済美、電光石火の攻撃で5年ぶり夏舞台へ!

 立ち上がりの攻防が明暗を分けた。 先攻の済美は初回、先頭の山下 拓眞右翼手(3年)が遊ゴロ失策で出塁すると、二死二塁から5番・太田裕也三塁手(3年)が左翼線に落とすヒットでのどから手が出るほど欲しかった先制点を奪う。

 一方、今治西はその裏、安樂 智大(2年)の初球143キロストレートを完璧に捕えた1番・田頭寛至遊撃手の打球が太田の正面を突くなど、運もなし。

 2回表には先発左腕・神野 靖大(2年)、2番手・石垣淳行(3年)が1番・山下の2点適時打など5安打を集中され3点を失い、試合の主導権を済美に譲り渡してしまった。

 それでも今治西はストレートが真ん中に集まる安樂の状態を粘り強く突き続け、3回裏には二死三塁から田頭が145キロを右前適時打。続く4回にも二死一・三塁から7番・神野が149キロを左前に流し打って反撃体制を整える。

 ただ、試合ごとに修正能力を高め続ける安樂を今治西はその後、崩しきれず。対する済美は6回表先頭打者の7番・藤原弘気一塁手(3年)が遊撃内野安打と失策で二塁まで進むと、続く町田卓大中堅手(3年)がこの日2打点目となる左翼線二塁打で試合を決めた。

 結局安樂は112球中、150キロ台は最速152キロ含む11球に留まったものの、3試合連続無四球での8安打10奪三振2失点(自責点1)完投で堂々の胴上げ投手となった。

 今大会は全5試合に先発し4完投。40回3分の1で24被安打・46奪三振・与四死球5・失点5・自責点3・防御率0.67。最速157キロのストレート。120キロ台スライダー・110キロ台カーブ、90キロ台スローカーブに加え、新球・130キロ台の高速スライダーとスプリットも備えた日本野球界の至宝・安樂 智大。彼を大黒柱に、山下、太田、藤原、町田、女房役の金子昴平(3年)ら、脇役がきっちり仕事を果たす済美は春に逃した頂点を。そして1996(平成8)年の第78回大会・松山商業以来の愛媛勢夏の全国制覇へ向け、意気揚々と5年ぶりの夏甲子園へ乗り込んでいく。

(文=寺下 友徳)