なぜ、ソフトバンクはiPhone「4s」をいまさら再販売するのか?
ソフトバンクモバイル(SBM)のオンラインショップで現在、なんと2世代前のiPhoneである「4s」が発売されている。
その値段は16GBモデルなら実質0円、最も高価な64GBモデルでさえ実質1万560円というディスカウントプライス。もちろん、いずれも正真正銘の新品だ。しかも3月31日までのキャンペーンとして、新規契約、MNP、機種変更を問わず、購入者には2万円のキャッシュバックがある。
iPhoneの場合、最新機種のリリース後も前世代の機種が割安で並行販売されることは、これまでにもあった。しかし、2世代前の新品iPhoneが、オンラインショップ限定とはいえキャリアの正規ルートで発売されるのは、前代未聞の出来事だ。
ただ、もしかしたら……と考えられる理由がないわけではない。今年に入ってからアップルがインド、インドネシア、ブラジル市場向けに、4sの生産を再開しているのだ。これらの国では現在、他社の安価なAndroid機に押され、iPhoneのシェアが低迷中。そこで、かつて現地マーケットで売れ行きがよかった4sを低価格で再投入し、人気回復を図る狙いがあるといわれている。
つまり、この再生産分の一部をSBMが確保し、日本での販売に踏み切ったのではないかという仮説が成り立つのだが……。
だが、その仮説はあっさり崩された。SBM広報に問い合わせてみると、今回の再販売は、
「在庫がありましたので」
とのこと。インドなどに向けた再生産分とはまったく関係のない動きだったというわけだ。確かに、SBMも含めた日本の各キャリアがLTEへの移行を進めるなか、3G通信にしか対応していない4sをわざわざ海外から仕入れるはずがない。はい、浅はかな臆測でした。
しかし、そうなると、また別の疑問がわく。2年以上も前に発売されたモデルの在庫が、なぜまだあったのか? そして、その在庫を、なぜ今頃再販売するのか?
その裏事情を、専門家に読み解いてもらおう。まずは携帯電話ライターの佐野正弘氏から。
「アップルとの契約で、キャリアは大量に端末を仕入れなければなりません。しかし、4sからKDDI(au)もiPhoneの取り扱いを始めました。だから、auにユーザーを奪われた分、SBMの想定以上に4sが売れ残っていたのかもしれません。しかも、以後、1年ごとに5、5sが発売されたので、4sの在庫をさばく機会がないまま眠らせてしまっていたのでは? スマホは仕入れ原価が高い上、廃棄処分するにもそれなりのコストがかかる。モデルチェンジ後も、キャリアが旧端末を在庫として1年以上抱えることは、決して珍しくないのです」
続いて、ITジャーナリストの石川温(つつむ)氏が語る。
「そうした売れ残りをSBMが各ショップや自社倉庫から集め、今回在庫一掃しようとしたのでしょう。実はiPhone以外に目を向ければ、数世代前の新品端末が破格の値段でひょっこり売り出されるというのは、どのキャリアでもけっこうあることなんです。SBMとしてはたとえ赤字になっても、そして、LTE化の流れに逆行することになっても、このまま在庫として抱え続けるより安値で叩き売ってしまったほうが得だと考えたのでしょう。ただ、今どき4sに興味を示すユーザーはほとんどいないでしょうが(笑)」
ところが、3月13日時点で、なんと32GBモデルの全色と64GBモデルのブラックは、すでに売り切れ状態なのである。
日本にはそんなに多くの4sファンがいたってことか?