一番こだわったのは小紅の胸「未確認で進行形」藤原佳幸監督に聞く1
16歳の誕生日に、いきなり許婚と同居することになった夜ノ森小紅。
文武両道の美少女生徒会長だけど、実は重度のシスコン&幼女好きの変態姉、夜ノ森紅緒。
9歳の幼女なのに、なぜか小紅のクラスメートで小姑の三峰真白。
オープニングからエンディングまで、ヒロインたちの動きと掛け合いがひたすら可愛くて楽しいと大評判の「未確認で進行形」。
第10話まで放送され、残すは最終回を含めてあと2話となり、Blu-ray&DVDの1巻も発売中です。
作業も佳境の中、制作スタジオ動画工房を訪ねて、初監督作品「GJ部」に続く話題作連発で注目を集める藤原佳幸監督にインタビューしてきました。
漫画を描きたいなと漠然と思っていた
――藤原監督はアニメーター出身とのことですが、最初から演出にも興味はあったのですか?
藤原 元々、絵の勉強をしながらお金も稼げる職業はないかなと調べて、アニメ業界に入ったんです。アニメも好きでしたが、当時は絵が上手くなったら漫画を描きたいなと漠然と思っていました。でも、実際に働き始めてみたら、自分の画力が全然足りないことが悔しくて。がんばっているうちに、アニメの仕事も楽しいなって気持ちになったんです。その頃、周りにいる人たちの考え方などに影響を受けて、演出も面白そうだなと思うようになりました。
――特に影響を受けた相手は?
藤原 演出の黒柳(トシマサ)さんですね。年齢が同じなんですけど、「みなみけ」で黒柳さんが初めて演出をやる回(第4話)、僕は初めて作画監督をやる事になって。いろいろと話していくと、どういう気持ち、考え方で作っているのかが全然違っていて面白かった。「演出の人は、こういう事を考えているんだ!」という発見があったんです。そこから演出も楽しそうだなと思うようになって、のめり込んで作っていたら今に至る感じですね。
――ちなみに、漫画家に憧れていた頃、特に好きだった作品は?
藤原 高校生の頃には『ベルセルク』とか好きでしたね。あとは、「アフタヌーン」や「IKKI」とかの「自分の人生とはなんぞや」といったテーマの作品にハマっていた時期がありました。
――描き手の内面がにじみ出てくるような作品ですか?
藤原 そうですね。万人に楽しんでもらえるような作りの作品よりも、作者の主張が濃くて「こういうのどう?」「俺、これ悩んでるんだけど!」みたいなものがガツンと来る作品が好きだったり、影響を受けたりしました。
――「ヒャッコ」の6話で演出デビュー後、さまざまな作品で各話演出やコンテを担当されています。その中で得意な方向性などは見えてきたのでしょうか?
藤原 作画をやっていた頃から、肩肘を張らず観てもらえるような作品が好きで。ご飯でも食べながら観て頂いて、その時間をちょっと楽しんでもらえたら良いなと思っていました。でも、演出をやるようになってからは、先ほど話したような好きな漫画の要素がひょっこり顔を出すこともあって。人間の黒い部分や闇の部分も表現したいし、平和でのほほんとした世界を描くのも好きなんです。
――両極端ですね。
藤原 重たい作品をやっている時は苦しいんですけど、その苦しみがある分、より作品を作っている実感がある。ドMじゃないんですけどね(笑)。一方で楽しい作品の場合は、手を抜くというとおかしいのですが、あまり本気になり過ぎてはいけないだろうという思いもあって。
――本気になり過ぎると、作品の中に不必要な重さや黒さが加わってしまう?
藤原 そうなんですよね。そのあたりのバランスを取っているのか、手を抜いてしまっているのかの違いは微妙なので、重い作品とは違う難しさがあると思います。
お色気の強い作品だと思われるのは避けたかった
――初監督作品の「GJ部」は非常に熱いファンの多い作品になりましたね。
藤原 ただ、第1話を放送した直後は何も反応がなくて、「あ、終わった……」と(笑)。でも、放送が始まったばかりなのに監督がそんなことを言えないじゃないですか。だから、ショックを受けながらも粛々と必死に作っていました。その後、口コミのおかげか話数が進むにつれて尻上がりに反響が大きくなっていったんです。
――それは嬉しかったでしょうね。では、「未確認で進行形」の監督のオファーはどのような形で?
