『40歳、初めてのお見合い』大手小町編集部(編)/ポプラ社

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雨が降り、部屋がじめじめ。出勤時に水たまりに入ってしまい、靴も汚れて、気分が落ち込む。そんな時に仕事でミスが発覚したり、プライベートでは友人や恋人ともめ事があったりしたら、さらに悲しくなる。
会社の先輩や周りの友人には散々相談したのに、このうえ愚痴や悩みを吐露するのはいささか気が引ける。こんな時は誰に相談すればいいのだろう……。

ため息をつきながら、手元の携帯電話で世間の人々がどのように悩みを解決しているのかを調べてみたところ、インターネット上の掲示板を活用している人が多いようだ。
日常のささいな疑問から、ご近所トラブル、嫁姑問題などの悩みまで、あらゆる内容がつづられている。

数あるネット掲示板のなかから、『発言小町』というサイトを見つけた。一般的には知られたサイトなのかもしれないが、恥ずかしながら初めてお目にかかるサイトである。
私と同じように『発言小町』ビギナーの方へ説明すると、こちらのサイトは読売新聞が運営するネット掲示板で、主に20代〜40代の女性を対象とし、恋愛や美容、仕事など、ジャンルごとにさまざまな書き込みがされている。

顔も本名も知らない者同士が相談をし合い、愚痴を言い合う。
そのなかで人気トピックとなり、1年で最も心に残った話題におくられる「ベストトピ賞」を受賞し、ついにはポプラ社より書籍として刊行されたものが『40歳、初めてのお見合い』だ。
こちらは、40年間、男性とお付き合いをした経験のないトピ主(=最初に書き込みを行った人)のアキエさんが10日後に迫ったお見合いに向けて「外見や気持ちの上でアドバイスをいただけないでしょうか」と相談を切り出す。
すると、「メガネをかけているならコンタクトに」や、「デパートと美容院に行き、目的を話して見立ててもらって」や、「不器用な男性でも気長に。練習だと思って」など、さまざまな人が積極的に意見を出していく。
結果、相手の男性とはお見合い後もデートをするようになり、経過報告をトピック内で行うと、そのたびにみんなが自分のことのように喜び、「幸せを分けてもらった気分!」と書き込んでいく。
アキエさんや応援をする人々の優しい気持ちが文面から伝わってくるようで、読んでいるこちらまで心がほっこりしてくる。

また、本書では、「ネコ語を話す上司がいてネコ語を強要された揚げ句、じん麻疹が出た(タイトル:ネコ語を話す上司がいます)」や「夫と出会って18年。夫婦間が冷め切っていたかと思っていたけれど、単身赴任する夫が私(妻)の写真を荷物に入れてくれました。しかし独りになれる解放感でウキウキしてしまう自分に罪悪感を感じます(タイトル:夫の話で恐縮ですが・・・。)」など、計6つのトピックを収録している。

本書の担当編集者である浅井さんへ、お気に入りのトピックはあるか伺ってみた。
「どれも好きで迷ってしまいますが、『ネコ語〜』は笑えて楽しめるのでお気に入りです。『ネコ語』は『にゃん』がだめなら、『わん』とかどうですかとか、『笑っていいかなー!! にゃはははははは!!』などという、無責任な意見が、でもキムチ(トピ主)さんを励まそうという温かい気持ちで寄せられているところ。『どうせ完璧な職場なんかない、だったら楽しむ方向を見いだして』というお勤め女子たちのたくましさを感じます。それと、このトピックにはガーベラさんという人が都合4回参加するのですが、最初は『ムリ!』と断言していた彼女が、周囲の意見に影響されて(?)ネコ語をつぶやくようになり、キムチさんの職場に『つとめたい』とまで打ち明けるまでになります。この物語の名脇役というか、そういうたくさんのつぶやきがエピソードを盛り立てているのだな、と思います」。

なるほど。トピ主さんの状況の変化を見守るだけでなく、回答者の人々の変化にも注目すればいろいろな角度から楽しめそうだ。
人の数だけ悩みがあり、また、回答者の数だけそれに対する答えがあるのだなぁ、としみじみ思う。
たまには顔も名前も知らない誰かに向かって、思い切り悩みを打ち明けてみてもいいかもしれない。
(薄井恭子/boox)