「レギュラーとしての彼の能力に対する疑問からマーケットは限定されていた」

 海外FA権の行使を宣言しながら、最終的に阪神残留を決めた鳥谷敬内野手に関して、メジャー契約のオファーが届いていなかった可能性が浮上している。

 パドレスの本拠地サンディエゴの地元紙「ユニオン・トリビューン」は「トリタニ、日本残留」との見出しで、日本人内野手の決断を報じた。33歳の遊撃手はスコット・ボラス代理人と契約し、メジャー移籍を模索。候補にパドレスも挙がっていたが、鳥谷が阪神球団を通じて残留を発表したことを伝えている。

 強引な手腕で有名なボラス代理人は、鳥谷を「日本のカル・リプケン」と伝説の鉄人にたとえて、売り込みをかけていた。だが、記事では「メジャーリーグのレギュラーとしての彼の能力に対する疑問から彼のマーケットは限定されていた」と報じている。

 さらには「パドレスに加え、ブルージェイズ、メッツが興味を示しているとされていたが、関係者が先月語ったところによると、サンディエゴは鳥谷に対する正式オファーに至らなかった」ともレポート。同紙は年末に、鳥谷について一番打者とショートというパドレスの補強ポイントを満たす存在と報じていたが、オファーは出ていないとした。

 また、最も鳥谷獲得に熱心とみられていたブルージェイズも、正式オファーはまだ出していなかったようだ。米テレビ局「CBSスポーツ」の敏腕記者ジョン・ヘイマン氏は、自身のツイッターで「阪神で1444試合連続出場中のタカシ・トリタニは阪神に残留する。ブルージェイズは1度も正式オファーを出していない」と報じている。

成功例の少ない日本人内野手、メジャーの評価は厳しい?

 ブルージェイズのアレックス・アンソボウロスGMは、地元メディアグループ「スポーツネット(電子版)」で鳥谷について「我々は少しだけ彼を調査していた。彼のことを評価しているスカウトもいる。クラブ内で議論している選手であることは間違いない。それ以上のことは何もないが、間違いなくチームにフィットする選手だよ。代理人と会談を持ったことは間違いなく事実だ」と語っていた。

 だが、アスレチックスとのトレードでジョシュ・ドナルドソン内野手、さらにパイレーツからFAとなっていたラッセル・マーティン捕手というオールスタークラスの実力者を次々と補強するなどマーケットで積極的だったブルージェイズも、鳥谷に対する動きは興味止まりだったという。

 さらにメッツに関しても、「タカシ・トリタニが2015年日本残留」と伝えた地元紙「ニューヨーク・デイリーニューズ」が記事の中で「メッツが今オフの初めに注目したが、最終的に興味を持たなかった日本の遊撃手、タカシ・トリタニは阪神タイガースに残留することになると、球団が金曜日に発表した」と言及し、鳥谷に対する興味が薄かったことを示唆している。

 鳥谷に興味を持っているとされていた3チームからは、いずれも正式オファーはなかったと地元メディアが伝えている。代理人と各球団の交渉はあったはず。だが、日本球界最高の遊撃手という評価を集める鳥谷をもってしても、阪神残留を決めた段階では、正式なメジャー契約のオファーが届いていなかった可能性が高い。

 レンジャーズのダルビッシュ有投手、マリナーズの岩隈久志投手、レッドソックスの上原浩治投手、田澤純一投手、そしてヤンキースの田中将大投手らが活躍している日本人ピッチャーは、MLBで絶大な評価を手にしているが、成功例の少ない日本人内野手に対するメジャーの評価は厳しいようだ。