藤原 (製作会社の)東宝の吉澤(隆)プロデューサーは、以前、動画工房(「GJ部」「未確認で進行形」の制作スタジオ)でプロデューサーをされていたんですね。ちょうど「GJ部」の作業を始めた頃にすれ違った形だったのですが、1話のコンテを見て「良いね」と言ってくれて。放送が始まって少しした頃に声をかけて頂きました。
――キャラクターデザインの菊池愛さん、シリーズ構成の志茂文彦さんらメインスタッフに関しては、監督からのリクエストですか?
藤原 菊池さんは「GJ部」のオープニングに原画で入っていただいていて。その絵がめちゃくちゃ可愛かったんです。
――どのカットですか?
藤原 (天使)恵の名前のテロップが出てワンアクションあった後の止め絵です。立体感が素晴らしくて、この人と一緒に仕事をしたいと周りの人に言っていたら、動画工房のプロデューサーの鎌田(肇)さんに、「『未確認』のキャラデザ、菊池さんはどうですか?」と言われて。逆に「やってもらえるんですか?」って。
――願いが叶ったわけですね。
藤原 はい。「未確認で進行形」の作業が始まった頃、ちょうど「あいうら」(菊池愛はメインアニメーターを担当)が放送されていたのですが。その絵を観ながら「さすがだ〜可愛い! 俺の見る目は間違ってなかった!」と勝手に盛り上がっていました(笑)。
――志茂さんはプロデューサーサイドからの推薦ですか?
藤原 はい。僕は「CLANNAD」(シリーズ構成は志茂文彦)が大好きなので、志茂さんとも一緒にお仕事ができることになってテンション上がりましたね。
――全体のシリーズ構成に関しては、まずどのような方針があったのでしょうか?
藤原 基本、原作に沿った形でと考えていたのですが、最初に大きな課題としてあったのは、原作の1巻にある入浴シーン。あれを削りたかったんです。
――小紅の身体にある幼い頃のケガの跡を真白が見つけるシーンですね。なぜ、削りたかったのですか?
藤原 原作のままの流れだと2話くらいに入ってくるんですけど。2話であのシーンを見せてしまうと、お色気の強い作品だと誤解されそうな気がして。それは避けたかったので、シチュエーションを変えさせて頂いて、4話の後半にもってきました。
――寝込んだ小紅の汗を真白が拭いてあげる流れになってますね。
藤原 そこが最初の段階で考えた大きな方針です。その後は、各話数でどのキャラクターを見せていくのか考えて、人間関係の変化もうまく見せていけるよう、志茂さんにお願いをしました。
――原作のエピソードをうまく整理されている印象です。特に第1話は、Aパートだけでも、3人のヒロインと小紅の許嫁・白夜の個性や関係性をテンポ良く見せていて素晴らしかったです。
藤原 第1話は、志茂さんに原作の要素をいっぱい盛り込んで頂いたこともあって、コンテを描いた段階では5分オーバーだったんです。だから、第1話はオープニングをなくして、最後に(本来の)オープニングを入れました。
――そういう事情でしたか。
藤原 最終的に1話は、編集の平木(大輔)さんにかなり甘えたコンテになっていると思います。平木さんからも「丸投げだね」というツッコミを頂きました(笑)。平木さんは、僕が助監督をやった「伝説の勇者の伝説」でも編集をされていた方。すごく力のある方なので、「GJ部」で初めて監督をやる時にも編集はどうしても平木さんにやって欲しくて、自分で電話をしてお願いしました。でも、僕は「GJ部」の前に結婚をして名字が変わっていたから(旧姓は高柳)、最初に電話で名乗った時には誰だか分かってもらえず。ちょっと寂しかったです(笑)。
4コマ漫画の魅力を損なわないことも課題
――4コマ漫画をアニメ化するという点で、意識されている事や難しさはありますか?
藤原 「未確認で進行形」は大きな時間の流れがある中で、1本1本の話が進んで行く作品ですが、それでも4コマ目のオチの後、次のネタへ行く時にはキャラクターの心情が一度リセットされる事も多い。でも、アニメでは同じ(感情の)流れで描いていく事もあるので、そこは難しいですね。
――その違いは、どのように対応しているのですか?
藤原 ケースバイケースですね。シナリオの段階である程度、シリアスなネタは同じ流れの中にまとめたりもしています。ただ、4コマ漫画ならではのキャラクターの掛け合いがこの作品の魅力なので、それをスポイルして全部が時系列に沿うような作品にすると、魅力を失うことになってしまう。その魅力を損なわずに、アニメとしても成立させることが課題というか。うまく見せられていたら良いなと思ってます。
――キャラクターデザインに関しては、どのようなオーダーを?
