暴力と死が、自宅の庭の草木のごとく身近にあるのがイラクである。フセイン政権崩壊の悪夢のような混沌がこの『死体展覧会』(ハサン・ブラーシム著、白水社刊)という物騒なタイトルの短編集に置き換えられている。こんなものにはフィクションでしか触れたくはないが、一連の作品群から匂う血液や爆弾でバラバラになった手足やガラス片が突き刺さった頭部は、残念ながら現実なのだ。作者のハサン・ブラーシムは暴力にストーリーを