生光学園、「平常心」の粘りで18年ぶりに秋の徳島頂点奪取! 

延長10回を投げ切った真鳥優人(小松島)

 試合時間3時間7分。「壮絶な」という言葉も陳腐に写るほど激しい決勝戦であった。

 大会直前に豊富尚博監督が大幅なコンバートを施したことで練習試合での不振を払拭。3年ぶり8回目の秋季大会出場を決めた小松島の勢いは決勝戦でも引き継がれていた。2回表には無死一・三塁から併殺の間に先制すると、手足が長く将来性豊かな生光学園1年生右腕・福本 真治(右投右打、179センチ61キロ、奈良・御所南都クラブ<ヤング>出身)の不調に乗じ、5回表は二死満塁で外野手から中学時代慣れ親しんだ捕手に戻り今大会絶好調の4番・丸岡勇斗捕手(2年・右投左打・175センチ74キロ・阿南シティーホープ<ヤング>出身)が走者一掃の右越三塁打。8回表を終わり7対0の大量リードを奪う。

 加えて球速はないが潮崎哲也(鳴門→松下電器<現:パナソニック>→西武・現:埼玉西武二軍監督)を想起させる右横手から腕振りを変えず、ストレート・シンカー・スライダーを巧みに操る真鳥優人(2年・右投左打・160センチ55キロ・南部中出身)の状態も上々。「相手どうこうよりも思い切って、一生懸命やっていく」指揮官の狙いは最高の結果を生み出そうとしていた。

 ただ、決勝戦は点差にかかわらずコールドはなし。これが生光学園には幸いした。迎えた8回裏、完全に開き直った一塁側ベンチからは「平常心」の三文字がしきりに飛び交い始める。

 

投打に活躍を見せた高橋謙太主将(生光学園)

 5回裏にはけん制死を食らい「先頭打者として何として塁に出たい」と思っていた9番・中尾成希右翼手(2年・右投左打・159センチ47キロ・兵庫県南あわじ市立三原中出身)も、そこで自分の持ち味が何であるかに気付いた。

 中尾が50メートル6秒0の俊足を存分に発揮してのバントヒット。これを契機に8回裏は内野ゴロ2つで2点を奪った生光学園。決して綺麗な得点ではなかったが、この回22球を投じ128球に達したたことで、小松島・真鳥のスタミナは限界に達したのである。

 世間的には9回裏10人を送り出しての5得点同点劇。11回裏無死満塁と攻め立て6番・木戸優三塁手(2年・右投右打・162センチ52キロ・大阪都島ボーイズ出身)が押し出し死球でサヨナラ勝ちした粘りがクローズアップされるが、彼らの驚異的逆転を生んだのは11回裏の攻撃前に「そろそろ腹が減ったから決めてくれ」と呟いた山北栄治監督はじめ、平常心を思い出し、喚起し、継続したチームワークあってこそだ。

 こうして北海道日本ハムの絶対守護神である武田久(駒大→日本通運)がエースだった2005(平成7)年以来、18年ぶり2度目の秋季徳島県大会優勝を果たした生光学園。6回からはマウンドに上がって小松島の勢いを最後の一線で食い止め、打っても終盤の2打席連続二塁打でサヨナラ勝ちの道筋を作った主将・高橋謙太遊撃手(2年・178センチ75キロ・右投左打・生光学園中<ヤング>出身)は、8年ぶり7度目となる秋季四国大会への意気込みをこう語る。

 「仲間を信じる強い気持ちを持って、1つ1つ大事に闘います」

 その瞳はすっかり「平常心」に戻っていた。

(文=寺下 友徳)