藤原 僕の中でも、菊池さんの中でも、一番こだわっていたのは小紅の胸ですね。
――その話、ぜひ聞きたかったんです。小紅の「巨乳安産型」なスタイルの表現が素晴らしいですよね!
藤原 いわゆる「乳袋」、胸の谷間などのラインを服の上にも描くやり方は、すごく優れた表現方法だと思うんです。でも、この作品ではそれを使わず、もう少し生っぽく描きたかった。その制限がある中、服の上からでも胸の大きさが分かり、なおかつ太っては見えないようにする。そんな無理難題をお願いしました。最終的に、特注の服のように形から考えて、シワのつけ方などにもすごく気を使いながらデザインしていただきました。しかも、「安産型」と言われているからにはお尻を大きくする必要がある。
――小紅は、胸とお尻が大きくてもグラマーな印象は受けません。そのバランスが絶妙だと思います。
藤原 ウエストをどのくらい絞って、どう描くのかもかなり悩んで頂きました。あと、これはすべてのキャラクターのデザインについてですが、原作にはない白いハイライトもお願いしました。
――輪郭に入っている白い線ですね。そこも気になっていました。どういった狙いがあるのですか?
藤原 まず、舞台を雪国にすることと、作品の時間軸を放送時期に合わせることが決まったので、雪を印象的に見せていきたいと思ったんです。その一方で、ちゃんとキャラクターを見てもらいたいから、キャラには強めに色を乗せたい。どうやったら、白が基調の背景と、色の強いキャラクターがうまくマッチするかを考えて、あのハイライトの処理を加えてもらいました。菊池さんには、この処理が一番苦労をかけてしまったと思います。白い部分が太くなっても細くなってもダメで、絶妙なラインで成立しているんです。
――屋外などにいる時は、少し逆光気味にも見える表現ですよね。
藤原 そうですね。自分ではうまくいったと思っていますが、作画スタッフにもかなり苦労をかけています。例えば、あの線が細かったりすると、制服の青色などは一気に重くなるんですよ。
(丸本大輔)
後編につづく
「未確認で進行形」Blu-ray1巻
未確認でキャラソン01「夜ノ森小紅 starring 照井春佳」
未確認でキャラソン02「夜ノ森紅緒 starring 松井恵理子」
未確認でキャラソン03「三峰真白 starring 吉田有里」
文武両道の美少女生徒会長だけど、実は重度のシスコン&幼女好きの変態姉、夜ノ森紅緒。
9歳の幼女なのに、なぜか小紅のクラスメートで小姑の三峰真白。
オープニングからエンディングまで、ヒロインたちの動きと掛け合いがひたすら可愛くて楽しいと大評判の「未確認で進行形」。
第10話まで放送され、残すは最終回を含めてあと2話となり、Blu-ray&DVDの1巻も発売中です。
作業も佳境の中、制作スタジオ動画工房を訪ねて、初監督作品「GJ部」に続く話題作連発で注目を集める藤原佳幸監督にインタビューしてきました。
――藤原監督はアニメーター出身とのことですが、最初から演出にも興味はあったのですか?
藤原 元々、絵の勉強をしながらお金も稼げる職業はないかなと調べて、アニメ業界に入ったんです。アニメも好きでしたが、当時は絵が上手くなったら漫画を描きたいなと漠然と思っていました。でも、実際に働き始めてみたら、自分の画力が全然足りないことが悔しくて。がんばっているうちに、アニメの仕事も楽しいなって気持ちになったんです。その頃、周りにいる人たちの考え方などに影響を受けて、演出も面白そうだなと思うようになりました。
――特に影響を受けた相手は?
藤原 演出の黒柳(トシマサ)さんですね。年齢が同じなんですけど、「みなみけ」で黒柳さんが初めて演出をやる回(第4話)、僕は初めて作画監督をやる事になって。いろいろと話していくと、どういう気持ち、考え方で作っているのかが全然違っていて面白かった。「演出の人は、こういう事を考えているんだ!」という発見があったんです。そこから演出も楽しそうだなと思うようになって、のめり込んで作っていたら今に至る感じですね。
――ちなみに、漫画家に憧れていた頃、特に好きだった作品は?
藤原 高校生の頃には『ベルセルク』とか好きでしたね。あとは、「アフタヌーン」や「IKKI」とかの「自分の人生とはなんぞや」といったテーマの作品にハマっていた時期がありました。
――描き手の内面がにじみ出てくるような作品ですか?
