二刀流を極める日本ハム・大谷翔平が、投手としてさらなる飛躍を遂げようとしている。今季は自身初の開幕投手を務め、ここまで(4月18日現在)3戦3勝。内容も抜群で19回2/3を投げて、被安打11、奪三振26、防御率1.37。ライバルたちは3年目の大谷に何を感じ、どう対策を立てているのだろうか。

 楽天は開幕戦で大谷の前に敗戦。平石洋介打撃コーチは今シーズンの大谷について、「元々すごい投手ですが、常に進化していますよね」と言った。

「年々、コントロールが良くなっていますし、変化球の精度も高くなっています。それに、ボールに力があって、キレもある。また、ランナーを出してからのクイックもうまくなっています。『ただ打つだけ』では攻略できないですよね。正直、大量得点は難しいです」

 しかし、平石コーチは大谷の進化を認めつつも、まったく攻略できないわけではないと言う。

「開幕戦も打ち崩すチャンスはあったんです。実際、立ち上がりはクイックを頑張ろうとしていたのか、コントロールが乱れていました。アウトコースを狙った球がインコースにいったり、ボールが暴れていました。ただ、ボール球ではなくストライクゾーンの中で暴れていたんです。結果的に的を絞りづらくなってしまいました。そのうち3回だったかな、急に表情が落ち着き、いいボールが来るようになりました。その立ち直りの早さはさすがだなと思いましたね」

 次回対戦する時は、どう大谷対策を立てるのだろうか。

「細かいところまで言えませんが、普通に考えればプレッシャーをかけていくしかありません。先程、クイックがうまくなったと言いましたが、だからといって走れないわけではありません。チームが一丸となって崩していくしかありません」

 次に選手たちの声を集めてみた。まずは開幕戦で対戦した楽天の選手から。

藤田一也

「もちろん、球界を代表する投手であることは間違いないですが、昨年に比べて特別すごくなったという印象はないです。開幕戦でもチャンスはありましたし、立ち上がりが悪いですので、そこを攻めるのもひとつの手ですよね。ただ、リズムに乗せてしまうと手も足も出ません。少ないチャンスをいかに生かすかということですね」

■銀次

「去年は変化球のコントロールがなかったのですが、今年はフォークやカーブ、スライダーでカウントを取れるようになった印象があります。あの真っすぐがあって、変化球でカウントを取れるようになったのは大きいと思います。間違いなく勝てるピッチャーですが、手も足も出ないということはないです。攻略法はいろいろあります。大谷投手だからといってアプローチは変えないし、1球目から自分のスイングをするだけです。そうすれば結果はついてくると思います」

■ウィリー・モー・ペーニャ

「日本を代表する素晴らしいピッチャーであることは間違いない。日本でプレイして4年目になるが、彼の160キロを見た時は驚いたよ。でも、それは日本で見たからであって、メジャーへ行けば多くのピッチャーがそのくらいのスピードを投げる。メジャーの中に入ればそこまでの驚きはないと思うよ」

―― 大谷攻略に何か策はありますか。

「彼が投げる時は、特別な対策が必要だと思う。でも、いちばん大事なことは、粘り強くボールに食らいついていくこと。どのピッチャーを相手にしても変わらない戦いを貫くことが大事だと思うね」

 次に、2戦目で対戦したオリックスの選手たちに聞いてみた。

■小谷野栄一

「手足が長いから球持ちが良いように思う。他の投手よりもこっちの体に近いところで投げられている感じですね。ただ、藤川球児みたいにボールにスピンがきいているわけではない。ボールの軌道はイメージできる。それでも中々ボールを前に飛ばさせないのがアイツのすごさだと思うけどね。伸びしろを考えたらとんでもないポテンシャルを持っていると思う」

■平野恵一

「大谷の真っすぐはズドンというより、シュッと来る感じ。スライダーとフォークといった変化球が良くなり、より真っすぐが生きるようになりましたね」

■T−岡田

「あれだけのストレートを投げる投手は、今の日本では彼しかいないと思います。特に高めゾーンに来るストレートは力がある。ボールが適度に荒れている分、逆に打ちづらいですね。今年は速いフォークがあるから、追い込まれる前にゾーンを絞って対応していかないといけない」

 そして4月12日のソフトバンク戦では、7回を被安打2、無失点、奪三振9の快投を演じ、最速160キロをマークした。

内川聖一

「あまり調子が良くないなと思っても、すぐに修正してくる。彼はボールもすごいけど、修正能力が飛び抜けて高いと思います」

松田宣浩

「イニングを重ねるごとに良くなっていく印象があります。それに、去年に比べて緩い球をうまく使うようになりました。緩い球のあとに160キロ近いストレートが来ると、タイミングを取るのが難しい。変化球でストライクを取られると厳しいですね」

 現在、大谷がエースとして君臨する日本ハムは首位を快走。2位の西武にとっては、大谷を打ち崩すことが首位への道となる。今シーズンはまだ対戦はないが、西武の選手たちはどんな印象を持っているのだろうか。

■栗山巧

「まだ今シーズンの情報は入ってきていないですし、映像もそれほど見ていません。ただ、間違いなく去年よりはいいピッチャーになっているでしょう。あれくらいの若いピッチャーはみんなそうなんです。どんな球を投げてくるのか、楽しみではありますよ。160キロのボールは厄介であることは間違いないんですが、真っすぐを続けてくれたら対応できると思います。でも、賢いピッチャーですからね。そうはいかないでしょう」

■炭谷銀仁朗

「この時期に160キロを出すぐらいですから、状態はいいんでしょうね。他のチームとの対戦でこれから色々なデータも出てくると思います。その中で、ウチがどう対応していくかも明らかになってくるでしょう。正直、現段階で大谷投手を特別意識することはないです。それよりも、捕手目線で考えると、日本ハムというチームは足もあるし、外国人がふたり入って長打も増えた。何より好調のいちばんの理由は田中賢介さんの存在だと思いますね」

 こうして選手たちの話を聞くと、大谷の登板する試合がさらに楽しみになってくる。難攻不落の投手として君臨するのか、それとも打者たちのプライドがそれを許さないのか。ハイレベルな戦いから目が離せない。

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya