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暦の上ではすでに秋に入り、アパレルショップには秋服がズラリと並んでいます。しかし、まだまだ油断は禁物。9月とはいえ、気温の高い日には熱中症対策が必須です。

熱中症対策の基本である「水分補給」、みなさん適切な方法を知っていますか? 「とりあえず水やお茶を飲む」という人は注意が必要かもしれません。

水だけの摂取は脱水を進行させてしまう

そもそも熱中症の主な原因は、簡単に言ってしまえば、「高温環境下における発汗に伴う脱水」です。そのため、室内を涼しくしたり、通気性のいい服を着たりといった"外からの対策"に加え、汗をかいて失われた水分を速やかに補給する"内からの対策"が大切です。

ただし、単に水分をたくさん取ればいいという話ではありません。むしろ水だけの摂取は逆効果になることもあるのです。

発汗した際には水分だけでなくナトリウムなどの電解質も一緒に失われています。その状態で水だけ取ると、人の体は、ナトリウムイオン濃度が水で薄まらないよう、摂取した水を「尿」として排出し、結果的に脱水を進行させてしまうのです。しがたって水分補給する際は同時に塩分も補給する必要があるのです。

そんな時に便利なのが経口補水液。体内の水分と同じ組成で作られている飲料で、単に水分補給になるだけでなく、体から失われた電解質を簡単に素早く吸収することができるようになっています。スポーツドリンクのように糖類が多く含まれていないので、たくさん飲んでも安心です。

また、水分保持力が高いのも特徴です。下記のグラフは、麦茶と経口補水液をそれぞれ1リットル摂取した際の体内水分量と体重の変化を計測した結果です。いずれのグラフでもその水分保持力の高さが一目瞭然ですよね。

(いずれも済生会横浜市東部病院 周術期支援センター長/栄養部部長の谷口英喜氏監修)

経口補水液はシーンによって選ぶ

経口補水液を選ぶ際のポイントは「塩分濃度」。実は、経口補水液と一言でいってもさまざまな種類があり、それぞれ塩分濃度に違いがあるのです。

先の実験を監修した谷口英喜先生は「基本的には脱水の程度に合わせて選ぶといいでしょう」と指摘します。たとえば大量発汗時や発熱、下痢、嘔吐に伴う中等度以上の脱水時といった「非日常的」な場面では塩分濃度の高いもの。そこまでいかない「日常的」な場面――たとえば運動時や入浴後、起床後、欠食時などにより起きる脱水症状には、塩分濃度の低いものが適しているそう。

最近ではコンビニやドラッグストアでも手軽に購入できるようになった経口補水液。定番商品の中で塩分濃度の高いものとしては、たとえば大塚製薬工場の「OS-1(オーエスワン)」があります。

塩分濃度の低いものでは、味の素の「アクアソリタ」がおなじみ。塩分量はスポーツドリンクよりもやや多く、一般的な経口補水液よりも少なめです。

ネオマーケティングが2017年7月に発表した熱中症に関する意識調査結果(20代〜70代の男女1200人が回答)によると、「経口補水液を知っている」という人は全体の83.5%にのぼりました。しかし一方で「熱中症予防として飲んだことがある」と回答したのは30.5%にとどまっていました。

「むやみに経口補水液を飲むのではなく、何かあればすぐに経口補水液を飲める環境を作っていくことが社会全体として必要だと考えています」と、谷口先生。現状では未経験者も多いようですが、効率よく必要な水分&塩分を摂取できる経口補水液は、今後より注目を集めていきそうです。