当面の予想レンジは、1ドル=104.50〜109円程度とみている。

 ――ユーロ/ドルは、1ユーロ=1.24ドル近辺でしっかりしている。今後の見通しは?

 ユーロが高止まりしているのは、ドルがだらしないためで、ユーロ高というよりもドル安の状況が続いていることが大きい。2月に1.25ドル台半ばの高値を付けたが、これを超えてユーロが値上がりするには、ユーロに買い材料が出てくる必要がある。

 また、シカゴのIMM通貨先物市場では、買いポジションが高水準でたまっている。買い余力は大きくないため、上値は重いと見ている。

 ECBが年内に量的緩和を終了するという観測はほぼ織り込み済みであり、来年の早い時期に利上げという観測が浮上しない事には、追加のユーロ買い材料にはなりにくい。ただ、足元ではユーロ高の影響もあってインフレ率が鈍化し、欧州圏のPMI(製造業購買担当者景気指数)なども弱くなっている。利上げ期待が高まるような環境とはまだいえないだろう。

 ドルが、これまでの下落要因の後退から買い戻される展開になれば、ユーロは売られやすくなるだろう。金利差を考えれば、ユーロ買い・ドル売りポジションを持ち続けるのは難しいと見られ、どこかのタイミングでユーロを手離す動きが強まる可能性が高いと考えている。

 当面の予想レンジは、1ユーロ=1.215〜1.26ドルとみている。2月高値を抜くことが仮にあったとしても、上値は限定的だろう。

 ――その他、注目する通貨ペアは?

 南アランドの動きに注目している。高金利通貨として個人投資家の方々に人気の通貨のひとつだが、これまではズマ前大統領の汚職や不祥事等の不人気によって市場の評価が低かった。このため、今年2月に前倒しでラマポーザ新大統領が就任することになったが、新大統領は、就任後すぐに付加価値税の導入を決め、財政再建派で前大統領によって解任されたネネ前財務大臣を改めて財務大臣に指名するなど、財政改革に前向きな姿勢を示している。

 このような新大統領の手腕に期待して、ムーディーズが3月に格付けをBaa3で維持するとともに、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。フィッチやS&Pは既に投機的格付けに引き下げているので、ムーディーズが投資不適格級への格下げを行わなかったことは、南アランドにとっては大きい。格下げによって投資資金の流出を招いていては、一段とランド安につながるところだったが、当面その心配はなくなった。

 この新政権への信頼感の回復を手掛かりに、28日の南ア中銀(SARB)理事会では、利下げを決定した。これまでは、景気が良くないにもかかわらず、インフレ率が高い事や、海外からの投資資金を繋ぎ止めるため、金利を下げにくい状況が続いてきた。これが利下げに踏み切ったのは、経済回復への自信の表れとも取れる。

 28日の南アランド/円は、SARBが利下げしたにもかかわらず上昇して引けた。北朝鮮情勢の改善などで円が売られた影響もあったが、市場が利下げを好感した面もあったようだ。ラマポーザ大統領の政治手腕を確認しつつではあるが、今後有望な通貨のひとつとして南アフリカランド相場をウォッチしたいと考えている。