By Sarah Anne Lloyd

ウィスコンシン大学マジソン校の獣医学教授であるTony Goldberg氏が、ウガンダ西部にあるKibale National Parkでの調査を終えてアメリカの大学に戻ったところ、自分の鼻の中からダニを発見。これだけでも珍しいことですが、鼻の中から発見されたダニは新種である可能性が判明しています。

UW scientist sniffs out possible new tick species
http://www.news.wisc.edu/22176

「自然地帯で発生した感染症が、どのように広がっていくのか」という研究目的でウガンダに行っていたというGoldberg氏は、「調査を終えてアメリカに戻ったら、自分が密航者を連れていることに気がついたんですよ」と当時の様子を冗談交じりに振り返ります。「何かが鼻の中にいる」と気がついた当初は顔を引っぺがしたい衝動に駆られたそうですが、Goldberg氏がピンセットと鏡を使い謎の生物を取り出すと、1匹のダニが出てきたとのこと。

By John Tann

Goldberg氏は、取り出したダニを殺さずに遺伝子情報を調査。その結果、鼻に寄生したダニの塩基配列および遺伝子情報が、データベースに保管されているどのダニのものとも合致しないことが判明。Goldberg氏よると、鼻から発見されたダニは「すでに発見されているが塩基配列が確認されていないもの、もしくは新種のダニである」とのことです。

鼻に寄生するダニは、Goldberg氏が発見したものが初めてのケースといったわけではなく、Kibale National Parkにはチンパンジーの鼻に寄生するダニも確認されており、他の研究者からは「今回発見されたダニはチンパンジーの鼻に寄生しているものと同じものではないか」という指摘もありました。感染症を研究するGoldberg氏は、鼻に寄生するダニについてとても興味を持ち、調査を続けることに。

By Valerie

他の研究者の協力も得て研究を進めたところ、自分の鼻から発見したダニが、チンパンジーの鼻に寄生しているAmblyommaというダニと同族であることが判明しました。Goldberg氏によると、Amblyommaというダニは病原菌の保菌者としても知られており、少し奇妙ではあるものの、今回のような方法で動物から人間へと病原菌が広がっていく可能性もあるとのこと。

鹿に寄生するダニを長年研究してきたGoldberg氏でも、鹿の鼻に寄生するダニを目にしたことがないそうで、ダニがチンパンジーの鼻の中に寄生する理由について、「おそらくチンパンジーの習性の1つである毛繕いに理由が隠されていると思います。毛繕いによって寄生する場所を追われたダニは、居場所を求めて毛繕いされにくい鼻にたどりついたのではないのでしょうか」と独自の見解を述べています。

By elaine

Goldberg氏が発見したダニは幼生であり、形状による新種であるかの調査が不可能であるため、新種であるかどうかの確証を持つことができていません。新種であるかわからないことは少し残念な結果でありますが、Goldberg氏は「自分の鼻の中にいたダニから、いろいろなことを知られて満足だ」と前向きな姿勢を見せていました。