イングランドでは香川真司が出場機会を得られずに苦しんでいる。モイーズ監督がその主な理由に挙げるのが「日本代表に常に招集されているから」ということ。日本代表のスケジュールがチームのそれを浸食するため、まずは共に過ごす時間が足りない。そして長い移動の直後では試合に使えない、というのがその言い分だ。9月14日のクリスタル・パレス戦、香川はベンチ外となった。

 ブンデスリーガに目を移すと、日本人選手はおおむね出場機会を得ている。モイーズが言うように、パフォーマンスに代表戦の影響は見られたのだろうか。

 13日のヘルタ対シュツットガルト戦には、代表を外れた細貝萌と、ガーナ戦から中2日の酒井高徳が先発出場している。細貝が軽快な動きを見せたのとは対照的に、酒井はかなりプレイに重さが残っていた。「時計を見たらまだ60分か、と思いました。疲れました」と、酒井は明かす。

 酒井はガーナ戦直後の深夜便で渡欧しており「一日遅かったらコンディションはどうだったんだろう」とも話した。一方の細貝は、代表に招集されていた時もあまり出場時間はなかった。「代表でもクラブでも 試合に出るというのがベスト。でも、代表で出られなくて、コンディションが理由でこっちでも出られなくなるという悪循環よりは良い」と、今の状況を素直に語っている(結果は1−0でシュツットガルトの勝利)。

 ガーナ戦から中3日の14日。マインツ対シャルケ、つまり岡崎慎司内田篤人の日本人対決も本来のクオリティではなかった(結果は1−0でシャルケの勝利)。ガーナ戦前に負傷のため離脱した岡崎は先発出場。だが味方とのタイミングが合わず、ボールを受ける回数が少なかった。さらにはバックパスをさらわれたところから失点し、シュートを1本も放てないまま、57分にこの日の交代一番手で退いた。

 一方の内田はそれなりの出来映えか。大きなピンチを作ったわけではないが、指揮官から求められる攻撃性を発揮することはできず、ビルト紙の評価は4と低調だった(採点は1〜6で最高点が1)。内田の場合はここ2年ほど右太もも肉離れを頻発しているため、チャンピオンズリーグと次節のバイエルン戦を終えた後のドイツ杯ではベンチ外になる可能性が高い。

 ガーナ戦から5日後の15日には、日本代表の主将である長谷部誠が、ニュルンベルクでの初戦、ブラウンシュバイク戦を迎えた(結果は1−1のドロー)。期限ギリギリでの移籍決定で、長谷部はチームに合流することなく、メディカルチェックのみをすませて日本に帰国した。そのため、ニュルンベルクでの練習は実質的に代表戦後の3日間だけだった。それでも、ほとんどの選手がボールを持った時に長谷部を探している。ロングボール一辺倒だったサッカーが少しは中盤を使うようになるなど、チームに変化の兆しをもたらしている。「選手の名前は覚えたけど、細かい特徴なんかはまだ」と、長谷部は現状を明かす。

 ただし個人的なパフォーマンスという意味では、良い時の長谷部にはほど遠い。「(もともと)展開力なんかは自分の持っているもの。ブンデスでボランチで勝負していくには守備力を上げたい」と言うが、守備では競り合いに負けることも多く苦戦していた。また、長谷部独特のスピードある攻撃参加も見られず、まだまだと言わざるを得ない。

 とはいえ清武弘嗣は「ハセさんが一番しゃべっていた(声を出していた)し、ボールはつなげるし、僕的にはとてもラクだった」と言う。『「今後はリーダーシップも発揮していかないといけない」と、以前、話していたが?』と聞かれると、「それはハセさんが入ったんで(もういい)。僕はゴール前に専念」とニヤリとしてみせた。

 一方の清武自身も、最下位のブラウンシュバイク相手であれば、もう少し得点に絡む怖いプレイが見たかった。ビルト紙は5点という低評価を与えたが、これは期待の裏返しでもある。いつもはボールが頭上を越えていくだけでプレイに関わりようもないが、この日は長谷部が入ったことで、前半はいくつかのパスが出てきた。清武は「ハセさんがいるから必要だと思った」と、裏への動きだしにも積極的だった。このあたりが熟してくれば、これまでと違うサッ カーが見られるのではないか、という期待も膨らむ。

 確かに今週末の日本人選手達は活躍したとは言いがたい。代表合流のためチームを離脱することは痛手であり、時差と移動によって疲労が蓄積するのは間違いない。とはいえ、必ずしもそれだけが要因というわけでもなさそうだ。チームにとってなくてはならない存在であることを、まずはそのプレイで証明しなければならない。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko