痩せようとローカーボダイエットに必死な産後のママ、倒れる(画像はイメージです)

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ハリウッドセレブから日本のタレントまで、炭水化物や糖質を制限するダイエットを取り入れ、産後いっきに体重を落としたという女性は多い。しかしスウェーデンでは産後にローカーボダイエットを続けていた女性が突然倒れ、命の危険もあったことを医師が伝えて波紋を広げている。

ローカーボダイエット(糖質制限・低炭水化物)の影響について、症例報告のオンライン・データベース『Journal of Medical CASE REPORTS』に10月1日付で発表されたスウェーデンの女性についての症例が関心を集めている。早く元の体重に戻りたいと産後の痩身に夢中になる女性は多いが、母乳を与えている傍らでローカーボダイエットに励むことは時には命の危険すら伴うことがあるもようだ。

患者は10か月前に出産したという32歳の女性で、吐き気と嘔吐、手足の震えや筋肉の痙攣、動悸といった急激な体調の異変を訴えて病院に救急搬送された。問診でわかったのは、彼女が息子を母乳で育てているにもかかわらず1日あたり摂取する炭水化物の量を20g未満にするなど、ローカーボ食にこだわり続けていたこと。産後の体重は4kg減ったが体調は著しく衰えていったそうだ。

診察した医師は体液のpHが酸性に傾く“ケトアシドーシス”の状態にある、昏睡して命を落としていたかもしれないと説明。入院となったその女性はブドウ糖の輸液に続き少量のインシュリンを投与することで、3日後にやっとケトアシドーシスの状態から抜け出せたという。スコーネ県にある「ヘルシンボリ病院」で内分泌学が専門のマグナス・エケルンド博士は、英メディア『dailymail.co.uk』の取材にこのように警告している。

「そもそも母乳の分泌は本当に多くのエネルギーを消費していることを忘れてなりません。そしてインシュリンやグルコース(ブドウ糖)が不足すると、体は代わりに脂肪をエネルギーとして消費するようになるというのがローカーボダイエットの理論ですが、脂肪の分解により肝臓で同時に作られる強い酸性のケトン体が血液の流れに乗って体内に増えてしまうと、この女性のような状態に陥るわけです。糖尿病体質でもない女性が極端なダイエットによってケトアシドーシスの状態に陥ったケースなど、私も今回初めて知りました。」

母乳育児の中でローカーボダイエットに励むことの危険性はほとんど指摘されていないが、「完全に商業主義となっているダイエット市場、広告に踊らされるのではなく、危険性をもしっかりと認識するように」とエケルンド博士。ローカーボダイエットを行う中、もしも吐き気を感じるようなことがあった場合、また吐く息にアセトン臭(=ケトン臭、甘酸っぱいりんごの腐ったような臭いとたとえられる)が感じられるような場合は、ケトアシドーシスの入り口の状態であると捉えて直ちに医師の診察が必要であるという。

※ 画像はイメージです。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)