若い男性は怯えきっていた。顔に血の気がなかった。山東省威海市の市街地にある病院の救急診療科、1月30日の深夜だった。男性は医師に向って「先生、腰から下の足が、黒くなっていくんです。ボクはもう駄目なんでしょうか。なんとか助けてください」と訴えた。山東省メディアの大衆網が報じた。(イメージ写真提供:123RF)

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 若い男性は怯えきっていた。顔に血の気がなかった。山東省威海市の市街地にある病院の救急診療科、1月30日の深夜だった。男性は医師に向って「先生、腰から下の足が、黒くなっていくんです。ボクはもう駄目なんでしょうか。なんとか助けてください」と訴えた。山東省メディアの大衆網が報じた。

 医師もやや緊張した。この仕事を初めてもうずいぶん年月が経つが、そういう「怪病」の患者を診たことはない。まずは「可能性があるのは……」と、いくつかの病気を脳裏で想定していみた。

 医師がさらに事情を尋ねると、「2時間ほど前に気づいたんです。腰からの皮膚が黒くなってしまったんです。急にですよ。重病に違いありません。友だちに付き添ってもらってここまで来ましたが、途中で胸が苦しくなって、うまく息ができなくなりました」と、立て続けに訴えた。

 医師は、患者を落ち着かせねばならないと思った。長年の経験からして、まず取り組まねばならないことだ。「そんなに怖がる必要はありませんよ」と言い聞かせ、検査項目を考えた。

 その前に、病変部分を確認せねばならない。医師は患者に、ズボンを脱ぐよう指示した。確かに、腰から下が黒く染まっている。

 医師にはすぐ分かった。笑いながら、「それはね、黒いズボンの色が落ちて足に着いたんですよ。病気じゃありません」と説明した。若者は一瞬、医師の話を理解できないようだった。しかし次の瞬間「恐ろしい病気ではなかった」と分かり、大喜びした。「ありがとうございます」と何度も礼をいった。

 そして「あれ? 先生、胸の苦しさや息苦しさもなくなってしまいました」と言い出した。若者は晴れ晴れとした顔つきで、足取りも軽く帰って行った。

 中国では診察後に、医師が投薬や施術などの「治療法」を書いた紙を患者に渡す。医師は「帰宅してから体を洗うことをアドバイス」と書いた。

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◆解説◆
 新しい衣服の場合、色が落ちる場合はある。濃い色の場合、その色が着ていた人の皮膚についてしまうこともあるだろう。しかし、「体が黒変する病気」と誤認するほどの色落ちは、少なくとも日本では考えにくい。どのような染料を使っていたのか。その染料は体に影響がないのか。むしろ、そちらの方が気になる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)