経団連は、グローバルに活躍できるマネジャーの確保・育成に向けた取り組みに関する報告書を発表した。国内市場が縮小する中、海外事業の拡大を進める企業の課題である人材確保について、大手15社の企業事例の取り組みなどを紹介している。

 報告書では、「グローバル人材の育成やグローバル人事制度の整備といっても、その最適な解のあり方は企業の置かれている状況によって異なる。グローバルに活躍できるマネジャーの確保・育成は、自社のグローバル経営の現状や今後の方針等を踏まえながら、自社に適った形で計画的に検討・推進していくことが基本となる」とした上で、、共通して求められる対応として次の4点を挙げている。

1.人材像の明確化
 自社の海外マネジャーに求める能力等を具体的に明らかにする(例:語学力、異文化理解力、ストレスマネジメント力などベーシックな能力と情報収集・発信力、課題解決力、部下育成力、コミュニケーション能力など)

2.必要な海外マネジャー数の明確化
 自社のグローバル経営戦略やグローバルポリシーに基づき、5年後・10年後を見据えながら、必要数を明らかにする

3.人材の確保・育成のあり方
 社内での育成と外部人材の活用の最適なバランスを図る(社内育成:OJTをベースとしつつ、効果的なOFF-JTを組み合わせていく、外部人材:経営理念等の共有による一体感の醸成に取り組む)

4.グローバル人事制度の構築
 自社の事業活動のグローバル化の状況に応じて、最適な仕組みへと見直していく(例:グローバル人材マップの策定、グローバルに統一したジョブグレードの構築、公平性・一貫性・透明性のある評価制度の整備など)

 人材の確保については、「質(人材像)」と必要な「量(数)」を満たす海外マネジャーを早期に確保していくためには、「時間軸(スピード感)」を踏まえて検討することが欠かせないと指摘し、「社内での育成」と「外部人材の活用」の最適なバランスを提言している。

 国内外を問わず、外部から人材を登用することは、社内におけるダイバーシティを高めることにもつながる一方で、異なるバックグラウンドや価値観を持った人材を社内に取り込んでいくことから、一体感を高める取り組みを推進することが必要となる。

 例えば、トヨタ自動車では、海外現地法人のマネジャーを対象に「ICT(Intra Company Transferee)」という日本本社への逆出向型のプログラムを実施し、同社の意思決定の仕組みや基本思想などを習得する機会を提供している。

 また、国籍などに捉われないグローバルな適材適所の人材配置を徹底していく場合には、グローバルに統一された評価制度の整備なども欠かせない。

 海外でM&Aを積極的に行っているLIXILでは、外部からグローバル経営を担える役員を積極的に登用することでグローバル事業を拡大している。資格制度は、2013年にグローバルグレード制度を構築し、海外子会社・事業所と日本のものを一本化して把握できるようにしている。

 報告書で事例紹介されている企業は次の通り。アサヒグループホールディングス、アステラス製薬、キヤノン、住友化学、帝人、東京海上ホールディングス、トヨタ自動車、日産自動車、日本たばこ産業、日本通運、日本電気、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、丸紅、LIXIL。

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