台湾出身で、北京に居住している歌手の黄安さんの「発言」がまた物議を呼んだ。黄さんは17日午前、微博(ウェイボー、中国版ツイッター)で、上海付近で発生した大気汚染の影響が台湾に及んでいることについて、台湾企業が大陸部で活動していることが原因として、「大気汚染はカネと引き換えに得たものだ。それで台湾のアンタらを養っている。感謝しろ」と書き込んだ。(イメージ写真提供:123RF)

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 台湾出身で、北京に居住している歌手の黄安さんの「発言」がまた物議を呼んだ。黄さんは17日午前、微博(ウェイボー、中国版ツイッター)で、上海付近で発生した大気汚染の影響が台湾に及んでいることについて、台湾企業が大陸部で活動していることが原因として、「大気汚染はカネと引き換えに得たものだ。それで台湾のアンタらを養っている。感謝しろ」と書き込んだ。

 台湾では15日午後から大気中のPM2.5の濃度が高まった。中国大陸の上海付近から汚染された大気が海を越えて到達したためで、台湾当局は外出をできるだけ控えたり、北側の窓を閉めるよう呼びかけた。

 台湾ではPM2.5による大気汚染を色分けして表示している。15日以降に台湾では北部と西部を中心に、PM2.5の色分け表示が汚染度が最も高いことを示す「紫色」になった。台湾では「紫爆」との言い方が定着している。

 台湾では中国大陸や大陸人を警戒したり嫌悪感を持つ人が珍しくない。しかし黄さんは微博の自らのアカウントで、「台湾の同胞は知っているのか。2012年には1000社に及んだ台湾業者のうち509社が(上海などを中心とする)長江デルタに進出した。そして目一杯、儲けている。つまり長江デルタの大気汚染はカネと引き換えに台湾が得たものだ。それでもって、台湾のアンタらを養っている。感謝しろ」と主張した。

 黄さんは1963年に台湾で生まれたが、本籍は福建省〓州市だ。台湾独立を強く批判するなど、政治的な発言を繰り返している。2001年からは北京に住んでいる。(〓はさんずいに「章」)

 「大陸に感謝しろ」の書き込みに対しては「結局ヤツらは、よくないものは全部大陸から来たもので、よい者は全部、台湾本土のものと思うのさ!」、「台湾人は恩義を感じないヤツらさ」と言った書き込みに「いいね」が多く集まっている。

 ただし「早く共産党に入党しろよ」、「五毛としてデタラメを言っている。仮に台湾業者が出した問題としても、台湾の罪のない庶民を巻き込む理由にはならない」といった批判もある。

 「五毛」とは「五毛党」とも呼ばれ、インターネットの掲示板や微博などに1本当たり5毛(5角、0.5元、約9円)で中国政権に有利な書き込みをして、世論を誘導するアルバイトをする人を指す。数十万人単位で存在するとの見方もある。

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◆解説◆
 黄安さんは台湾出身の芸能人として、中国大陸当局の「意向に合致」する意見表明を続けている、比較的珍しい存在だ。台湾独立派に反発している主張の是非はさておくとして、台湾では現状維持にしろ、統一推進にしろ、独立を目指すにしろ、発言そのものは自由だ。大陸において、台湾独立を求める台湾独立を求める発言を繰り返して、「つつがなく」生活できるかどうかは疑問。「少なくとも芸能活動は絶望的だろう」と指摘するにとどめておく。

 「台湾企業も加担している大気汚染だから、台湾に責任がある」との見方には、根本的な矛盾がある。中国国内における経済活動は外資を含めて、中国当局に管理責任がある。問題行為があったとしても、それをきちんと取り締まれていなければ、やはり中国当局の責任だ。

 そして中国国内で発生した環境汚染が外部に影響を及ぼせば、それは中国当局の責任ということになる。中国政府がいつも声高らかに主張する「主権」とは、「国内における各種行為のきちんとした管理」と裏腹の関係にある。

 中国では責任ある政府関係者も地球温暖化を含む環境問題について「外国企業も中国で生産することで利益を得ているのだから、中国だけの責任ではない」と主張したことがある。自国の主権の尊厳を傷づける、暴論と言うしかない。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)