藤原 そうですね。万人に楽しんでもらえるような作りの作品よりも、作者の主張が濃くて「こういうのどう?」「俺、これ悩んでるんだけど!」みたいなものがガツンと来る作品が好きだったり、影響を受けたりしました。
――「ヒャッコ」の6話で演出デビュー後、さまざまな作品で各話演出やコンテを担当されています。その中で得意な方向性などは見えてきたのでしょうか?
藤原 作画をやっていた頃から、肩肘を張らず観てもらえるような作品が好きで。ご飯でも食べながら観て頂いて、その時間をちょっと楽しんでもらえたら良いなと思っていました。でも、演出をやるようになってからは、先ほど話したような好きな漫画の要素がひょっこり顔を出すこともあって。人間の黒い部分や闇の部分も表現したいし、平和でのほほんとした世界を描くのも好きなんです。
――両極端ですね。
藤原 重たい作品をやっている時は苦しいんですけど、その苦しみがある分、より作品を作っている実感がある。ドMじゃないんですけどね(笑)。一方で楽しい作品の場合は、手を抜くというとおかしいのですが、あまり本気になり過ぎてはいけないだろうという思いもあって。
――本気になり過ぎると、作品の中に不必要な重さや黒さが加わってしまう?
藤原 そうなんですよね。そのあたりのバランスを取っているのか、手を抜いてしまっているのかの違いは微妙なので、重い作品とは違う難しさがあると思います。
お色気の強い作品だと思われるのは避けたかった
――初監督作品の「GJ部」は非常に熱いファンの多い作品になりましたね。
藤原 ただ、第1話を放送した直後は何も反応がなくて、「あ、終わった……」と(笑)。でも、放送が始まったばかりなのに監督がそんなことを言えないじゃないですか。だから、ショックを受けながらも粛々と必死に作っていました。その後、口コミのおかげか話数が進むにつれて尻上がりに反響が大きくなっていったんです。
――それは嬉しかったでしょうね。では、「未確認で進行形」の監督のオファーはどのような形で?
藤原 (製作会社の)東宝の吉澤(隆)プロデューサーは、以前、動画工房(「GJ部」「未確認で進行形」の制作スタジオ)でプロデューサーをされていたんですね。ちょうど「GJ部」の作業を始めた頃にすれ違った形だったのですが、1話のコンテを見て「良いね」と言ってくれて。放送が始まって少しした頃に声をかけて頂きました。
――キャラクターデザインの菊池愛さん、シリーズ構成の志茂文彦さんらメインスタッフに関しては、監督からのリクエストですか?
藤原 菊池さんは「GJ部」のオープニングに原画で入っていただいていて。その絵がめちゃくちゃ可愛かったんです。
――どのカットですか?
藤原 (天使)恵の名前のテロップが出てワンアクションあった後の止め絵です。立体感が素晴らしくて、この人と一緒に仕事をしたいと周りの人に言っていたら、動画工房のプロデューサーの鎌田(肇)さんに、「『未確認』のキャラデザ、菊池さんはどうですか?」と言われて。逆に「やってもらえるんですか?」って。
――願いが叶ったわけですね。
藤原 はい。「未確認で進行形」の作業が始まった頃、ちょうど「あいうら」(菊池愛はメインアニメーターを担当)が放送されていたのですが。その絵を観ながら「さすがだ〜可愛い! 俺の見る目は間違ってなかった!」と勝手に盛り上がっていました(笑)。
――志茂さんはプロデューサーサイドからの推薦ですか?
藤原 はい。僕は「CLANNAD」(シリーズ構成は志茂文彦)が大好きなので、志茂さんとも一緒にお仕事ができることになってテンション上がりましたね。
――全体のシリーズ構成に関しては、まずどのような方針があったのでしょうか?
藤原 基本、原作に沿った形でと考えていたのですが、最初に大きな課題としてあったのは、原作の1巻にある入浴シーン。あれを削りたかったんです。
――小紅の身体にある幼い頃のケガの跡を真白が見つけるシーンですね。なぜ、削りたかったのですか?
