日本文理vs関根学園
日曜日に行われる決勝戦ということもあって、試合前から多くのファンが球場に詰めかけたこの試合。
第1シードで優勝候補筆頭の前評判通り、圧倒的な強さでここまで勝ち上がってきた日本文理と、ノーシードながら逆転に次ぐ逆転で試合を制し、勢いに乗る関根学園が対戦。1点を争う好ゲームとなったこの試合は最終回、劇的なドラマで幕を閉じた。
日本文理先発の飯塚 悟史（3年）は、不安視されていた立ち上がり、いきなり先頭の斉藤航（3年）にセンター前に運ばれる。犠打と3番・小山（3年）の内野安打で一死一、三塁のピンチを迎えると、4番・土田（3年）のセカンドゴロの間に1点を失う。
その裏、日本文理は先頭・星 兼太（2年）がレフト前に落ちるツーベースと犠打で一死三塁のチャンスを作るも、中軸が倒れ、無得点。
その直後、関根学園は7番・草間（3年）のツーベースでチャンスメークすると、9番・中村（2年）のタイムリーで1点を追加する。
関根学園先発の2年生エース・中村は、130キロ台中盤の速球を低めに集め、日本文理の強力打線に真っ向勝負。ランナーを出すものの、決定打を許さず、日本文理を無得点に抑える。
一方飯塚も三回以降立ち直り、スコアボードに0を並べる。
膠着した試合の中、先に動いたのは関根学園。五回まで日本文理打線を4安打、無得点に抑えていた中村に代え、準々決勝で帝京長岡を完封した樋口（3年）をマウンドへ。その樋口、六回に味方のエラーと死球でピンチを招くも、後続を抑え、得点を許さない。
だが、日本文理打線も黙っていない。七回、先頭の7番・新井 充（3年）がヒットで出塁すると、8番・鎌倉 航（3年）がバスターエンドランを決め、無死一、三塁のチャンスを迎える。ここで、9番・飯塚が遊ゴロを放ち、1点差に詰め寄る。
八回にも二死から7番・小林のこの日2本目となるツーベースと四球でチャンスを迎えるが、後続が倒れ、1点が重くのしかかる。
1対2、関根学園1点リードのまま迎えた九回。日本文理は先頭の飯塚（3年）がヒットで出塁。一死後、2番・黒䑓 騎士（3年）が、四球を選び、一死一、二塁。ここでこの日ノーヒットの3番・小太刀 緒飛（3年）を迎える。
関根学園・樋口はこの場面、ギアを入れ替え131キロの渾身のストレートをインサイドに投げ込むが、判定はボール。そしてカウントツーボールから投じた3球目を、小太刀が強振。打球は高い放物線描き、ライトスタンドに飛び込むサヨナラスリーラン。
日本文理が最後まで苦しみながら、相手のお株を奪う劇的なサヨナラ勝ちで2年連続の甲子園出場を勝ち取った。
エキサイティングプレイヤー 小太刀緒飛（日本文理・3年生・投手兼内野手兼外野手）打った瞬間、それと分かる打球だった。
思い切り振り抜いた打球は、滞空時間の長い放物線を描き、そのままライトスタンドへ吸い込まれた。起死回生、チームを甲子園に導くサヨナラホームランでダイヤモンドを回る小太刀は、前の走者・黒䑓を追い抜きそうになるほど興奮。ホームベースを踏むと、チームメイトから手荒い祝福を受けた。
昨年からエース・飯塚に次ぐ2番手投手として、登板を重ねた小太刀。左腕から繰り出される130キロ前後の速球と巧みな投球術、テンポのいい投球で春の大会では新潟商相手（試合レポート）にノーヒットノーラン（コールド参考記録）を記録するほど、県内では知られた存在。その才能は投手としてだけでなく、打者としても非凡なものがあり、右へ左へ広角に打ち分ける巧みなバッティングセンスで3番に座り、打線をけん引していた。
迎えた夏の大会、投げない時の定位置であった一塁に打撃好調の片岡（3年）や川口 達朗（3年）が入り、センターを守る機会が増えた。また、対戦校の厳しいマークにあい、2回戦、3回戦は合わせて1安打。4回戦、準々決勝とそれぞれ2安打、3安打と復調の気配を見せたものの、準決勝の北越戦では相手エースの山�� 嘉紀（3年）にタイミングを外され、コールド勝ちしたチームの中で1安打と波に乗り切れなかった。
そして迎えた決勝。初回、一死三塁のチャンスで小太刀はセカンドゴロに倒れ、得点のチャンスを生かせない。その後も、関根学園の中村、樋口の前に3打席凡退。1人ランナーが出れ打席が回るという状況で最終回を迎えた。
そして、先頭の飯塚が執念ともいえるレフト前ヒットで出塁。星が倒れた後、黒䑓が四球を選んだ。仲間がつないでくれたチャンスで、打たないわけにいかない。そんな心境だったのだろう。
ボールが2つ続いた3球目が、長く膠着した試合を決める一振りで打球がライトスタンドに消えた。
試合後、グラウンド内で行われた公開のヒーローインタビューに登壇した小太刀。スタンドから彼へ送られた声援は、彼の前にインタビューを行った大井監督、エースの飯塚、主将の池田 貴将よりもはるかに大きかった。
アナウンサーからの問いに、「（栃木県から）新潟に来て、日本文理で野球ができてよかったと思いました」と答えた小太刀。だが、チームが掲げる全国制覇という明確な目標を達成した時、その気持ちを甲子園で再び味わうことになるだろう。
新潟大会で敗れた87チーム88校の思いを胸に、小太刀は甲子園で躍動する。
（文＝編集部）
【野球部訪問：第127回 日本文理高等学校（新潟）】
