真面目な会社説明会だが、ただの会社説明ではない。というのも、今しがた泣いたばかりなのだ。

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今や、おなじみとなった感のある「涙活」。「一カ月に2〜3分だけでも能動的に涙を流す時間を設け、心のデトックスを図る」という活動。ご存じの方も多いですよね?

そしてある日、「涙活」プロデューサーの寺井広樹氏よりこんな話を打ち明けられました。
「『涙活』で、会社説明会を行おうと思うんです!」

あまりにとっぴな告白なので混乱してしまったが、きっかけとしてこんなエピソードがあったらしい。現在、月1〜2度のペースで開催されている『涙活』イベントだが、そこには“就活疲れ”の学生も来場するという。一方で、某企業の人事担当者もイベントに参加するらしい。
「普段、学生とフランクに腹を割って話ができる機会がない。しかし涙を流して、お互いが“素”になって交流できるというのは非常にいいね」
人事担当者によるそんな感想にヒントを得て、この試みをスタートさせるそう。普段の面接ではかなわないディープな交流ができれば……という狙いがあるようです。
「心理学的に見ても、涙は“素直な自分”を引き出す作用があります。泣くまでは自分を律していますが、一度泣いてしまったら一種の気持ち良さに浸れるのです。それは、いわば『格好つけや我慢を捨て去った素の自分』を出せる気持ち良さ。涙には、緊張を解き放ち、あるがままの自分、素直な心理状態を呼び覚ます作用があります」(寺井氏)

というわけで昨日、名付けて「ナクルート」(「泣く」+「リクルート」)が「B&B」(世田谷区北沢)にて開催されております。今回行われるは、「面白法人カヤック」の会社説明会。同社CEOの柳澤大輔氏が、わざわざやって来てくれましたよ!
さて、場内は超満員。学生さんだけでなく社会人の姿も多く見受けられますが、全員がカヤックに興味を持つ方ばかり。いわゆる転職希望者も多く来場したようです。

では、本日の流れについて。まず噺家による“泣ける話”、いわゆる「泣語」が披露されます。その後、「涙活」イベントでも毎回上映される“泣ける動画”が上映され、それらを経た状態の柳澤氏(泣いた状態)に会社説明をしていただく……というプログラムになっています。
柳澤 泣けますかね?
寺井 バッチリ動画もご用意してしますので。
柳澤 泣けなかったらスミマセン!
寺井 その状態で就活が実現できたらいいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。

さて、まずは「泣語」を皆さんで鑑賞しましょうか。噺の内容は就職活動のエピソードを交えたもので、ハンカチで涙を拭う参加者も2〜3人いました。……が、柳澤氏の涙腺は着火せず。
では続けて、“泣ける動画”に行きましょう。海外の泣けるCMや5〜10分の短いショートストーリー動画を7本つなげた、計30分の動画が上映されました。結果、参加者の中には涙を流す方が多数! ハンカチで涙を拭う男女が少なくありませんでしたよ。
寺井 目を真っ赤に腫らしてらっしゃる方もいっぱいいらっしゃいますけど。柳澤さん、いかがでしたでしょうか?
柳澤 私、娘がいるんですね。娘系、結構キますね。
寺井 やっぱり親子系、弱いですか。
柳澤 いいですね、やっぱり。……何の会ですかね、これ?
(場内笑)
寺井 ……では、柳澤さんによる会社説明をしていただきましょう。
(場内笑)
柳澤 できるかなあ(笑)?
寺井 この状態で、やっていただけますでしょうか。

というわけで、しんみりしつつ砕けつつ、それでいてシリアスな会社説明が展開され、参加者たちはじっくり聞き入ります。しかし、それだけではない。なんと「面白法人カヤック」の泣けるエピソードも紹介されております。

寺井 『アイデアは考えるな。』という柳澤さんの本に、泣けるエピソードが書かれていました。二年間、カヤックで働いていた男性社員が「カヤックを辞めて地元の福岡で働きたい」と柳澤さんに相談してきたんですね。その辞める社員に対し、柳澤さんは「僕もこの業界に10年くらいいるから、福岡とはいえ行きたい会社を紹介できるかもしれないよ」と。翌日、その男性社員が“興味を持っている会社リスト”を柳澤さんに提出したんです。その中には、柳澤さんがよく知っている会社の福岡支社も入っていた。しかも、その会社の社長宅へ、次の週に柳澤さんが遊びに行く予定だったんです。柳澤さんがその社長さんに言った言葉は「(辞める彼は)制作のスキルはまだまだですが、二年間無遅刻無欠勤、非常にストイックに仕事をする真面目なタイプです。ぜひ会って、彼が使えるかどうか判断してやってください」。後日、柳澤さんの後押しもあり、彼は入社が決まったという。……自分が会社の上司や社長に転職を相談したら、果たして他の会社を相談してもらえるほどの信頼関係を築けているのか? 身につまされました。
柳澤 彼ね、今、その福岡支社のトップになってます。制作だけじゃなく、全体のトップになっています。結構な人数がいる規模の会社なんですけど。

ますます、カヤックへの興味が高まったであろう参加者たち。では最後に、柳澤氏への質疑応答タイムへ突入!
「カヤック社員には奇麗な女性が多いが、顔で選ばれている?」「今は人力車の運転手をしているのだが、柳澤氏のお抱え運転手にさせてもらえないか?」など通常の会社説明会では有り得ない質問もありつつ、「カヤックは、なぜ今ほど大きな規模になったのか?」「ブラック企業にならないよう気を付けていることは?」など至極真面目なクエスチョンも飛び交いました。
皆さん、この日の「ナクルート」にはかなり満足したのではないでしょうか。

「学生も企業も面接時には取り繕うので本音で話せず、後になって『こんなはずじゃなかった』と辞めてしまう人が絶ちません。『ブラック企業』よりも、良いところも悪いところも素直に語り合える『フランク企業』に巡り合いたいものです」(寺井氏)
(寺西ジャジューカ)