東京成徳大高vs麻布
7月11日に行われた東東京大会の6日目は、台風8号の接近に伴い大幅な日程変更があり、明治神宮第二球場の1試合のみとなった。その唯一のカードは、東京成徳大高と麻布の対戦。麻布は1回戦で都立戸山と対戦し、4対0で勝利、勝ち上がってきた。対する東京成徳大高はこの2回戦からの登場、勢いづくチームを相手にまわしての初戦となった。スタンドは両校のカラー、紫色に染められた。
台風一過の青空のもと行われた試合は、初回にいきなり動き出す。東京成徳大高は1番・佐藤 亘がフルカウントから左中間へ二塁打を放ち出塁。2番・田中 将がきっちり送ると、3番・酒井 柾彦がライトへ弾きかえし1点を先制。お手本のような攻撃を見せる。
幸先の良いスタートを見せた東京成徳大高にその裏、アクシデントが降りかかる。1回一死から、捕手・近藤 啓太がファウルを追いかけて麻布ベンチに落下。膝を強打し無念の交代となる。2年生ながら扇の要であり、打っても5番、クリーンナップも任される近藤の予期せぬ交代劇に、東京成徳大高ベンチはざわつきを見せる。
2回裏、麻布は一死から5番・氏家 太が三遊間を抜ける安打で出塁。6番・室賀 裕太がバントを決めて二死二塁とした後、7番・森末 良彦が放ったのは左中間を深々と破る三塁打。早々に麻布が追い付いた。森末は、1、2年生が多いチームで気を吐く3年生。塁上でガッツポーズを見せるその森末にスタンドもお祭り騒ぎ。それに伴い、重苦しいムードが流れ始める東京成徳大高。だが、その空気を振り払ったのは誰であろう、負傷した近藤に代わり登場した同じ2年生捕手、鈴木 尚登だった。
4回表、東京成徳大高は3番・酒井 柾彦が四球を選び出塁し、バントで二塁へ。打席に立つのは、5番・鈴木 尚登。ライトのわきを抜ける三塁打を放ち、1点を叩き出す。その余韻も冷めやらぬうちに、続く6番・河鍋 一輝がスクイズの構えからピッチャー前へ転がす。三塁走者の鈴木はゆったりとしたステップから鋭いダッシュを見せ、ブロックをかいくぐり左手でタッチ。見事生還を果たし、東京成徳大高がこの回2点を挙げる。
こうなると勢いは東京成徳大高へ。5回には一死から出塁した2番・田中 将が二盗、三盗を決めてバッテリーを揺さぶると、3番・酒井柾彦の右中間を真っ二つに破る三塁打で1点追加。やや浮足立つ麻布バッテリーを足で攻め、一死二、三塁とし、迎えるは5番・鈴木 尚登。スクイズがエラーを誘い、二塁走者も還り2点を追加。この回3点を挙げ、東京成徳大高が一気に試合の流れを決めた。
鈴木尚登は9回にも二死三塁からセンター前へタイムリーを放ち、この日5点に絡む大活躍。アクシデントはあったものの、代わって入った選手の大活躍で東京成徳大高が快勝。チームの流れを作る第1歩を踏み出せた。その東京成徳大高は次の3回戦、明治神宮野球場で強豪・関東一と対戦する。
一方、少しの隙からつけ込まれ、逆に相手の隙をつききれずに敗戦を喫した麻布。だが、執拗な揺さぶりに崩れそうになりながらも持ち堪え、最終回まで戦い抜いた。ここ最近、1回戦での敗退が続いていたチームがこの夏得た1勝は大きい。先発として6回を投げた大和田 湧は1年生。2番手の室賀 裕太は2年生。この日登場した捕手の田淵 凌輔、氏家 太はこちらも2年生、1年生とまだ若いチーム。秋以降、この経験がきっと生きてくるはずだ。
（文＝青木 有実子）
