韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の徐薫(ソ・フン)院長は11日の国会情報委員会の全体会議で、北朝鮮の首都・平壌である異変が起きていると報告した。

それによると、首都に対する憧れやカネを儲けたいとの心理から、当局の規制をかいくぐって平壌に住む「違法居住」が増加しているという。本来、平壌に住むには当局の厳格な選別を受けなければならないのだが、賄賂を受け取って違法居住を黙認する取り締まり機関の腐敗が、これを有名無実化させているのである。

中高生も暴走

こうした事態を受け、北朝鮮当局は取り締まりに乗り出し、前科者や無職者を地方へ追い出しているという。その目的について国情院は「平壌の人口と財政負担を減らすと同時に体制維持の基盤を作るため」との見方を示した。

これは、このような説明から受ける印象より、いっそう深刻な事態が背景にある可能性がある。

平壌から地方への強制移住については、韓国紙・中央日報が今年4月に報じている。同紙によれば、平壌の人口約260万人のうち、60万人余りを地方に強制移住させる計画が存在するというのだ。

また、強制移住の対象となるのは◆脱北者や行方不明者の家族◆政治犯収容所の収監者の親戚◆違法薬物および偽造紙幣に関わった犯罪者◆韓流ドラマのDVDの製造・密売など体制の安定を脅かす犯罪に関わった犯罪者――であるとしている。

北朝鮮では、覚せい剤などの違法薬物や、韓流ドラマのDVDを製造・密売する行為は重罪であり、平壌から強制移住させられる以前に、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りになるのが普通だ。

そのような人々が「野放し」になるほどに、取り締まり機関の腐敗が深刻なのかもしれない。

正恩氏は、違法薬物の乱用と韓流ドラマの拡散を押しとどめるべく、秘密警察などを動員して様々な努力を重ねてきたが、ほとんど成果は出ていないように見える。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

すでに地方都市では、中高生までが覚せい剤でキメた上での「性びん乱」に走るなど、社会の退廃に歯止めがかからない状況となっている。

こうした問題を放置すれば、退廃の波が平壌にまで及び、収拾がつかない事態ともなりかねない。

もしかしたら平壌での「違法居住」を巡る異変は、金正恩体制のほころびの一端を見せているのかもしれない。