財務省主張に文科省ブチ切れ 教職員5万人削減は「暴論」
2017年度予算編成で、公立小中学校の教職員数をめぐり、財務省と文部科学省の対立が先鋭化している。財務省が17年度から10年で約5万人削減を打ち出し、文科省が「暴論だ」と反発している。予算編成で毎年論争になる「恒例行事」ではあるが、折衝は難航が必至だ。
少子化で児童生徒は2016年度の959万人から、26年度に840万人と119万人も落ち込み、学級数も3万1000減るというのが、議論の前提で、教職員をある程度減らすのは、文科省も理解している。問題は、その程度ということになる。
発達障害の子どもらへの特別支援教育への対応
文科省は2020年度から新しい学習指導要領が始まることを踏まえ、発達障害の子どもや日本語を話せない外国籍の児童が増えるなどを考えると、一定の教職員数の確保が必要だと訴える。具体的には、少子化でクラス数が減ることに伴う自然減を考慮しても、17年度から10年間で約1万4000人の削減にとどめるべきだと主張している。1クラスあたりの教員数を現在の1.8人から1.9人に増やすというのが計算のベースで、17年度予算に1兆5000億円を要求している。
対する財務省は今回、11月4日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に試算を公表。1クラスあたりの教員数を現在の1.8人のままにすれば、2026年度には現在の約69万人より4万9400人減らせるとし、財政審は24日の「2017年度の予算編成等に関する建議」に盛り込んだ。文科省の考えとの差は約3万5000人、財務省案での国の負担は年間758億円削減できるという。
両省の対立の中で焦点になるのが、いじめや不登校、貧困など困難を抱える子どもの増加に、どう対応するかということだ。中でも、発達障害の子どもらへの特別支援教育が注目されている。
文科省はこの10年で通常学級に在籍しながら障害の状態に応じた特別の指導(通級指導)を受ける子供が2.3倍、外国人の定住化などで日本語指導が必要な子供も1.5倍に増加したと主張し、こうした課題に対応した教育のためには人手がかかると強調。「教職員を機械的に削減しても現在の教育環境を継続できるとの主張は、学校現場の実態を無視した根拠のない議論。政府の教育再生に向けた動きに反する」(松野博一文科相、11月8日の閣議後記者会見)などと強く反発している。
PB黒字化の目標との兼ね合い
財務省側は、文科省の主張が「教育効果に関する明確なエビデンスと、それに基づく必要な基礎・加配定数の配置を科学的に検証した結果を根拠とするものではない」(財政審建議)と強調。例えば外国籍の生徒数が、製造業が多い愛知県は6373人もいる一方、青森県は9人にとどまるという地域の偏りも大きいとして、全国一律でなく、地元の企業や自治体の協力も得て、対応するべきだと訴える。
こうした両省の主張を伝えるニュースについて、ネットでは、削減反対論が大勢。
「教職員の多忙を解消し、持続可能な教育を行うことが大きな課題なのだ」
「今でも、教職員が深夜残業をしているのに、さらに減らせば、過労死多くなりそう」
「子どもたちの才能はさまざま。20人学級や15人学級を実現すれば、先生はきっとまだまだ足りない」
「これで子どもに事故が起きたらまた『何で見てないの?』って言われるのかな」
「その(削減する)約5万人の働き口はあるんでしょうか」
などの声が並ぶ。
とはいえ、世界で1番の借金大国の日本として、「2020年度に(財政の健全性を示す)基礎的財政収支(PB)を黒字化する目標は政府の重い公約」(財政審の吉川洋会長=立正大教授)だけに、教育予算も聖域ではない。両者の主張の間のどのあたりで折り合うか、まだまだ予断を許さない。