにナベアツにしかできない、芸人魂全開の写真集なのだ。

 ナベアツの勢いが止まらない。「ジャリズム」渡辺鐘から華麗なる転身を果たしたのが2007年の後半。その直後、2008年1月に行われた「R-1ぐらんぷり」では3位の栄誉に輝いた。当時はすでにネタが飽きられていたなどと言われていたが、なかなかどうして、手を変え品を変え私たちを楽しませ続けている。今思えば、“3位”というのもミラクルに感じられるほどだ。

 “3の倍数と3のつく数字だけアホ”をベースに、5の倍数で犬っぽくなったり、ナルシストになったり、8の倍数で人探しをしたり。英語圏ではフィズバズと呼ばれる有名な言葉遊びだが、日本ではナベアツがセンセーションを巻き起こした。その原動力はなんといっても圧倒的な“アホ”さにある。あの顔、あの声、あの動き、日本人の誰もが原風景として持っている“アホ”の姿だ。

 ナベアツのネタはバカバカしい。“アホ”以外にも、日常で起こりうる恥ずかしい場面を「B'z」の名曲「ultra soul」のサビに乗せて格好よく見せるネタや、台詞がすべて九九の刑事ドラマ風ミニコントなど、本当にバカバカしいものばかりをそろえている。だが、バカバカしいことを真摯にやる姿が強烈におもしろいのだ。

 この写真集にもその姿勢が表れている。3の倍数と3のつくページだけアホになる、なんとバカバカしいことか。買う気はしないけど一度くらい見てみたい、そんな声が多そうだ。それを見越してか、価格はなんと1,000円。一度だけ見てブックオフに持ち込んだり、友達の間でたらい回しにしたりするには惜しくない価格だろう。もちろん、一生大事に取っておくファンにとっては破格だ。発売記念のイベント(詳細はhttp://fandango.laff.jp/news/2008/06/post-bfb6.html)も行われるので、千円札を握り締めて出かけてみてはいかがだろうか。

 奇しくも千円札の野口英世はナベアツに似ている。これもまたオモロー!だ。

(編集部 三浦ヨーコ)


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