藤原 原作のままの流れだと2話くらいに入ってくるんですけど。2話であのシーンを見せてしまうと、お色気の強い作品だと誤解されそうな気がして。それは避けたかったので、シチュエーションを変えさせて頂いて、4話の後半にもってきました。
――寝込んだ小紅の汗を真白が拭いてあげる流れになってますね。
藤原 そこが最初の段階で考えた大きな方針です。その後は、各話数でどのキャラクターを見せていくのか考えて、人間関係の変化もうまく見せていけるよう、志茂さんにお願いをしました。
――原作のエピソードをうまく整理されている印象です。特に第1話は、Aパートだけでも、3人のヒロインと小紅の許嫁・白夜の個性や関係性をテンポ良く見せていて素晴らしかったです。
藤原 第1話は、志茂さんに原作の要素をいっぱい盛り込んで頂いたこともあって、コンテを描いた段階では5分オーバーだったんです。だから、第1話はオープニングをなくして、最後に(本来の)オープニングを入れました。
――そういう事情でしたか。
藤原 最終的に1話は、編集の平木(大輔)さんにかなり甘えたコンテになっていると思います。平木さんからも「丸投げだね」というツッコミを頂きました(笑)。平木さんは、僕が助監督をやった「伝説の勇者の伝説」でも編集をされていた方。すごく力のある方なので、「GJ部」で初めて監督をやる時にも編集はどうしても平木さんにやって欲しくて、自分で電話をしてお願いしました。でも、僕は「GJ部」の前に結婚をして名字が変わっていたから(旧姓は高柳)、最初に電話で名乗った時には誰だか分かってもらえず。ちょっと寂しかったです(笑)。
4コマ漫画の魅力を損なわないことも課題
――4コマ漫画をアニメ化するという点で、意識されている事や難しさはありますか?
藤原 「未確認で進行形」は大きな時間の流れがある中で、1本1本の話が進んで行く作品ですが、それでも4コマ目のオチの後、次のネタへ行く時にはキャラクターの心情が一度リセットされる事も多い。でも、アニメでは同じ(感情の)流れで描いていく事もあるので、そこは難しいですね。
――その違いは、どのように対応しているのですか?
藤原 ケースバイケースですね。シナリオの段階である程度、シリアスなネタは同じ流れの中にまとめたりもしています。ただ、4コマ漫画ならではのキャラクターの掛け合いがこの作品の魅力なので、それをスポイルして全部が時系列に沿うような作品にすると、魅力を失うことになってしまう。その魅力を損なわずに、アニメとしても成立させることが課題というか。うまく見せられていたら良いなと思ってます。
――キャラクターデザインに関しては、どのようなオーダーを?
藤原 僕の中でも、菊池さんの中でも、一番こだわっていたのは小紅の胸ですね。
――その話、ぜひ聞きたかったんです。小紅の「巨乳安産型」なスタイルの表現が素晴らしいですよね!
藤原 いわゆる「乳袋」、胸の谷間などのラインを服の上にも描くやり方は、すごく優れた表現方法だと思うんです。でも、この作品ではそれを使わず、もう少し生っぽく描きたかった。その制限がある中、服の上からでも胸の大きさが分かり、なおかつ太っては見えないようにする。そんな無理難題をお願いしました。最終的に、特注の服のように形から考えて、シワのつけ方などにもすごく気を使いながらデザインしていただきました。しかも、「安産型」と言われているからにはお尻を大きくする必要がある。
――小紅は、胸とお尻が大きくてもグラマーな印象は受けません。そのバランスが絶妙だと思います。
藤原 ウエストをどのくらい絞って、どう描くのかもかなり悩んで頂きました。あと、これはすべてのキャラクターのデザインについてですが、原作にはない白いハイライトもお願いしました。
――輪郭に入っている白い線ですね。そこも気になっていました。どういった狙いがあるのですか?
藤原 まず、舞台を雪国にすることと、作品の時間軸を放送時期に合わせることが決まったので、雪を印象的に見せていきたいと思ったんです。その一方で、ちゃんとキャラクターを見てもらいたいから、キャラには強めに色を乗せたい。どうやったら、白が基調の背景と、色の強いキャラクターがうまくマッチするかを考えて、あのハイライトの処理を加えてもらいました。菊池さんには、この処理が一番苦労をかけてしまったと思います。白い部分が太くなっても細くなってもダメで、絶妙なラインで成立しているんです。
――屋外などにいる時は、少し逆光気味にも見える表現ですよね。
藤原 そうですね。自分ではうまくいったと思っていますが、作画スタッフにもかなり苦労をかけています。例えば、あの線が細かったりすると、制服の青色などは一気に重くなるんですよ。
(丸本大輔)
後編につづく
「未確認で進行形」Blu-ray1巻
未確認でキャラソン01「夜ノ森小紅 starring 照井春佳」
未確認でキャラソン02「夜ノ森紅緒 starring 松井恵理子」
未確認でキャラソン03「三峰真白 starring 吉田有里」