(写真中央)後半から入ったDF森重真人が攻撃参加。ゴールにつながる活躍を見せた

写真拡大

「対戦相手のポイントを抑えるより、自分たちのやるべきことをやるだけ。相手に合わせて変えていたらスピードが出ず、ノッキングしてしまう」

前日会見でザンビア戦は仮想コートジボワール戦かという質問に対するザッケローニ監督の答えだ。スタメンGKが西川周作なのは意外だが、彼とベンチスタートの長谷部誠を除けば、これがコートジボワール戦のスタメンと言っていいだろう。右足ふくらはぎの張りを訴えた長友佑都、微熱で練習を回避した岡崎慎司も戻り、あとは最後のテストマッチとなるザンビア戦で「自分たちのやるべきことをやる」だけだ。

ところが試合が始まって主導権を握ったのはザンビアだった。ボールポゼッションで日本を上回り、9分に右クロスのこぼれ球をC・カドンゴがヘッドで押し込むと、30分には右CKのトリックプレーからシンカラが豪快に突き刺し追加点を奪った。日本は疲れからか運動量が少ない。このため攻守の切り替え、とりわけボールロスト後の組織的な守備で後手に回り、ザンビアの攻撃をディレイさせられなかったのが痛かった。

それでも日本は40分に香川真司のクロスからハンドの反則でPKを獲得。これを本田圭佑が右下に決めて1点を返して後半を迎えると、ザンビアの運動量が落ちたこともあり70分過ぎより日本がようやく主導権を握って試合を進められるようになった。そして74分、左からカットインした香川のクロスがそのままゴール右に決まり同点に追いつく。

さらに76分には右サイドでマーカーを外した森重真人のグラウンダーに本田が飛び込み、あっという間に逆転に成功した。ところが89分、山口蛍の寄せが遅れる隙にL・ムソンダからミドルシュートを叩き込まれ同点とされる。

だが、ここからがザック・ジャパンだった。アディショナルタイム、遠藤保仁に交代した青山敏弘のロングフィードを大久保嘉人が絶妙なトラップでコントロールするとザンビアゴールに蹴り込んだのだ。そのままタイムアップとなり、日本は4-3と劇的な勝利を収め、意気揚々とブラジルを目ざすことになった。

この試合で、まだ陽の高い午後6時、開場と同時にスタジアムへ飛び込んで来たのは、SAMURAI BLUEのユニホームを着た一団だ。次々と全速力で通路を駆け抜け、バックスタンド中央に貼られているULTRA’ NIPPONの横断幕前にたどり着くと、それぞれが何か作業を始めた。試合開始まで、まだ1時間半以上もあるのに、すでにサポーターは臨戦態勢に入っているようだった。そして今はブラジルでの躍進を信じているだろう。

【取材・文/六川亨】