常総学院エース・飯田晴海。カミソリ変化球で福井商に競り勝つ!

 「きりきり舞い」という言葉がピッタリ似合っていた。

 常総学院の右腕・飯田 晴海(3年)の変化球のことだ。目測では110キロ台のスライダー、120キロ台のフォーク、ツーシーム系と3種類の「落ちるボール」を球持ちよく思い切り、しかも同じように腕を振って低めに次々と投げ込む。甲子園スコアボードのカウント表示・スピードガン表示が7回裏まで故障するアクシデント(カウント表示は2回裏途中から得点表示下に出す形で仮復旧)により、球速表示でその切れ味を明確に表現できないのが残念だが、恐らく打者の目からは全く判別がつかなかっただろう。

 これでは2回戦では6犠打を絡め聖光学院(福島)に競り勝った福井商が沈黙するのも無理はない。この試合の犠打は7回裏、連続四死球で無死一・二塁から5番・安田 敦史右翼手(3年)が捕手前に転がしたのが最初。序盤、変化球の切れ味に押されてのバント失敗により、一番の持ち味を封印させられた時点で勝敗の趨勢は決まっていたのかもしれない。

 常総学院は打線も中盤以降、2回戦に続く先発となった福井商の右腕・長谷川 凌汰(3年)にうまく対応した。5回裏に9番・眼龍 達矢右翼手(2年)が抜け球を上から叩きレフトスタンドへ大会第31号先制弾を放つと、長谷川に14安打7得点。

 特に6回2点目の適時打、9回にはトドメの左越二塁打を放つなど4安打3打点の3番・進藤 逸二塁手(2年)の力強いスイング、7回裏に3点目の適時打を放った石井 大貴一塁手の1年生とは思えない巧みなバットコントロール。そして一直線にレフトスタンド中段に大会第32号2ランを突き刺した4番・内田 靖人三塁手(3年)のパワーは観衆の目を魅了するものである。

一方、9回には刀折れ矢も尽きた形となったが、2回戦以降、ブルペンに上がったのすらこの試合の6回のみと、どこかに変調をきたしていることは明らかなエース・中村 文英(3年)に代わり、名門・福井商のマウンドを守った長谷川の奮闘は見事。4安打1失点完投で初優勝した2003(平成15)年・第85回大会以来となるベスト8に常総学院を導いた飯田と共に、責任を十分に果たした。

(文=寺下 友徳)