インタビュー:熊木杏里「聴いてくれる人がいて初めて、私が存在してる」
昨年8月より放送を開始した、資生堂企業広告テレビCM「新しい私になって」篇で耳にした「本日私はフラレました…」という歌声。CM放送後に問い合わせが殺到したその歌声の持ち主は、熊木杏里。今月21日には、通算8作目となるシングル「春の風」を発売する。同曲は3月10日より全国公開、累計380万部を超えるあさのあつこ著のベストセラー小説が原作の話題映画「バッテリー」の主題歌に起用されており、映画公開前から注目を集めている。
――最初に歌手を目指されたのはいつ頃ですか?
熊木杏里(以降、熊木):高校生の頃ですね。自分の思っていることをちゃんと友達に伝えられない感じになってきて、言えないことをノートに書くようになったんです。ちょうどその時、歌を習って発声練習とかをしていたので、その書いた言葉を歌うという方に自然と向かっていったんです。――楽器を弾かれるようになったは、いつ頃から?
熊木:幼稚園と小学校の時しかピアノを習っていなくて。10歳の時に父親の転勤で東京に出て来て、その時にやめました。今はかなり独学的に。――曲を作る時はピアノを弾くんですか?
熊木:作るときは弾かないんですよ。あまり上手じゃないので。作り始めた頃は弟と部屋が半分こだったので、歌うことも出来ないし。夜中しか自分の時間が無いから、静かにやらなきゃいけなくて。それで頭の中で作ることが染み付いていて。後で人に聴いてもらう時に、ピアノを弾いて音を付ける感じなんですよね。――歌詞は普段から書き溜められているんですか?
熊木:割とそうなんですけど、ちゃんと曲になるまでには、締め切りとか何かがないと最後まで行かないんです(苦笑)。――歌詞を書きたいと思うのは、どういう時ですか?
熊木:何かモヤモヤした感情がある時です。例えば人に会った時とか、映画を見た時とか、本を読んだ時とか、心の中にモヤモヤして人に上手く伝えられない気持ちを詞にしますね。だから明らかに「わぁー!私は今、幸せ!」という曲は書けないんです。――どちらかというと、詞を書く時は負の感情の時が多いですか?
熊木:そうだと思います。何か考えさせられたり、自分にもそういう所があるんじゃないか?比べてどうなんだろう?って。――日常生活の中で、そういう刺激を受けるきっかけがあれば。
熊木:それを求めて旅に行ったり。初めて沖縄に行った時に、感じたことが言葉に出来なくて、曲を書いたので。――旅にはよく行かれますか?
熊木:何気に行きます!――それは曲作りのために?
熊木:いや!そんなつもりはないんですよ。でも大体、曲が出来る時はそういうモードで行く時なんですよ。――非日常に触れるといいのでしょうか?
熊木:癒されちゃう時はダメなんですけどね。――普通、旅は癒されるものではないですか?
熊木:癒される時とそうでない時と。場所柄にもよるだろうし。――こうしてお会いする前に、歌詞や歌声からは大人しそうな印象を受けていたんですけど、実際に自分はどういう性格だと思いますか?
熊木:きっと、歌っている時と曲を書いている時が1番本心なんだと思います。元々すごく明るくて活発な子だったと思うんですよね(笑)。だけど東京に来て、高校の時に1歩引っ込む自分が存在し始めるようになってから、表と裏の自分がいるような気がしますね。曲を作る時には必ず内部の方の、何かを敏感に察知する方の自分だと思うんですけど。――そういう熊木さんの一面が、歌詞の一つ一つに表れているんですね。
熊木:そうですね。普段の感じで書こうと思うと、浮かれポンチな感じですね(笑)。