日大山形vs明徳義塾 日大山形、東北地区「野球王国」へ向けての大きな1勝
誠に失礼な話であることを承知の上で率直な感想を述べるが、1回裏二死一塁から明徳義塾4番・岸 潤一郎投手(2年)が右越先制二塁打を放ったとき、このような結果は微塵も予想していなかった。なぜなら、普段であれば試合巧者の明徳義塾の先制は「勝利」と同義語だからである。
ただ実際は違った。日大山形は明徳義塾と真っ向から渡り合い互角以上に戦った。 3回表には1番・青木 龍成中堅手(2年)が右中間へ。6回表には4番・奥村 展征遊撃手(3年・主将)が再び右中間へ。そして8回表には3番・峯田 隼之介が左中間へ。いずれも岸の高めストレートを上から引っぱたく見事な三塁打3本で3得点。 最後は8回表二死一、三塁から迷いなく引っ張り一、二塁間を破る決勝打。想定外の展開は、甲子園3大会連続ベスト4を描いていた高知勢の思考回路を停止させるに十分なものだった。
加えて日大山形の守備ポジショニング、そしてエース右腕・庄司 瑞(3年)の粘りも素晴らしかった。特に庄司はストレート・変化球問わず丁寧でいて、勝負ところでは思い切り腕を振ってねじ伏せるスタイルを完遂。5番・西岡 貴成一塁手(3年)にこそ2本の適時打を許したが、8回裏一死満塁から8番・馬場 雄大捕手(3年)のスクイズを封じた気迫は胸を打つものがあった。
このように技術と気迫を融合させ、結果へつなげる日大山形のスタイル。これは以前「野球王国四国」が得意としていた闘い方そのものである。その点で見れば両者の間には「4対3」以上の差が存在していたと言っても過言ではない。 とはいえ、振り返れば数年前からずっと道はつながっていた。3季連続甲子園準優勝の光星学院(青森)<現:八戸学院光星>。同時優勝ながら昨秋国体初制覇、そして神宮大会優勝を成し遂げた仙台育英(宮城)。プロ野球で快進撃を続ける東北楽天ゴールデンイーグルス。 さらに今大会花巻東が済美・鳴門に、日大山形が明徳義塾に競り勝った試合内容。1989(平成元)年・第71回大会の仙台育英、秋田経済法科大学付属(秋田)<現:明桜>以来、24年ぶりに夏ベスト4に東北地区が2校残った出来事。それが一本の線でつながりつつあることはもう動かしようがない。
この2013年が終わったとき「野球王国」の称号は東北の地へ羽ばたく。山形勢にとって初の夏甲子園4強入りとなったこの歴史的勝利を経て、その予感はもはや確信、そして事実へと変わろうとしている。
(文=寺下 友徳)