「eKワゴン」の販売が苦戦している

写真拡大

   三菱自動車の2代目「eKワゴン」の販売が苦戦している。2006年9月のフルモデルチェンジから07年3月までの間に、販売計画を上回った月は3月のみ。軽自動車の主力車が伸び悩んだ結果、06年度の三菱の軽自動車販売台数は前年度実績に届かなかった。系列ディーラーから「フルモデルチェンジは失敗だった」という声も出ている。三菱はてこ入れ策に悩んでいる。

三菱車最大の販売量が期待されていた

   初代eKワゴンは01年に発売された。当時の三菱の国内販売陣営は、2000年に発覚したリコール隠しによる急激な販売減に見舞われていた。eKワゴンは機能と安全性の高い車として登場し、苦境にあえぐ系列ディーラーから救世主とさえ言われた。それだけに三菱の国内販売陣営が抱く思い入れは強い。05年に発売した「アイ」も三菱のイメージ回復に貢献した救世主的な車ではあるが、eKワゴンは三菱車最大の販売量が期待され、フルモデルチェンジは失敗が許されないはずだった。

   三菱はeKワゴンの人気を確実にするため、前モデルのコンセプトを踏襲して現行モデルは形を大きく変えずに発売した。販売計画は月間6,000台。この計画はモデル末期までの平均値であり、フルモデルチェンジ以降3〜6ヶ月は計画値以上の販売が続くはずだった。

   だが現実は2月まで計画を下回り続け、計画を超えたのは3月の1万1,191台だけ。平均月間販売台数は、発売から2月まで6ヶ月が5,249台。3月までの7ヶ月が6,098台と、年度末商戦でようやく新型車としての面目を保った形だ。

宣伝広告の内容がよくなかった?

   一方、三菱が日産にOEM供給している兄弟車のオッティは、eKワゴンから1ヶ月遅れの10月に発売された。オッティの月間販売計画は2,600台。eKワゴン最大のウリである電動スライドドアの装備車は12月から供給というハンデがあったが、発売月から販売計画値を超え続け、3月まで6ヶ月の平均月間販売台数は4,574台となった。

   軽自動車の新車市場が過去最高の販売状況にあるなかで、三菱の系列ディーラーは苦悩し、日産の系列ディーラーは予想外の売れ行きに笑みを浮かべている。eKワゴンとオッティの大きな違いはフロントグリル部分のデザインと内装色だけで、それほど見た目は変わらない。

   もちろん三菱の計画値が大きすぎ、日産は控えめな計画を立てたという声もあるし、販売実績は両陣営の販売力の差も影響している。だが、三菱ならもっと売れていいはずだ、という思いは社内外に強い。そのせいか、宣伝広告の内容が両車の明暗を分けたと考える系列ディーラーが増えている。

   三菱も日産も販売ターゲットの中心は小さな子供を持つ主婦層。日産はオッティの楽しさをCMで表現し、様々な客層を取り込んでいる。ところが三菱は乗り降りしやすい電動スライドドアの訴求をメーンとしたことで、販売ターゲット層を絞り込みすぎた。

   三菱はeKワゴンの販売のてこ入れ策として特別仕様車などの投入を考えているが、販売増には商品の仕様から広告の内容まで、様々な変更が求められている。今後のてこ入れ策次第では、三菱と系列ディーラーとの信頼関係にも影響が出そうな雲行きだ。