最後まで投げきった両エースの存在感

前日の準決勝に続き連投で決勝のマウンドに立った両校のエース。愛工大名電の左腕、東 克樹(3年)と愛知黎明の右腕、大久保 和哉(3年)。 東は準決勝までの5試合で自責点1と抜群の安定感を誇る。大久保はエースで4番、チームの大黒柱である。炎天下の中で繰り広げられた投げ合いは見応え十分の試合となった。

 立ち上がりは走者を許しながらも併殺打や三振で要所を締めた両投手。愛工大名電の東は2回と5回、二塁まで走者を許したが、勝負どころで130km台後半の速球が決まり三振でピンチ切り抜けた。

 愛知黎明の大久保は、この日も先発メンバーを入れ替え1番8番まで左打者を並べた愛工大名電打線を、90km台のチェンジアップとコーナーに散らす配球で押さえ込んだ。しかし大久保は4回に先頭打者を安打で出すと、一死三塁から愛工大名電の服部優斗(2年)にセーフティスクイズを決められ先制点を許した。大久保は6回にも二死から徳浪優斗(2年)と服部の連続二塁打で失点したが8回まで2失点と踏ん張った。

 愛知黎明が東を捕らえたのは8回。直球が甘くなったところを4番、大久保が逃さず左中間に適時二塁打。さらに一打同点のピンチで東はストレート勝負。愛知黎明5番、前岨勝己(2年)を三球三振に仕留めた。

 最終回、最後の107球目も直球で投手ゴロに抑えた愛工大名電の東。愛知黎明の大久保とのエース対決を制し、チームを2年連続11回目の甲子園に導いた。 決勝で敗れた大久保は涙を流す仲間の横で下を向くことなく、じっと前を見据え凛々しい表情を見せた。まさに決勝までチームを牽引した大黒柱たる姿だった。相手投手に従い毎試合先発選手を入れ替える采配を見せた愛工大名電の倉野光生監督。春の甲子園は2005年に優勝するなどの実績はあるが、夏は6回出場で未勝利。どの選手が出ても役割を果たすという全員野球で夏の甲子園に挑む。

(文=編集部)