大惨敗も予想された欧州遠征で、オランダに引き分け、ベルギーに勝利するというまさかの好結果!

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ザックジャパンがオランダ、ベルギーとの2連戦を行なった欧州遠征で、このところの低迷を完全に払拭する好ゲームを見せた。

11月16日のオランダ戦は、2点を先行されながらふたつのファインゴールで追いつき、2−2の引き分け。特に後半は完全に主導権を握り、敵将のファン・ハール監督に試合後、「日本が3−2で勝ってもおかしくなかった」と言わしめた。

そして、20日のベルギー戦も先制を許しはしたものの、前半のうちに同点とし、後半に入るや見事なパスワークから2点を連取。完全アウェーの地で、最終的にはFIFAランク5位の強豪を3−2と撃破したのである。

それにしてもなぜ、日本は突然の覚醒をしたのだろう? 現地で取材したサッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が語る。

「理由は簡単ですよ。日本らしいパスサッカーを欧州の強豪相手にも思い切ってやってみたら、通用したというだけのこと」

確かに、今回の欧州遠征では2戦を通じてテンポよくショートパスがつながり、流れのなかで相手を崩してシュートまでもっていくシーンが再三見られた。そして、それはザックジャパンが本来得意としていたスタイルなのだ。

「特にオランダ戦の2点目、敵ゴール前で内田、岡崎、大迫、本田が次々にパス交換しながら決めたゴールは、世界に誇れる素晴らしいプレーでした。ああいうつなぎ方は欧州の選手にはできないし、守ろうとしても対応できない。欧州勢相手にあの攻め手が有効だと日本選手が身をもって感じられたのは、今回の遠征の大きな収穫だといえます」(後藤氏)

だとすれば、逆に不思議なのが、10月の東欧遠征(セルビアに0−2、ベラルーシに0−1と2連敗)などで、なぜ日本は今回のようなサッカーができなかったのかということ。

「W杯予選突破以降、監督も選手も『自分たちのサッカーはアジア勢なら圧倒できても、欧州の強豪を相手にしたら難しいのではないか』と、疑心暗鬼になっていたふしがありました。そこで、あえてパスサッカーを封印し、ロングボールを使ってシンプルに攻めるパターンを模索し始めてしまったのです」(後藤氏)

突然慣れないことを始めても、うまくいくはずがない。自分たちでリズムを崩し、煮え切らないプレーに終始していたのが、ここ数戦のザックジャパンだった。

だが、今回は腹をくくって原点に立ち返った。すると、確かな手応えを得られたというわけだ。

とはいうものの、オランダ戦、ベルギー戦での日本は、相変わらずの課題が改善されていないことも露呈してしまった。

「イージーなミスであっさり失点してしまう癖は一向に直らない。そして、ゲームの状況を見極めながら『ここはリスクを冒しても攻めにいく』『ここは無理をせず安全第一にプレーし、しっかり守りきるところ』という、プレーの切り替えがはっきりできないのも頭の痛いところです。

ボールキープして耐えしのぐべき時間帯で不用意なパスを出し、みすみす敵にボールを渡してピンチを招く場面が多すぎる。ベルギー戦では、プレーを切り替えようという意識が多少見えたのが、せめてもの救いでしたが……」(後藤氏)

ベルギー戦後のインタビューで、ザッケローニ監督はこう答えた。

「この遠征であらためて課題も見えた。(10月の)ベラルーシ戦やセルビア戦のようなサッカーに再び陥らないよう、自分たちのプレーをやっていかねばならない」

ホント、もう、おっしゃるとおり。これからは今回の2連戦レベルのパフォーマンスを見せ続けてくれ、ザックジャパン!

(写真/益田佑一)